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瞳の中のキセキ   作者: 夢遥
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瞳の中の キセキ

いつも、夢中で読んでいる本の中の海斗に夢中な愛楓だったけど突然、目の前に海斗が現れて動揺を隠せない。

こんな状況を知っているのは、幼なじみの奏多だけ。

そんな中、もう独りの幼なじみ梨音に叔母さんが経営している弱小芸能事務所を海斗に手伝ってほしい!と頼まれ、すんなりOKする海斗に愛楓は複雑な気持ちでいた。

海斗が、梨音の叔母さんの芸能事務所を手伝うことになってから、放課後に待っていることはなくなった。


海斗が事務所を手伝うことになってから1週間かーー。


毎日逢ってたのに、最近は全然逢えない。



「はぁ~~~」


学校の廊下の窓から空を眺めながら、思わず溜め息が漏れる。


「海斗さんなら、元気にやってるわよ~~~?」


隣にいた梨音が、ニヤニヤしなが顔を覗き込んできた。


「や、やだなぁ……私、何も言ってないけど?」


「ふ~ん?まぁ、そういうことにしておくわ~~~」


「梨音ってば……」



「海斗さん、叔母さんに気に入られて、とりあえず1ヶ月限定で手伝ってもらうことになったんだけど」


「………………」


海斗から連絡こないから、全然知らなかった……。


「ふふふ…そんなに気になるなら連絡してみたら?」


「な、何言ってるの?梨音。き、気になっているわけじゃないから」


慌てて否定したものの、ついしどろもどろになってしまう。


「強がってると、海斗さんに嫌われちゃうよ?でも、愛楓が気にしてたって伝えとくね」


「はは……ーーー」


梨音の言葉に、つい苦笑いするのだった。





それから、数日過ぎのことーーー。


日曜日の昼下がり、お昼を食べてのんびりしていると、海斗から珍しく電話がかかってきた。


「愛楓~、元気だったかー?」


電話の向こうから、久しぶりの海斗の声が耳に響いて胸がきゅんとなる。


「め、珍しいね……海斗から電話くれるなんて」


「俺に逢えなくて、寂しかったか?」


「そんなこと言う為に、わざわざ電話してきたの?」


つい、可愛くない態度をとってしまう。


「何だよ、寂しかったなら素直に言っていいんだぞ?って…まぁ、俺は愛楓に逢えなくて寂しかったけど」


「……………ーーー!!」


本当にーーー?


海斗の言葉に嬉しさが混み上がる。


「まぁ…それはおいといて、また忙しくなりそうだから何か腹の足しになるの買ってきてくれないか?」


「何で…私がーーー自分で買ってくればいいじゃない」


「頼む!梨音から訊いたと思うけど、社長に気に入られちゃって、とりあえず1ヶ月契約することになって忙しくなりそうだからさ……」


「梨音のこと名前で呼ぶなんて、随分…親しくなったのね?」


「まあ、社長の姪だし…それなりに」


「じゃあ、梨音にでも頼んだらいいのに」


「何だよ、愛楓に持ってきて欲しいから頼んでるのに……もしかして!妬いてるのか~?」


「べ、別にヤキモチなんか……ーーわ…わかったわよ!適当に買って持っていくから」


つい、ムキになってしまいながらも承諾してしまう自分がいた。


「サンキュ~!じゃあ、待ってるから」


電話が切れた後、早速、スーパーへ向かったものの何がいいか悩んだ結果、カレーやピラフを作って冷凍保存することにした。





数時間後ーーー。


部屋を訪ねると、海斗は部屋の中へ招き入れてくれた。


「愛楓、来てくれたのに悪いんだけど、仕事ですぐ出かけないとならないんだ」


海斗は忙しそうに、出掛ける用意をしながら口を開く。


「えっ、今から?」


買い物に時間がかかったせいか、海斗の所についたのが17時を回っていた頃だった。


「ごめん!帰るの夜中になると思うから、食材…冷蔵庫の中に適当に入れといて」


「夜中って……海斗大丈夫なの!?夜中には向こうの世界に戻っちゃうんでしょ?急に海斗がいなくなったら…みんなお大騒ぎに…」


「大丈夫だって!前よりは、戻るの頻繁じゃないし、戻っても…朝にならないうちにこっちに来てるから」


「…そうなんだ……」


って、安心している場合じゃない。

向こうの世界に行っても、芸能活動してるんだよね?それなのにこっちでも、忙しそうにしていたら、海斗の身体が心配だ。



「じゃあ、あとは頼むな」


海斗は、準備が終わると、さっさと仕事に出掛けてしまった。



「仕方ない…海斗がちゃんと栄養つけられるように作って冷凍室に入れておきますか!」


腕まくりをすると、早速、買ってきた物を出すと、キッチンでカレーとピラフを作る。

カレーの材料を切って炒めて、野菜が柔らかくなるまで、その間にピラフを作って熱が冷めたら保存パックに入れて冷凍室へ。


仕事で忙しいせいか、冷蔵庫はもちろんのこと冷凍室の中もがら~んとしていていた。


作った物を冷凍室や冷蔵庫に入れると、リビングへ行く。


さっきはすぐにキッチンに入っちゃってわからなかったけど、前に来た時よりリビングも冷蔵庫と同じくスッキリしていて、ちゃんと帰ってきているのか疑問だ。


海斗…大丈夫なのかなー?ちゃんと寝てるのかな?

