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瞳の中のキセキ   作者: 夢遥
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瞳の中の キセキ

本の中の澤谷海斗に夢中な高二の女の子、愛楓だったけど、突然目の前に現れた海斗に驚きを隠せない。

夜中に元の世界に帰るという不思議な現象に戸惑う愛楓。

愛楓の家にずっと海斗を住むわけにもいかず、海斗は住む所を見つけて、現実世界で暮らすことになって………。

週末を迎え、海斗が宿泊しているホテルへ行ってみることにした。



「あっ、ここだ……………」


携帯の地図のアプリを頼りに、迷いながらも海斗がいるホテルに到着した。


この前、海斗からホテルの名前と部屋の番号を書いた紙が家のポストに入っていた。


部屋の番号が書かれたメモ書きを見ながら部屋を訪れると、海斗が部屋から出てきた。



「海斗、着替え持ってきたよ」


とりあえず、海斗と背格好が似ている、お父さんの着なくなった服を何着か、こっそり持ってきた。


「サンキュ~~~♪」


服の入った紙袋を受け取ると、中へ招き入れた。


「助かった、服を買うにしても何処がいいか困ってたんだ」


「それなら、男の子に人気のお店があるよ!!」


学校で、お昼休みに男子達が話ていたことを思い出す。


「じゃあ、これからその店に案内しろよ」


「いいけど………」


そして、私と海斗は洋服店へと向かった。



「いらっしゃいませ~~~!!」


店に到着すると、店員さんのおすすめの服や海斗が目に止まった服を試着したりしてみる。


「彼氏さん、カッコイイから何でも似合いますね♡彼女さんが羨ましいわ」


店員さんがチラッと私の方へ視線を向けた。


「~~~~~~」


彼氏じゃないけど、店員さんに褒められると、こっちまで照れてしまう。


「あ、こいつ、彼女じゃないんで」


キッパリと海斗に否定されて、ガックリと肩を落とす。


「えっ、そうだったんですか?

それは、失礼しました。でも、これから彼女になる方は羨ましいわ~~~♡」



「じゃあ、彼女に立候補します?」


突然の口説き文句に、言葉を失う私を横目でチラッと見ながら、海斗は唇の端を上げクックックと可笑しそうに笑いを堪えていた。


「ふふふ……お客様ったら、そんなご冗談を~~~、これもセットでサービスしちゃおうかしら~~~」


店員さんは、頬を赤らめながら帽子を洋服と一緒に袋に入れた。


「何だか悪いな~、また、来ないとな」


「また、是非ともいらして下さい。お待ちしてます♡」


ぽっと頬を赤らめる店員さんに見送られながら、私と海斗は店を出た。



店を出て何分経っただろう、何も話さない私に、急に海斗がケラケラ笑い出す。


「なっ、何が可笑しいのよ!?」


「ククク……店にいた時の愛楓の顔、百面相だったなと思って」


「そんなに笑うことないじゃない!大体、海斗がいけないのよ?店員さんを口説いたりして!?」


「何、怒ってんだよ?愛楓は彼女じゃないんだから、俺が誰を口説こうが関係ないだろ?あっ、わかった!妬いてんだろ?」


「べ、別にそんなんじゃないから!!」


「本当か~?俺一筋だったくせに」


「ーーーーっ」


図星を言われて、何て言ったらいいのか言葉が出てこない。


「そ、それより、海斗ーー。今も夜中に元の世界に戻ってるわけ?」


私は、慌てて話を変える。


「あー、前よりは減ってるかな」


「えっ、元の世界に戻らないこともあるわけ?」


「ああ………」


「ーーーー」


どういう事だろう?今までだったら毎日だったのに………。


「まあ、そのうち戻れると信じるしかないなーー。それより………」


急に海斗に肩を抱かれて、私の心臓がドキンと波打つ。


「な、何?」


「何って、用事も済んだことだし、これからデートしようぜ」


「デート!?そ、そりゃあ……海斗とデートできるなんて夢みたい………じゃなくて!何かあった時の為に海斗と連絡とれる方法考えないと」


「何だよ、素っ気ないな~」


「だって、今回だって海斗の書いた紙に気づいたから良かったけど、もし誰かに見られたらどうするのよ?」


弟の凌に見られたら、たちまち親に言いかねない。


「それもそうだなーーー」


海斗は少し考え込むと、何か思いついたように指をパチンと鳴らした。


「携帯のメールで連絡とれないかな?」


「んーー、でも、全然住んでる世界が違うんだよ?使えないんじゃないのかな?」


「いや、金も使えたんだし、もしかしたら使えるかも知らない。愛楓のアドレス教えておけよ」


「うんーーー」


確かに、お金は使えたみたいだけど………。 携帯電話まではどうなのかな………?


