第15話『理由もわからぬ男の協力』
男が導くのは、ソータが歩いてきた道を逆戻りするものであった。
「やはり私が気づかなかっただけで、隠し通路があったんですね…」
「ああ…あの通路は俺たちの間だけでしか知られていないのだからな」
真っ直ぐな裏路地を進んだ後に、男はある1つの家屋の前で止まった。
看板が貼ってある。ドアからもテーブルや椅子が見える。
「見たところ、バーのようですが…」
「そんなことは関係ない…必要なのはここの内部の仕掛けだ」
素っ気ない対応の男に続いて店内に入ると、店はひどい暗がりでシーンと静まり返っていた。
床は埃だらけで、雰囲気はもはや廃屋だ。
こんなボロっちさでは、仕掛けも何もないと思うのだが…。
「ここに何があるのです…」
「そう思うだろうな」
男が次に向かったのは、横長でカウンター式の台を通り越し、ウェイター側の方に立った。
ドアを押して勘定場に立つ。ソータは不思議そうにそれを眺めていた。
「…おい、突っ立ってねえで来い…」
「は…はい!」
そこに急ぎ足で行き、男の後ろに立つ。
「…見ろ」
「…?あっ…!」
まさか、こんな所に隠し通路があるとは…。
その暗がりはさらに濃く、その階段は奥が見えない。
「俺たちのアジトは、地下にアリの巣のように分岐している。アジトへの入り口はこれを含め7つある。ここはそれらの中でも往来がないので、これを利用するぞ」
男は腕から魔法で光を灯し、暗い階段を照らした。
奥は壁で、横に道が回っている。螺旋階段のようだ。
「行くぞ…」
「はい」
2人は暗い階段を歩き出した。
「忠告しておく…わかっているとは思うが、絶対に俺から離るな、勝手な行動も慎むんだ」
「わかってます」
ソータは当然のように頷く。
だが、男はさらにもう一つ言い切った。
「…──生きていたいのならな…」
「!」
出任せを言っている風ではさらさらない。
ソータには彼の発言の真意が恐ろしいほどに伝わっていた。
「先程のような男が、この内部には何人もいるんですね…」
「だから、俺に付いてこいと言うんだ。平和なルートを教えてやろう」