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第11話『絶望の目覚め』

※一体どれだけの時間が過ぎたことだろうか…


「(うぅ…)」

 …もうどうだって良い気がして来た…。

 先程までぎゃあぎゃあと声を上げ、狂ったように自殺願望をさけんでいた彼も、電源を切ったロボットのようになっている。

 視界は真っ暗だが、腹や腕頬がなぐられたか、ブックリとれているのがわかる。

「おレぁ…何がどうしたんだ…」

 このような状況でも、希望を捨てずにあらがうべきだろうか…。

 だが、托生の体からは、力が抜けてしまっていた。

 …それどころか、もう力など必要ない──托生はどこぞの地下牢ちかろう幽閉ゆうへいされ、腕や足にくさりつなげられている。

 そして、視界は真っ暗で何も見えまい。

 頼れる感覚は唯一ただひとつ、聴覚のみ。


「──こん中のだれだぁ?」

「知らねえよ。でも、縄張シマに入ってきた時点で当然の結果だろ。変な挙動を見せるモンだから、ボコボコにして幽閉してるんだ」

 壁を一つまたいだような、2人の男の声。

 誰かが向こうにいるらしい。それも2人だけではない。

「領有地をおかしたのは、この男だけなのか?」

「それは俺わかんねえけど…──なあおい!あそこはお前の管轄かんかつだろ?」

 返答に困る様子の男に変わって、1人の男がこう答える。

「それが…わかんねえんだよ」

「なに…わからないだと」

「少女の行動が発見されたっつうウワサはあるんだが、はっきりしてねえんだ」

 それを聞いて、托生はすぐにハッとする。

 彼女が…ソータが来ていると…。


「誰…か…そこに…いんのか…」

「「「…む?」」」

 そこにいる3人も、かすれた声を出した托生に驚いたらしい。

「しぶとい野郎ッスねぇ。ま、また眠らせやすか」

「そうだな」

 牢屋のかぎがガチャガチャと音を立て、ギィ…と音を立ててひらかれる。

 牢屋に誰か入ってきた。足音を聞く限り、3人だ。

「…チッ、暗いなぁ牢屋にしては」

「へへ、そう思うか?」

 急に部屋が明るくなった。1人がランプをけたらしい。

 灯りに吸い寄せられるように、托生が視線を前に向けると、盗賊のような装飾そうしょくの3人がこちらを見ていた。


「一応訂正しときな…その言葉」

「ん?どういうことだ」

「お前は勘違いしてんだろうが、ここは“牢獄”じゃねえんだぜ」

 托生はその言葉に違和感を覚え、視界を動かす。

「あ…ぁ…──あ…?」

 天井には何もない。

 壁を見ると…──托生の表情が恐怖にゆがんだ。

「ぁあっ…うぁ…アぁあ…」

 かべに立て掛けられた鈍器どんきの数々、3人は全員それを持って、こちらを見ている。


 托生はそこで、また再びの死を受け入れる。

「ぁ…ああ…」

 もはや運命は、ここに永遠とわとらわれ、ただ死をつこと以外にない。

「ああらッ!」

 ガキッというにぶい音ともに、背骨あたりに激痛が走る。

「ぁウッ!?」

 痛みは続く…──何度も、何度も…。

 あばれもせずに、ただ静かに、托生はこの残酷ざんこくな運命にあらがうこともなかった──。


「ゲッホッ…!はぁ…っ──フフッ…」

 呼吸も出来ず体もボロボロになっていく現状…──死が見えてきた。

 醜くドス黒く、醜くうごめき、醜い声でいざなってくる…。──死とは…何と美しいんだろう…──托生の表情は恍惚こうこつげに笑顔を浮かべていた。

「こっ…こいつ…何を笑ってやがるんだ…」

 あまりに君が悪く、る。

「ヘヘッ…もっとだ…!」

 托生がキッと男達を見据える。

 こんな残酷な所業を行う自分達ですら正気を保っているかのように思えるほどに、托生の形相は狂気に満ちていた。

「うっ…ヒッ!?」「「ぎゃあああッ!!」」

「もっとだ…!モット…──ゥヘヘヘァアア!」

 この世の物とは思えない表情だった。

「こっ…こいつとっとと…殺せよォッ!!」

「ばっ…化け物ッ!ウォオオアアッ!」

 男の1人が、托生の頭に鈍器を振り下ろした。


 ──ガッ…!

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