第一章 戦後2
-ラムが目を覚ましたという報告はまだ入ってこない。あんな怪我をしたんだ、当たり前と言っちゃ当たり前だ。
でも、何やらノアが慌ただしく玉座の間に入ってきた
「おーさまっ!!!!!ラム様が……ラム様がいません!!!」
「!?」
「だれも……みてないんです!ラム様を!!」
「ラムっ!!!」
私は俄に信じ難いので、彼が眠っていた治療室…それも個室のドアを開けた。しかし、確かにそこにラムはいなかった
「はぁ…はぁ…」
「女王様…」
「探してくれ…今すぐっ!!!!ラムを!!!!!探してくれ!!!!」
…兵士達が捜索を始めてくれた。他にも国のもの達がみんなで探してくれた。しかし…見つかることは無かった。
どうしてだラム…私が弱いから?臆病だから…?あんな決断をしてしまったから…………?
私は…ラムに愛想を尽かされてしまったのか?ごめんよ…ラム。私は…罪深き国王だ。
数日後…
「アマリア様…まだラム様は…」
「……」
「お食事…置いておきます。今日こそは召し上がってください」
…あの日から私は外に出るのが怖くなってしまった。ラムだけじゃなくて…他のものを失うのが怖かったから。
国王として失格だ。そして…幼なじみとしても。私は…私は…
時同じくして肉食王国 ミトロン…
「!ラムが行方不明…!?」
「そのようです。その影響か、ズーラムの王 アマリアは最近寝室の外に出ることが極端に減った模様です」
「…兵士の何割かをラムの捜索に当ててくれ。彼にはまだやってもらわなきゃならないことがたくさんある」
「はっ…!」
-ラム…お前、何してんだよ。アマリアを支えられるのはお前しかいねぇんだよ。行方不明になんかなってないでさっさと戻ってこい…!
そう思ってると、ダホ君が部屋に入ってきた。
「国王、話は聞いたぜ…ネズミ野郎が行方不明なんだってな」
「…ああ。何割か捜索に当ててる。あいつはまだやってもらうことが多すぎる」
「…それとは関係ない話になるが、私は戦闘部隊隊長を降りようと思ってる」
「!」
「…ドライトンに任せようと思ってな。私は…」
「やることはあるのかい?」
「…特にきめてない。私には戦いしかなかったからな。その戦争が終わったから… 」
「ならばダホ君…君は側近をやってくれないか?君はまだこの城から立ち去るには早い」
「…お前がそういうなら、特にやることもねぇしやってやるよ」
「ああ、頼んだよ…ダホ君」
-ラムのやつが行方不明になった。勝手に出ていきやがって。残されたアマリア達はどうするってんだ。たく…
俺の方は足がすっかり悪くなり、足に支えが必要になっちまった。まぁこれくらいで済むんなら上等だな。引退したあとはリス族の住む村の近くで暮らすことにした。今でも俺を慕ってくれるリス達がやってくる。可愛いもんだ、こういう余生ってやつも悪くはねぇ。
そうそう、戦争が終わって変わったことがある…俺に新しい友人ができたんだ。まぁ、予想はしてるだろうがドライトンだ。今日もあいつはやってきた
「ゲニア殿!本日は異国より仕入れた酒を持ってきましたぞ!」
「お、いいね。今日はリス達もいねぇから夜通しで酒盛りだな。」
「うむ、楽しもうぞ!」
たまにやってきては俺と酒を飲んで話をする。これが楽しみの一つになってきた。まだリス達はドライトンを怖がってるらしいが話してみると案外母思いの良い奴だったりする。きっとリス達もこいつのことをわかってくれる日が来ると思ってる。
……
「…ラム殿が心配であるか?」
「あいつのことは心配じゃあねぇ。ただ…妙になにか心につっかえるものがあるだけだ。なんにも言わないでどこかに行くなんてよ。俺達のことを信頼してないのかね…」
「…人には信頼している者の間柄でも言えないことはあるものであろう。ラム殿もきっと、そういう部類なのではないか?」
「かもな…」
…早く帰ってこい。何をしたいのかはわかんねぇけど、皆がお前を待ってるぞ…
-体がまだ痛む。無理をしすぎたか?いや、無理をしなきゃダメだ。
迷惑をかけてることも、心配をかけてることもわかってる。他に方法がないのか?というのも分かる…けど、僕の知ってる世界は2つの国だけでしかない。それでどうやって守ればいい。僕が守りたいのは今だけじゃない…未来も守りたいんだ。
今、僕が歩みを進めるのは今を変える為じゃなくて…平和な未来へと導くためだ。アマリア…シン…ゲニア…みんな。僕は必ず僕を変えてくる。その時にまた…会おう。
第一章 end
To Be Continued…