第一章 戦争4
「くらいやがれ!俺の魔法を!」
「っ…」
-なんという威力だ…!盾で防ぐので手がいっぱいだ…!む、あのサイはどこに!?
「もらったぁ!!」
「!!!」
相手は後ろだ!私は何とか剣を後ろに回して相手の攻撃を防ぐことに成功した。しかし、サイ族…侮れん
「はっ!中々やるじゃねぇか!」
「そちらこそ…このような腕前とは。名を聞きたい」
「俺か…?俺は草食王国偵察部隊隊長!ゲニアだ!!」
「ゲニア…その名、覚えておこう!」
私は火の息を出して攻撃した。しかし、相手はそれに対抗して水の龍を出してきた。冷静なる判断もお手の物であるか。
接近して再び斬撃を繰り返すが相手は上手くいなしている。戦いに言葉は不要と思っていたが、高揚すると言葉がどんどん出てくるものであるな。
「ゲニア、私は今高揚している…!竜族の性かは知らぬがこの戦いができること、感謝せねばなるまい!」
「ああ…奇遇だな、俺も昂ってきたところだ!久しぶりだ、こんな気分になるのはよ!」
再び火の息を吐く…相手は私の予想通り水の龍で防いできた。だが、甘いっ!!私の爪の一撃を受けよ!
「もらった!!!」
「!それは…こっちのセリフだ!!」
「っ!?」
我が爪の一撃を避けるのではなく、受け止め背負い投げするとは…!上手く着地できたが、やはり見事な腕前!活用できるものは使わねば、砂であっても。私は砂を蹴りあげた
「これはどうだ!」
「へっ、土が俺に効くと思ったか!!」
「なっ!?」
ゲニアは周囲の土ごと私を抉り出しただと…!なんという威力の魔法だ。だが、まだだ!この土をお返ししようぞ
「ゆけっ!!」
「無駄だっつうてんだろ!!」
「ぐあっ!!」
-本当にあいつは手負いなのかよ。俺の一撃と風魔法を受けてまだ立ち上がるのか…!竜族ってのは相当タフらしい。
「ゲニア…どうやらあれをしなくては行けないらしい」
「あ…?」
「初めてだ、人前で見せるのは。この戦が初めてであるのもあるがな。私は…あの国に来た時、記憶がなかった。あったのは自分の名前と自分が竜族であるということだけ」
「…」
「そして、その竜族の証は我が体に宿っていた。今、その真髄を見せよう…!我が体に秘めたりし真の力、目覚めたまえ!!!はぁぁぁぁ!!!」
「っ!!」
これは一体…!やつの力が増している!
…少し経って出てきたヤツは服が変わっていて、威圧も武器も違っていた。
「これは竜族の秘技…竜気覚醒。調べてわかったことだが、この服は和服というもので武器は刀と言うらしい。…この姿は、古来の"サムライ"をイメージしたもののようだ。なぜこれを記憶のない私が使えるかは分からぬ。そして、ここまで早くこれをみせるとも思ってなかった。汝と戦えたこと誇りに思う」
…なるほどな。それが…
「てめぇら竜の力か。」
「竜の力が如何程のものかは我が力では計り知れん。だが、目的はただ1つ…勝つことのみ」
「奇遇だな、俺の目的も勝つことだ。」
風魔法で作った巨大な鳥を放った。すると、技を受けたと思った小僧は俺の後ろにいた。この技は一体…!?
「…斬り捨て御免」
「ぐあっ!!??」
斬られているだと…!?こいついつの間に!すれ違いざまに切りつける高速の剣技か!?
「これは居合と呼ばれる技。相手の技を見極め、相手の隙を見極め相手の懐に鞘から抜かれし一撃を入れる技だ」
「へっ…態々教えてくれて…ありがとよ。」
俺は背中から一本の槍を取り出した。…やるぞ
「うぉぉぉ!!!」
「…」
あいつは刀を収めている鞘で攻撃しつつ防いでいる。居合だけじゃないらしい。俺もまだ負ける訳には行かないな!風の鳥よ、行け!
「そらよ!」
「ぬん!」
また居合か…!くそっ、早すぎて見極められねぇ!
だが、小僧も息が上がってきている。相当無理してるな…100人相手にしてきたあとだ。むしろ、ここまで俺を押してるのがびっくりするくらいだ
「はぁ…はぁ…どうした…小僧…そんなもんか…」
「はぁ…はぁ…まだ…戦える…!」
小僧はまた居合をするらしい。どちらに転んでもこの一撃で終わる。俺は得意の風魔法を使い、さらに大きな鳥を作り出した。槍も構える…風の鳥だけじゃ役者不足だ。
…これにやられる訳には行かねぇ、ラムが…ラムが一人でこいつとダホを相手するのは無理がある。同士討ちでも言い、倒すんだ…最強を…!!
「ゲニア…お主とは…お互い万全の…体制で戦いたかった。いつか…果たそう…ぞ」
「はっ…酔狂だな、いつかの夢は…今を無事に終えてから…語りな。…今を無事終えなきゃ、いつかはねぇんだ。」
「…その通りであるな…」
…風の音が静寂を邪魔する。息を整え…心を整え…
-相手を見て、自分を見て…心で視て…
-そして俺が勝つ!
-そして私が勝つ!
「はぁぁぁぁ!!!!」
「これで…終いだ!!!」
…………………………
「…手負いじゃなきゃ…負けてた。だからこれは…俺達の勝ちだ…竜族…。」
「……負けを認めよう。ゲニア…」
俺達は最強の竜族に打ち勝った。俺だけの勝利じゃない、仲間が戦ってくれたから勝てた。
「…そういや…名前聞いてなかったな」
「…………ドライトン。」
「ドライトンか…」
「ゲニア殿…今は…もう一つの…いつかを…語っても…よいか?」
「ああ、聞かせてみろよ」
「お主とは…いつか…語り合いたい…ものだ。……お互いの夢…信念……その全てを…語り合いたい。」
「…ああ、この戦争終わったら待っててやる。そん時は…ちゃんと酒を持ってこいよ…?ドライトン」
「…竜族の誇りにかけて、その約束…承った。」