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第04話『現在状況の理解』

 托生は10分の懊悩おうのうすえ辿たどり着いた状況の理解に強く絶望していた。

 そんな彼は、光のない目を前髪まえがみかくして、どうにかして帰れる場所をさがすのだった。

 心花こはながいるあの場所には、もうもどれないのだろうか…──

「…おい…何で帰れねぇんだよ…──ゆめなら…とっととめろよ…っ」

 フラフラとした足取りで歩くそのさまは、まるでゾンビのようである。

 わら価値かちにもたない希望にすがりながら、辿り着けるかもわからない目的地を見据みすえ、生けるしかばねはひたすらに歩くのだった。



 結局、辿り着けるわけがなかった…──

 托生が20分も草原を走って辿り着いたのは、せいぜい高く降り立つがけという始末だ。

「(もう足は…限界…か)」

 虚弱けいしゃ体質の彼は、急な道を走るだけで足の節々が悲鳴ひめいをあげていた。

「(こんだけ走って…辿り着けねぇのか…)へっ…へっへっへへ…もう…駄目だめだぁ…」

 傷心しょうしんと絶望のあまり笑みさえあふれ始め、托生はそこに崩折くずおれる。


 だが、彼は最後の希望を胸に前を向く。

「あ…っ!アッハッハ…!?」

 托生が前を見ると、そこにはこの状況の打開法だかいほうがあった。

 それを見て、托生はくるったようにわらう。

「見つけたぁ…ぁ…見つけたっ…!」

 崖の下に広がる世界へ飛び出して、こんなくだらない人生を、とっとと終わらせるのだ。

 このまま進めば…何もかも綺麗きれいさっぱり終わってくれる筈だ。

 ただ前に進み、上半身を乗り出して前のめりになればいい。

 その降り立った崖まで、酩酊状態のようにって進む托生。

 だが…──


「キシァァアーッ!!」

 突然、なぞの鳴き声が響き渡る。

「…はっ!」

 一瞬にして托生は平静へいせいに戻される。

 くわえて、彼は後方からの強い危険と、同時に生命の危機を察知した。

「っ!?」

 托生があわててそこを見ると…──


 緑斑模様みどりまだらもようの巨大なトカゲが、大きな口からよだれらしながらこちらを見据みすえていた。

「シィーイッ!」

「ひっ…!?ぅあっ」

 このままでは食われてしまいだとさっした彼は、すぐに走ってげようとするが、彼の足はボロボロで使い物にはならない。


 トカゲの巨大なてのひら抵抗ていこうできない托生にり下ろされる。

「あぁあ…っ──ぁあーッ!?」

 今まで受けた暴力が遊びに思えるほどに、その痛みは尋常じんじょうではなかった。

 その一撃だけで、意識が飛びそうになる──早く殺してくれと嘆願たんがんしもした。

 だが、その心には、弱くもたっとい光が残っていた。

「し…──く…ぬぇ」

 彼のそのかすれた声は、届くことはない。


 散々痛めつけ動きを止めたことで、トカゲはいよいよ飲み込もうと、めいっぱい広げた口を近付ける。

「…かっ…ぁあ…」

 喉をいかに動かしても、何も出てこない。

 ただ飲み込まれるのを待つばかりで、いよいよ自分の終わりだと、托生は希望などてて、近づいてくる死をむかえようとしていたが…──


 ──そんな時、トカゲに何かがせまってきた。

「ゴァッ…!?」

 頭が緑色りょくしょく発光体はっこうたいつらぬかれ、トカゲの巨体はそこに音をたててころがった。

「(な…何が…お…き)」

 托生は途絶とだえかける意識の中、朧気おぼろげな視界でその状況を目にしていた。

「──大丈夫ですか!」

 曖昧あいまいではあったが、そう聞こえた。

 托生の視界しかいに、緑色が差し込んだ。

「──応急処置おうきゅうしょちをしますので!どうか意識をたもっ…」

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