食事もちゃんとできてるか心配だけど、冷蔵庫に作り置きしといたし、大丈夫だよね?



心配する気持ちが、余計に大きくなるのは1週間過ぎてからのことだった。




学校から帰ってきて夕食とお風呂をすませた後、ソファーで寝そべりながら、何かやっていないか、テレビのチャンネルを回していると、今日から始まる新ドラマが放送されていた。


確かタイトルが『恋をするのは 君のため』だった。ストーリーは、記憶を失った恋人を主人公がまた恋をした時の気持ちを想い出させる為に、いろいろな困難を乗り越えていくラブストーリー。


学校でも話題になっていて梨音も、面白そうとか言っていたのを思い出す。


興味がない訳でもないし、ちょっと観てみようかな~?


観ていくうちに、主人公が友達と戯れている場面で、見覚えある顔が飛び込んできた。


「えっ……海斗!?」


テレビの画面に海斗が笑顔で、演技している。



主人公の友達で海斗が出演してるなんて知らなかった………。でも、テレビで観られるなんて奇跡だよ~。



海斗の演技は、周りの共演者より引き立つものがあった。


2次元の海斗も演技力が凄くて、スターになったんだよね……。こっちの世界でもスターになっちゃったりして?





予想は命中して、海斗がドラマに出たことで、TwitterやSNSであっという間に話題になってしまった。



その事について、学校では梨音がはしゃいでいた。


「愛楓、海斗さん凄いよ~、一気に人急上昇で叔母さんも喜んでたよ~!!」


凄く喜んでる梨音を見ていると、こっちまで嬉しくなってしまう。


でも、元の世界に戻ることは少なくなったとは言っていたけど、向こうとこっちに行き来している海斗の身体がついていけるのか心配だ。



学校の帰り道、海斗からメールが入っていることに気づく。


ーー今から、逢えないかな?場所は愛楓の家の近くの公園にきてくれ



この前までは、何か食べる物持ってこいと言って、部屋に来るように命令しておいて……今度は珍しく公園ですか…………。




言われた通り、公園まで行ったけど、深々と帽子を被り眼鏡をかけマスクをした男の人がベンチに座っているだけだった。



おかしいな……海斗いるはずなのに。


キョロキョロしていると、ベンチに座っていた男の人がこっちに向かって歩いてくるのが見え、恐怖で冷や汗が流れた。


こ、これって…ヤバい感じ?逃げた方がいいよね………。


余りにも不振な感じがして、後退りしかけた時、


「愛楓、俺だよ。俺」


不振な男が私の名前を呼んだ。


「オレオレって…オレオレ詐欺じゃないんだから……………」


ん?でも、よく見ると誰かに似てるような………。


男は周りをキョロキョロ確認してから、マスクと眼鏡を外した。


「か、海斗!?」


帽子と眼鏡をとった姿は、いつもの海斗だった。


「ごめん、驚かせたかな」


「だって…そんな格好してたら誰だって不審者だと思うよ」


「悪い…最近、記者につけられててさ」


「えっ!?」


記者につけられてるなんて知らなかった。


「こんな格好するのも一応、念の為な」


「………………………」


さすが海斗、慣れてるというか万全の対策だ。


「この辺だと、さすがに記者はいないみたいだな」


記者がいないことに安心したのか、海斗はひと息ついた。


「大丈夫なの海斗………大変なことになってたりしてるんじゃないの……?」


「大変なことって……大丈夫だって、向こうの世界でもこんなことは普通だったし」


「…………………………」


普通って言われても、私にとっては普通じゃないんだけどな…………。


「もしかして、心配してくれてたのか?」


「べ、別に心配してたわけじゃ……私のこと海斗のオモチャって言いながら、放ったらかしだから……」


「要するに、構ってもらえなくて寂しかったわけだ~」


「ん…まあ…それもあるけど」


少し拗ねた顔で、チラッと海斗をみた。


「俺だって、愛楓に逢えなくて寂しいけどな」


海斗は、私の腕を掴むとグイッと引き寄せた。


「…………ーーー!!」


だから、今日逢おうとか言ってくれたの?


