第二章 あれから 1
-あれから幾年もの時を過ごした。否、人々からすれば1年など短きものか…
ミトロンとズーラムはあの戦争が嘘かのように国交を行い、友好を深めた。不思議なものよ、恨みあっていたはずなのに。おかげで私もゲニア殿に会いやすくなったが…
草食王国は色々と変わったようだが、詳しくは聞いておらぬ…肉食王国は大した変化はなかった。国王がかのような性格ゆえか。
そして、これからも穏やかな月日を過ごすだろう…私はそう思いながら国王と母のいる玉座の間へと向かった
「今日も爽やかな朝で…国王陛下、は…いや、ダホ殿」
「おう、そうだn…」
「ねぇねぇ、貿易したい!(((((」
「…国王、いきなり何を言い出すんだ?」
「だって〜あの戦争から1年じゃん?もうそろそろ貿易始めても良くない?この国だってもっと繁栄すると思うよ」
「国王陛下の言うことにも一理ございます。どうでしょう?ダホ殿…ここは身近な国から交渉を測ってみては?」
「むぅ、確かに悪くは無いか。身近な国ねぇ…蟻王国 アントピアは無理だな。1番近いけど…」
アントピア…確か、鎖国国家と聞く。その団結力は強靭な壁のごとく高く立ちはだかるという。確かにかの国と交易を図るならば並大抵の努力では上手くいかぬだろう
「そうだねぇ〜あそこは閉じこもってんだっけ?難しそうだ。他にはある?」
「昆虫王国 クントーか鳥王国 バーデンスカイ王国はあるな」
「身近じゃないじゃん!?あそこ遠いじゃん!やだよ!(((((」
「文句言うな、国王が交易したいって言ったんだろ!(((((」
「ねぇねぇドライトン君!君の出身国はどこにあるの?」
「申し訳ございません…過去の記憶はまだ思い出せませぬ。」
「そうだよねぇ…」
シン殿はショックを受けたようだ。
…竜王国 桜花之倭国 神に最も近いと言われる種族たる竜族の住む国だ。しかし、未だその場所はわかっていないと言う。私の記憶さえあれば良かったのだが…
「あとは?もうひとつなかったっけ?えーっと…」
「魚王国 ウォーラー のことか?」
「そうそこ!近いはず!」
「あのなぁ、確かに近いけど海底都市だぞ?私の息だって持たないわ。それにあそこには怪しい噂がある。やめとけやめとけ」
「怪しい噂とな?」
「国王がまだ幼いから摂政がいるんだがそいつの黒い噂が絶えねぇんだ。魚王国では内乱も起きているらしいぜ。」
なるほど…かなり荒んだ国であるようだ。そもそもそういった国ならば国交を図る余裕はなさそうだ…と思っていたが、私たちの耳に予想外の言葉が流れた。
「国王様、失礼します。お伝えしたいことが…」
「む…兵士か?」
「魚王国の使者が交易についてお話があると参られました」
「なに…その使者って誰なんだ?」
「魚王国の摂政と名乗っております…」
「それは真か?」
「まぁ、会ってみて判断するよ。ご案内して」
「はっ…」
何故内乱しているはずの魚王国…しかも、摂政がここに?先程母が話していた黒い噂のこともある。警戒しなければな…
そして、玉座の間に魚王国の使者が入ってきた。いかにも高級感のある華美な服を着ている。
「初めましてシン様。私は魚王国摂政のグリースと申します。」
「よろしく、こっちが側近のダホでこっちが戦闘部隊隊長のドライトンだよ」
「ほう…竜族とはこれまた驚きですな。幻の一族ではありませんか。」
彼は私をマジマジと見ていた。竜族が珍しいというのはずっと言われていたこと…故に見られるのは慣れている。
見終わると、彼は国王と交渉を始めた。どうやら貿易を行いたいらしいが…
「私達はこのように豊富な海産物、それに高い織物技術で作った服などをお渡しできます」
「なる程…こっちは何を出せる?」
「鉱石とか…肉、あとは武器だな。」
この一言で母が相手を試そうとしていたのはすぐにわかった。本当に内乱したり黒い噂があるのならば…武器という単語に飛びつくはずだ。
そして、その罠にかの男は引っかかった。顔が少し笑っていたのだ。やはりこの男…
「では、武器を頂けると嬉しいのですが」
「…何を渡すかはこっちで決めるよ。そういったことを決めたいし2週間時間をくれないかい?」
「…分かりました。失礼します」
早い退きである。交易を渋るのをわかったらさっさと行ってしまった。これは…怪しいと言わざるを得まい。
「国王…今のは…」
「うん、これは怪しいね。武器と言った瞬間にニヤつくとか。ポーカーフェイス下手かよ(((((」
「国王陛下…今はそこではござらぬ(汗)」
「そうだね…ダホ君、魚王国についてもっと調べて。」
「おう、わかった」
「ドライトン君、君はズーラムへ向かってグリースについて警告してきてくれ。王老会があるとはいえ、ラムがいないあの国を狙われる可能性は高い」
「仰せのままに…」
私は国王の言う通りにズーラムへと向かった。…この嫌な予感が当たらないといいのだが。
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「…急がなきゃ。あの時のようなことは繰り返させてはならない。数多くの国を繋げて、かの勢力に対抗する力を。」