半信半疑、アドレスを教えると、海斗の思った通り携帯電話は使えたのか、その夜、メールが届いた。


『俺の思った通り、携帯は使えるから、ビシバシ扱き使うから覚悟しとけよ』


「なっ!…………」


信じられない!携帯電話を使って扱き使われるなんてゴメンだ。


『冗談でしょ!誰が海斗の奴隷になるもんですか』


『俺のオモチャになるって言ったの忘れたのか?』


「ーーーっ」


あれは、無理やり約束させられたようなものなんだけど。


♪~♪~♪~♪~~~~


少しムッとしていると、海斗から電話がかかってきた。


「もしもし、海斗!?別になりたくてオモチャになったわけじゃ………」


「いいのいいの、本当は嬉しいくせに~~~。とにかく明日、学校まで迎えに行くから。よろしく~~~」


「えっ、ちょっとーーー、そんな勝手に決められても困っーーー」


こっちが言い終わらないうちに、電話が切れてしまった。


「もぅ……なんなのよーーー。まさか、本当に学校に来たりしないよね?」


半信半疑のまま、携帯電話を見つめることしかできなかった。




翌日の放課後ーーー。


「ねえねえ、校門のとこ見た?」


「見た!!超〜イケメンがいた。誰かと待ち合わせしてるのかな?」


帰ろうと梨音と教室を出たところで、女子達がキャーキャー騒いでいるのが耳に入ってきた。


「今の訊いた?正門のとこにイケメンがいるって」


さすが、芸能事務所を経営している叔母さんをもつ梨音。イケメンと言う言葉に、反応しながら目を輝かせている。


「ーーーーー」


正門のにいるってことは、海斗しか思いあたらない。


梨音と急ぎ足で正門に向かうと、人だかりができていた。


「誰か待ってるんですか~?」


「一緒に遊びに行きましょうよ~」


ちらほら、誘惑する声が飛び交う中、視線の先には海斗の姿が映った。


「ーーーー!!」


半信半疑だった私にとって、 本当に海斗が学校に来てることに少し驚いてしまう。


「おっ、愛楓~~~!!」


海斗は私に気がついたのか、ブンブン手を振った。


そのタイミングで、みんな一斉に私の方に視線が集中する。


「ちょっと、愛楓、知り合いなの!?」


隣では梨音が、興奮気味に訊いてくる。


「えっ?あ、うん…………」


曖昧に応える私の所に、海斗が近づいてきた。



「愛楓、紹介してよ!!」


梨音に急かされ、戸惑っていると海斗が笑顔で梨音の方を振り向いた。


「愛楓のお友達?」


「はい!!」


梨音は元気よく返事をする。


「へぇ~、愛楓の友達にしては美人だね」


「え、そうですか~~~?」


海斗に煽てられて、梨音はますますテンションが高くなる。


ま、梨音は目もパッチリしていて鼻筋も通っているし、美人なほうだから海斗の言っていることは嘘ではないけど、私の友達にしてはってどういう意味よ!?



「でも、知らなかったな~、愛楓の知り合いにこんなイケメンがいたなんて~~~」


「あはは……………」


私は苦笑いしてみせたけど、梨音はもう一度マジマジと海斗を見つめた。


「ん~でも、この男の子何処かで見たことがあるような?」


「えっ、き、気のせいじゃない?」


梨音に本のページに載っていた挿絵を見せたことがあったから、覚えてるのかも知れない。



「気のせいじゃないかもな?何処かで逢ってるかもよ」


「やっぱり!?」


海斗に言われて、梨音の表情がパァと明るくなる。


「ちょ、ちょっと、海斗!!何か用があって来たんじゃないの!?」


慌てて話を変えると、海斗は思い出したように、


「あ、そうだそうだ~、愛楓、行くぞ!!」


急に腕を掴まれ、連れていかれたのは映画館だった。




「海斗、何か観たい映画館あるの?」


「別に、ないけど。こっちの世界の映画も興味があるし付き合えよ」


「いいけど………、今やってるのはホラーとアクションものと恋愛ものか………海斗はどれにする?」


向こうの世界では、海斗は恋愛映画にも出演してたんだよね?自分で観るとなると、何のジャンルを選ぶんだろう?