「ど、どうしたの?海斗……」


「いや、なんか愛楓が可愛いなと思ってさ」


「い、いきなりそんなこと言ってどうしたの!?」


いつもなら、からかってくるはずの海斗が、何だか今日はやけにストレートに言ってくる。


いつもと違う海斗に戸惑いを隠せないでいると、


「愛楓………?」


いつの間にか、奏多が呆然としながら立っていた。


「奏多!?」


私は慌てて海斗から身体を離す。


「いつからいたの!?」


「つい、さっきだけど…いや、こんな所でイチャつく奴がいるなと思ったら、愛楓だったから」


この公園は、奏多が学校に行く時の通り道。帰りだってここを通るのは不思議ではない。


「あ…君は確か、この前会ったよね?」


家の近くで奏多と会ったことを思い出したのか、海斗はパチンと指を鳴らした。


「あっ、お前は…!?」


始めて海斗に気がついたのか、奏多の表情が変わる。


「愛楓、まさかこいつと付き合ってるのか!?」


「えっ、付き合ってないけど………」


「付き合ってないのに…抱き合ったりするのかよ?」


「そ、それは…………」


何て言っていいのかわからず戸惑っていると、海斗が口を開いた。


「付き合ってなくったって、抱き合ったりするだろ?」


「は?そんなのお前だけだろ?今、人気がでてきたからって、愛楓を弄ぶやようなことはやめろよ!?」


「何だよ、妬いてるのかー?」


海斗は面白半分で奏多をからかっているけど、私には何だか複雑な気持ちでいた。


奏多には告られたこともあったけど、幼馴染みとしかみられないし断った。でも、あれって2、3年前のことだし、まさかまだ私のこと好きとか…………?



「お…幼馴染みとして心配してる……だ…けだし……」


だんだん、声が小さくなる奏多を見てピンッときた。


嘘ついてるよね?何年も奏多と幼馴染みやってるからわかる。


「も、もういいじゃない?そのくらいにしてあげたら?」


間に入って何とか空気を変えようとした。


「愛楓、今まで部屋に来てもらってたけど、これからはここで逢おうな。時間が空いたらまた連絡する。じゃっ!」


「海斗!?」


私が呼び止めているのに、海斗は急いで立ち去ってしまった。


「部屋……って、いつもあいつの所に行ってたのか?」


海斗がいなくなった後、ボソッと奏多は口を開いた。


「え?あ、毎日ではないけど、ちゃんと食べてるか心配で作り置きしたり……」


「いくら、あいつのことが好きだからって、あまり深入りすると後で後悔するのは愛楓だぞ」


「別に、後悔なんてするわけないでしょ」



現実の海斗はチャラいし、こんな奴だったの!?と幻滅したこともあったけど、寝るのも惜しんで仕事を頑張ってる海斗を見て、やっぱり好きな気持ちは変わりないし、近づけたことは後悔することなんてありえない。


「あいつはいつかは、愛楓の前からいなくなるんだぞ?それでもいいのかよ」


「………………………」


それは、わかってる。いつかは元の世界に戻ってしまうことくらい。





いつ海斗が帰ってしまうのか、不安な気持ちも知らずに、海斗は人気No.1の若手俳優となっていった。


「聞いてよ~、愛楓!ファンから届いたメールを海斗さんってば、独り独りに送ってるんだよ!本当は事務所かマネージャーが代わりにやることなんだけど、こうして仕事を貰えるのもファンのお陰とか言っちゃってさ~。全然、気取ってないし、あれは人気になるのも頷けるわ」


学校でお昼休みに梨音とお昼を食べながら、海斗の話するのが日課になっていた。


勿論、学校でも海斗は人気で、海斗が載っている雑誌を持ってきている子もいる。



「愛楓も大変だね、好きな人が有名人になっちゃって」


「ははは…………」


苦笑いしてはみたものの、前は一週間に1回は公園で逢えたのに、最近は時々逢えるか逢えないかになってきて寂しい気持ちもあった。


今からこれじゃ、海斗が元の世界に帰っちゃったら私……どうなっちゃうんだろう?


「あ、そうだ!海斗さんが映画にも主役で選ばれて叔母さんも鼻高々だよ~」


「えっ、そうなの!?」


思わず、お箸を落としそうになる。


「はぁ~、やっぱり何も聞いてないか~~~」


思った通りと言う顔しながら、梨音は溜め息をついた。


「最近、メールもこないし………」


「愛楓に連絡しないで、海斗さんってばどう言うつもりなんだろう」


「仕方ないよ…海斗も忙しいんだし……」


「そうだけど……」


「……………………」


海斗に逢いたいけど、仕事の邪魔しちゃ悪いし、これ以上、海斗と逢うことが増えたら別れがきた時、余計に辛くなる。



そんなことを思っていても、映画で主役を抜擢されてから、ドラマやCMで海斗を観ない日はないくらいになったのも束の間、衝撃なスクープが報道された。




クラスの子が学校に持ち込んでいた雑誌に海斗と今、人気急上昇のモデル藤本環奈(ふじもとかんな)がキスしている写真が一面大きく飾っていた。


「ーーーーー!!」


ドクンっと大きく鼓動が波打つ。


「何これ?こんなことになってるなんて知らないんだけど……」


始めて見る記事に、梨音は呆然と立ち尽くしていた。





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