第二章 過去と未来3
草食王国城
-リス族の村に羅鱶という人が来ていたらしい。その人が言うには魚王国の内乱は危ない状態のようだ。予想はしていたが…このままだと魚王国がこちらに来るのも時間の問題になりそうだ。すると、ビリャオが私に話しかけた…
「…事態は深刻のようですね。」
「ああ、やはり早めにこちらから仕掛けた方がいいと思うか?」
「同意見です。可能ならばすぐにでも攻撃した方がいいかもしれません…ゆっくりしているといつ魚王国の内乱が終わるのかわかったものではないですから」
「君の食事は…」
「いいんです。これが終わったらまた…よろしくお願いいたします」
「わかった、約束しよう。…しかし、私の指揮で皆を救えるだろうか?あの王国の皆を…」
「アマリア様…」
ああ、わかっている。あの戦争を知らないビリャオにこんなことを言っても仕方の無いことは。でもこんなこと誰に言えようか。シンか?いや…あいつには言いたくない。
…こんな弱虫で泣き虫な私を彼はよく受け止めてくれた。今君はどこにいるんだ…ラム。
はっ…今はこんなことしている場合ではないな。急がないと。作戦などはない、だが…必ず救うんだあの国を…姫を。
「ビリャオ…行こう。シン達にも来てもらわないと…」
「ええ、私の国の兵士にも来てもらいます」
暫く経ち、肉食王国、草食王国、蟻王国の兵士達が全員私たちのもとへ集った。いよいよ始まるんだな…戦いが。
私は皆の前に代表かのように立った。そして…声を出す
「…これは決して戦争ではない。戦いであることには間違いないが醜い殺し合いではない。だから向こうの兵士達は全員生け捕りにするんだ…決して傷つけないでほしい。」
「アマリア殿…」
「立派な作戦なんか私には考えられない。けど…皆の力を合わせればきっと…あの国も救える。私は…君達を信じてる。」
「…ああ、アマリア。行こうぜ」
「うん…行こう。皆、かの戦いに終止符を。」
終わらせよう…魚王国の悪夢を私達の手で。
問題はどうやって行くかだが…その点は蟻王国が解決してくれた。彼らは非常に巨大な潜水艇と呼ばれる乗り物を作っていた。これがあれば魚王国まで潜って行けるらしい
「すげぇでっけぇ…」
「本当に全員乗れるのか?」
「ええ、試運転の結果、蟻王国国民達全員…占めて5億人が乗っても正常に運転が出来ました。さらに実験では大砲の弾で何度攻撃されても傷1つ着くことはありませんでした」
「すごい頑丈なんですね…ははは…」
中もそこまで殺風景という訳ではなかった。窓があり外の様子も見れるし何より明るかった。蟻王国の化学力の凄まじさを思い知らされてるよ…更には戦闘用のトラックとやらも何台か入っていた。まさに戦うための船と言った感じか
「運転手、作動状況は?」
「作動状況に異常はありません。問題なく潜航が可能です…皆様の準備が整い次第出発します」
「わかりました、こちらから合図しますのでそれまで調整を…」
「はっ!」
「ビリャオ殿、肉食王国ミトロン、乗船完了を報告します!」
「ビリャオ、草食王国ズーラムは皆乗ったよ」
「蟻王国も全員乗りましたね…では…潜水を開始してください。」
「はっ…各員潜水開始!」
「潜水開始!!」
巨大な入口が閉まり、潜水艇は動き出した。それは大きさに反してとても早く、魚王国へと向かっていた…
「こんなに早いとは…」
「目的地まで15分で到着できます。」
「15分か…うかうかしてらんねぇな。」
15分…長いようで短いな。その間皆は何をしているのだろうか…見ていこう。まずは草食王国の兵士達は、魔導書を読んで戦いになるまで魔法の勉強かな?
ノア達は…スマホを見て面白がってるな。確かにあれすごいもんな。
あれは…ラビトか。確かしばらくの間休んでいたらしいが…どうしたのだろうか。聞いてみることにしよう
「ラビト、久しぶりだね…」
「アマリア様…お久しぶりです」
「暫く休んでいたと聞いたけど…」
「母が病に伏してしまいその看病に…でももう大丈夫です」
「そうか。それなら良かった」
「……アマリア様、ずっと言えなかったことがあるんです。ラム様のことで」
「ラムの?一体どんなことなんだい…?」
「実は、旅立たれる直前のラム様にあったことがあるんです」
「!彼は何か言ってたのかい?」
「あの時ラム様は…」
回想…
「きっとこんなこと他のみんなに言ったら止められるだろう。そうなると…僕の決心は揺らいでしまう。だけれども僕は変わるために…強くなるために行かなくちゃいけない。僕の知る世界を広げるために、これ以上大事な物を無くさないために…」
「ラム様…」
「みんなに宜しくと伝えてくれ。…ラビト、こんなことを君に任せてすまない僕は…卑怯な鼠だ。」
「…」
「…行ってくる」
現在…
「ずっと…ずっと伝えるか悩んでいました。もしかしたら伝えたらアマリア様の機嫌が治るかもしれないと。でも…言えなかった。僕はすごく臆病な兎です、こんな大事なことを伝えられないなんて…ごめんなさい。ごめんなさい…」
「…ラムは私に呆れていた訳では無いんだね?」
「え、はい…強くなるためにって言ってました」
「それを聞いてすごく安心した。ありがとう…勇気をだして私に伝えてくれて」
「でもアマリア様…僕は…」
「もう気にしないで欲しい。ラムが私に呆れてないとしれて…私は凄く嬉しいんだ。だからもう大丈夫だ。これからも…私と共に戦ってくれるか?ラビト…」
「はい…アマリア様。一生アマリア様にお仕え致します。絶対に…アマリア様を裏切ることはしません。」