「そうだな……アクションかな」


海斗の希望通り、アクション物のの映画を観ることにした。



映画が始まると、子供のように目を輝かせながら、海斗は映画に夢中になっているのを隣で目にしながら思わずクスッと笑ってしまうのだった。




「あ~、面白かった」


映画が終わると、海斗は満足そうに笑を浮かべた。


「ふふふ、海斗ってば子供みたいにはしゃいでたもんね~?」


「悪いか?」


「意外な一面が見れて、嬉しいなと思って」


今までは、文字を読むだけしか海斗のことがわからなかったけど、こうして隣にいることだけで海斗の表情が見られるなんて思ってもみなかった。


「惚れ直したか?」


「な、なんでそうなるのよ!!」


「俺に見とれてるみたいだったから」


やっぱり、今の言葉は撤回!!こんなチャラいなんて想像もつかなかった。


「映画も観たし、もういいでしょ?帰るよ」


私は、さっさと先に歩いて行く。


「愛楓、送るよ」


「独りで帰れるからいいよ」


そう言ったのに、ちゃんと送ってくれる海斗だった。





家の近くまで行くと、奏多の姿が目に映った。


「奏多」


「丁度良かった、愛楓。沢山、リンゴを貰ったから、愛楓のとこに持っていけって母さんが……」


奏多は持っていた大きな紙袋を差し出す。


「えっ、いいの?ありがとう~!おばさんにお礼言っといて」


受け取ったリンゴが入った袋は、ずっしりと重さを感じさせ。


「ところでさ………そいつ誰?どっかで会ったことあるような気がするけど」


奏多は攻撃的な視線で海斗をみると、私の横にピッタリとくっつくように立った。



「ちょっ……奏多ってば、くっつきすぎ……… 」


奏多から少し離れようとしたけど、反対に腕を掴まれてしまった。


「いいから、応えろよ」


「えっと…………」


何て言ったらいいのかな………?本当のこと言ったら信じる?


躊躇していると、海斗が口を開いた。


「随分、強引なんだな。愛楓が嫌がってるだろ?」


「へぇー、呼び捨てかーーー、随分と親しいんだな」


海斗と奏多が睨み合う中で、私はハラハラしながら2人を見つめた。


「そりゃあ、切っても切れない仲だし親しいのもあたり前だろ」


「わかった!従兄妹とかか?でも、今までそんな話、愛楓から訊いたことなかったけどな…………」


「あ、あのね、奏多……海斗は従兄妹じゃなくて……」


違和感に感じている奏多を横目で見ながら、躊躇してしまう。


これ以上、奏多には誤魔化せないような気がしてきた。

信じてもらえないかもしれないけど、本当のことを言おう。


何とか事情を説明することにーーー。


数分後、始めは半信半疑に訊いていた奏多だったけど、話が終わる頃には真顔になっていた。


「通りで見たことがあると思ったら、そういうことか」


それもそのはず、奏多も私が愛読していた本は見たことがあった。


「信じてくれるの?」


「愛楓は冗談で言う奴じゃないって、知ってるし」


「奏多……………」


「でも、現実にはありえないことだよなーー」


奏多が言う通り、現実にはありえないことだよね…………。



「へぇー、愛楓のこと信用してるんだ?」


意外そうに海斗は奏多に視線を向ける。


「当たり前だろ、愛楓は大切な幼なじみだからな」


「大切な幼なじみで悪いんだけど、コイツは俺のオモチャだから、これからはお前との時間は作ってやれないかもなーーー」


海斗は私を引き寄せると、肩に手を置いた。


「は?何だよオモチャって……愛楓は、物じゃない」


奏多はキッと海斗を睨むと、私の腕を掴み自分の方へ引っ張った。


「奏多………痛い」


ガシッと掴まれた腕にズキズキ痛みが走る。


「ご、ごめん………」


慌てて手を話した後、深く溜め息を着く。


「愛楓、今までこんな奴が好きだったのかよ?」


「………………………」


そう言われると、なんて言ったらいいかわからなくなってしまう。


「とにかく、こんな奴の彼女になったら、愛楓が泣くことになるから俺は反対だからな!?」


「べ、別に海斗の彼女になるって決まったわけじゃ……………」


慌てて否定したけど、奏多には聞こえず、さっさと家に帰ってしまった。



「ククク…………カレ、何だか愛楓のお父さんみたいだな」


笑いを堪えながら言う海斗に、私はムッとする。


「誰のせいで、奏多がああなってると思ってるのよ」


「何だよ、本当のこと言っただけだろ」


反省もなく海斗はケロッとした顔をしている。



はぁ~~~~~。


これからどうなっちゃうのよーーー!!



