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夜行ダンス  作者: 夏目胡瓜
1/1

はじまりのおわり

入学式

春は新しい出会いの季節だ。


私は今日から晴れて花のJKというやつだ。

ただ、私が選んだ高校はほかの高校とは違う。

祓魔師の学校



今の世の中悪魔による残虐的なニュースは絶えない。

中学の頃1番最初の社会の授業で習った。

200年前人間と悪魔は戦争した。

もちろん人間は悪魔に勝てるわけがない

だが、当時の日本の王はかなりの強者だったらしく、天使と契約し悪魔を封印することに成功した。


が。



ここ80年悪魔の行動が活発的になってきている。

75年前に悪魔による大きな事件が起きてから政府は日本の都である東京と大阪に祓魔師志願の高校生を育成する専門学校を設立した。

悪魔に大切な人間を殺された者、興味本位で入った者色々といたそうだが、やはり死者の数が目立つ。


年々人手不足である祓魔師。

30年前に沖縄、広島、京都、熊本にも同じ系列の祓魔師専門高校が設立された。

もちろん、1番大きいのは東京と大阪にある校舎だが、地方にいる若者を少しでも多く獲得するために小さいながらも続いている。

兎にも角にも、私が入学したのは大阪高校。



「此処が中央聖堂ホール…」

日本の2代トップに数えられる大阪校の入学式は様々な政治家やメディアが目をつける。


体育館ではやらず、入学式は毎年ここ、中央聖堂ホールにて行われる。

当日は新入生、在校生朝9時に現地集合と連絡が来た。



(少し早く来すぎたかも)


辺りは知らない人だらけ、当たり前か…。

薄くため息を付くと、トントンと肩を叩かれた。


振り返るとそこには私と同じ背丈をした女の子が立っていた。

「あっ、あなたも新入生だよね??良かった〜まだ全然人が来てなかったから時間間違えたかと思って焦った〜〜あ、初めましてだよね」


話してみると少し声が低めの少女。

とても穏やかで優しそうだ。


「私は赤坂ほのか。よろしくね」


そう言いながら彼女は、ほのかちゃんは右手を突き出す。

私はそれを少し見つめると、自分の右手を出した。


「…私は間桐日傘(まとう ひがさ)。よろしく、ほのかちゃん」


私達は軽い握手を交わす。

そうこうしている間にホールの扉から先生達がでてきた。

私達は先生の指示に従い中に入る。









(あー。すごい緊張する)

ひとりひとり前に立って有志を発表するんだとか。


(そんなの聞いてないよ…)



ホールでの席は出席番号順。来賓席は埋まっている。

ホールは背が高くどこまでも広い

まるでひとつの生命体のようだ。



(あ、そろそろ入学式始まる)


私はスマホを鞄の中に仕舞った。

そういえば、私の左隣の席は未だ空席だ。

誰も座っていないが、席は空けられている。

(ーー欠席者?)


かもしれない。


そうこう考えていると、司会者がマイクの前に立った。


「今から第76回 青天せいてん祓魔専門高等学校の入学式を行います。新入生全員起立。」


(えーと、まずは国歌斉唱。その後は入学証書授与、そして有志発表…!!)


先程渡された入学式の冊子を手元でめくりながら私は有志について悩んでいた。

そしてあっという間にその時は来た。

「新入生有志発表の儀。」

(やばい、何も考えてない)

「出席番号1番赤坂ほのか」


ー赤坂さん1番なんだ。


「27番、藤守翔大ふじもりしょうだい








シーーーン


静寂がホールを襲う。

どうやら私の一つ前の子は休みのようだ。

そうなれば私の番はすぐ…


「28番、間桐日傘」

私の名前が呼ばれた。

「…はい」

舞台に上がったものの、何を言おうか…。

みんな高らかと立派な野望を宣言している。

といっても私は夢がない。

(夢なんてなくたって周りの人間が勝手に決めてくれる)

祓魔専門学校に入ったのだから祓魔師になるのが夢でしょう?

と聞かれれば頷ける。

でもなる理由がない。


ただなんとなく、というわけでもない、



「高校生活を楽しみます」


(馬鹿みたい)


とだけ宣言して私は壇上から降りた。

明らかに浮いている大志だが、当たり障りは無いと思う。



そのまま式は順調に進んでいき、

「次は、学園長のビデオメッセージです」


学園長は本部である北海道にいて、こちらには来れないので毎年ビデオメッセージを流しているんだとか。

会場が暗くなり、上からプロジェクターが降りてくる。

そしてビデオメッセージが流れ始める。

押し寄せてくる眠気とどうにか戦いながら見ていると、その時間はあっという間に過ぎた。



「新入生一同、礼」


会場はまだ暗闇に包まれているプロジェクターが上がる音がする。

プロジェクターが上がり切り、静まり返る。


ーざわざわしている?


私は一番端に座っているので教職員席と近い。

教職員席ががわざわしている。一人の女性の声が聞こえた。

電気がつかない、と。



おそらく何らかの不具合で照明がつかないのだろう。

あまりの暗闇の長さに会場全体が少しざわつき始めていた。刹那、悪寒が走る。

つうっと、背筋を死神に撫でられたような震えが襲いかかる。

恐らくみんなもそうであろう。

寒い、という声が聞こえてくる。

寒いのではなく、これは。

過去に似たような震えを体験した。

その時とよく似た、いや、その時よりももっと強い寒気。


何も見えない暗闇。

おかしい。こんなに長く暗闇の中にいるんだから目が慣れてくるはずだ。

なのに、ちっとも慣れてこない、

まるで漆黒の霧に全身包まれてるかのように周りの景色が見えない。

先生達が立ち上がったりしている気配を感じる。私だけなのだろうか?

否、恐らく生徒達も同じだろう。


『ルレサロコニマクアテケスタ』

ゾワッ

その言葉が会場に響き渡った途端悪寒が最高潮を達し肌に爪を立てる。

心臓を掴まれたような感覚が襲い、このまま死んでしまうのではないか?という恐怖が伝う、思わず涙がこぼれる。




パチッ



その瞬間、勢いよく会場の明かりがついた。


会場全体が騒ぎ出し、取り乱していた。

先生達な立ち上がり、目の前の舞台には司会がおらず、


十字架に貼り付けられた少年がいた。








私たちと同じ制服を着た少年。


十字架に貼り付けられている。


私たちの制服、左胸のポケット……丁度"心臓の真上"には十字架の刺繍が施されている。

その刺繍の十字架を貫く銀のナイフ。


少年の生死を確認する大人。


騒ぐ会場。


まるで全てが現実ではないようで…

カクヨムにも掲載しています。よろしくお願いいたします。

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