第二章 過去と未来 2
-なんか口に布付けたやつがやってきた。なんなんだこいつは…
「お前は誰だ?」
「姫様を迎えに参りました…羅鱶と申します」
「ふーん…ちょっと見ててくれ」
ノアは準備で忙しいから代わりに他のリス族のやつが見てくれることになった。そして、その間に姫様に事情を聞くことにした。もちろん、聞こえないところで…
「執事って言ってるけど…」
「確かに私の執事です。」
「本物だって確証は…?」
「妖力があればわかると思うのですが…私の妖術は未だ未熟でして」
「つまり、わかんねぇと…」
「けど本物ならあるものを持ってるはず」
「よし…」
俺は羅鱶ってやつの所に行きその身分を確かめることにした。
「身分を証明できるものあるか?」
「身分証明書ならば…このバックに…あっ…」
「…ねぇんだな」
「いやはや…姫様にも忘れ物には注意するように言われているんですがね、歳のせいか物忘れが多くて」
「悪いけどあの国は内戦してる上に幻術持ちも多いんだ。正体も分からないやつに捕まってた姫様をおいそれと渡す訳にはいかねぇな」
「困りましたな…でしたら暫く滞在してもよろしいでしょうか?」
「…変に暴れたら無理やり取り押さえるからな」
他になにか証明する方法がありゃいいんだがな。とりあえず俺達は俺達のやることをするか。ノア1人ばかりに準備させる訳にはいかねぇからな。それと同時にあの野郎のことも見なきゃな。
すると、お姫様が羅鱶に質問していた
「どうして…貴方の国には布があるのですか?」
「姫様に泣かれてしまわれますから…ははは」
「…この人は本当の羅鱶だと思います。」
「…姫様がそういうんならきっとそうなんだろうな。だが、それがお姫様を連れて行っていい理由にはならないな。あの国に連れていけばどうなるか分からないこともあるめぇ?」
「…ですが、国民達は姫様を必要としています。姫様が皆様の希望となっていたことはわかっておられるはず。脱出できた今、国民達のもとへ行き勇気付けるのも大事ではないでしょうか…」
「…埒が明かないな。姫様に決めてもらおうぜ」
「私ですか!?」
「ああ、王になったら選択の時は何度も来るんだ。こんな所で迷ってたらなんにもならねぇぞ」
「…」
姫様は迷っているらしい…それはそうだろう。だが、そこで決めなきゃあんたは先に進めないぜ…姫様。
…と思ってたらリス族の子供が嬉しそうになにか持っている。箱型の機械か…?
「なんだそれは?」
「ありのおーさまがくれたの!スマホだって!」
「スマホ…?」
「スマホとはなんでしょう…ご存知で?」
「知らねぇな。なんだこれは?」
「とーくの人とはなせるようになるんだってー!」
「!これだ…!」
草食王国城 食堂
「スマホの使い方ですか?」
「ああ…実はよ」
俺はスマホの用途を説明してそれが可能かどうかをビリャオに聞いている。すると、ビリャオはもうひとつ同じものを出した
「電話は可能です。さらに言うならばテレビ通話という顔を見せながらの通話もできますよ。今から使い方を教えますので…」
「おう、頼む…」
しばらくして 魚王国 内乱兵基地
「くっ…敵の攻撃が激しい…このままでは」
「羅鱶さんが来てくれたら…」
「羅鱶が来ました!」
「おおっ!羅鱶さんだ!それで…姫様は?」
「こちらのスマートフォンというものを使うようです。えっと確かこうやって…こうだったかな」
「??…ひ、姫様がいるぞ!」
どうやら成功したらしいな。ビリャオの言った通り向こうのヤツらの顔が良く見えること。姫様も兵士たちも嬉しそうだ…羅鱶のやつも向こうの奴らを勇気づけたいのが目的だからか、この条件ってことで姫様をここに置いておくことに納得してくれた。
「皆様…ごめんなさい、そっちに行けなくて。私は今、草食王国ズーラムという所にいます。ここにいる皆様はとても優しくていいひとばかりです。いきなりやってきた私を沢山介抱してくれました…だからここはとても安全です。皆様だけに頑張ってらってこんなことを言うなんてワガママかもしれません。でも…私は未来のためにも必ず生きなきゃ行けません、それは皆様も同じです。…力のない私がまた行けば捕まるのは目に見えてます。またそうなり皆様に迷惑をかけて犠牲を増やす訳には行けません。だから次会うときは…この戦いが終わった時です。その時までどうかみんな…死なないで。」
姫様はここで…もっと辛くならないように電話を切った。いや…もう辛いのは確かか。だって今…俺の目の前で泣いているもんな。よくやったよ…あんたは立派な姫様だよ
魚王国
「姫様…姫様!!」
「…姫様はとても悩まれておりました。自分も行くべきか否か…。そんな中、姫様は行かないというとても辛いご決断をなさいました。私は…そういうご決断をなさった姫様のご意志を尊重したい。もし、これで姫様が傲慢だと言うものは今すぐ名乗り出てください。この私が…その怒りを全て受け止めます」
「…いないさ。この中に姫様を恨むやつなんていない!みんな姫様はご無事だ!絶対に生きて帰るぞ!!!」
「おおおおおおお!!!!」
-姫様、この羅鱶長いこと生きておりましたが…この国もまだまだ終わりではないようですぞ。いつの時代も、人とは面白いものですな姫様…