これから先のことを考えると、深く溜め息をつくことしかできずにいた。





それから、一週間毎日のように放課後になると海斗が学校に迎えに来るのが日課になっていた。


「ちょつと、海斗!!毎日来なくてもいいから」


女の子達に囲まれながら、正門の前で待っていた海斗を無理矢理、連れ出すとキッと睨みつけた。


「そう怖い顔しないの。可愛い顔が台無しだぜ」


海斗が私の髪に触れそうになった瞬間、パシっと手を払いのける。


「真面目に訊いてよ!!毎日来られると、私が困るの」


ここ最近、海斗目当ての子に呼び出されて、海斗とはどういう関係なのかとか探ってくるし、しつこいったらありゃしない。



私がムッとしていると、


「あ、愛楓ーー、やっと見つけた!!」


私の姿を見つけて、梨音がホッとさせながらやって来た。


「梨音……、ごめん。一緒に帰る約束してたのに先に来ちゃって」


朝、一緒に帰る約束をしたのに、海斗がいるのが見えて、つい先に外へ出てきてしまった。


「大丈夫だよ……ーーー」


そう言いながら、梨音は海斗の方へ視線を向ける。


「えっ…と、確か海斗さんだよね?愛楓とは付き合ってるの?」


「べ、別に付き合ってなんかいないから!!ただの知り合いって言うか……えっと……そ、そう従兄妹なのよ!!」


「ふ~ん、従兄妹ねーーー」


「そ、それより、なんで名前知ってるの!?」


「なんでって、いつも放課後になると海斗がまた来てるとか言ってるじゃない?」


「…………………………」


確かに、独り言のようにいったこともあったけど…………。まさか、梨音に聞こえてたとはーーーー。


「それに、いつも愛楓が愛読している本のキャラと同じ名前だからすぐに覚えちゃった」


「ーーーーっ」


なんて言っていいのか分からず、言葉に詰まっていると、


「へぇーーー、そんなに俺のことが気になってたわけか?」


ニヤニヤしながら、海斗は私をみた。


「そ、そんなことないから」


プイっとそっぽを向いた私に、梨音が真顔で口を開いた。


「ねぇ、愛楓。彼と付き合っていないなら、ちょっと頼みがあるんだけど」


「頼みって?」


「海斗さんを少しの間、貸してくれないかな?」


「えっ?」


「ほら私、叔母さんの事務所でバイトしてるじゃない?」


「うん」


「事務所に所属している子もあまり、売れてないし経営が上手くいってないみたいなんだよね………」


「ーーーー」


「それで、誰か宣伝できそうな人を捜してるんだけど………」


「まさか、それを海斗に手伝ってもらいたいたいってこと?」


「さすが愛楓~~、話がわかる!!始めて会ったばかりなのに、こんなことお願いするのも気が引けるんだけど……海斗さん、叔母さんの事務所を手伝ってくれませんか!?」


梨音は、海斗に深々と頭を下げた。


「んー、要するに叔母さんの事務所は、芸能事務所ってことでいいのかな?」


「はい」


「…………わかった、俺で良ければ手伝う」


少し考え込む仕草をした後、海斗は梨音に返事を返した。


「良かった~~!!じゃあ、さっそく今から叔母さんの所に一緒に来てくれませんか?」


「わかった」


「愛楓、ごめんね。ちょっと海斗さんのこと借りるね」


「どうぞどうぞ」


梨音に言われて笑顔で応えると、海斗は私の耳元で囁いた。


「愛楓、俺がいなくて寂しいだろうけど我慢しろよ」


「べ、別に寂しくないから!!」


顔を真っ赤にさせながら、海斗を睨みつけた。


「ぷっ………そんなに真っ赤にして愛楓~、可愛いい♪」


絶対に海斗、私の事からかってるよ~~!?


本の中の海斗はこんなんじゃなかったのに!!


2次元と現実のギャップに、ガッカリと肩を落とすのだった。































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