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君のいない夜空なら今日僕は死ぬ  作者: 源 蛍
第一章 100回目
7/87

1─7

第一章の第二部分スタートです。

 突然な話だが、俺は今どの女の子よりも矢吹のことが好きだ。彼女になってくれたからというのもあるだろうが、何か凄い好きだ。

 だからというのも何だが、俺のスマホには矢吹の盗撮写真が大量に保存されている。

 好きなコは盗撮したいものだろ?


 それに俺は全然大したことはないぞ。たった百枚程しかないからな。

 本当はもっともっと、過激な写真が欲しい。


「今日は五月十九日……よし、大丈夫だ」


 真っ先に時計を確認したのにはわけがある。勿論呪いのことでだ。

 以前、俺は矢吹の呪いを共に受けて崖下に落下したのだが、その後五月十八日を繰り返すことになった。

 前日は説明の為に矢吹と会っているから、死に戻りの呪いは発動しなかったらしい。


 でも、十八日の一度目、何で矢吹はその時俺に相談せず寧ろ逃げる様に過ごしていたのだろう。

 二度目の十八日では休日なのにも拘らず学校まで来て俺を呼んだというのに。

 ……何か、凄く不快な理由が脳裏を過ぎったぞ。


「もしかして矢吹……一度わざわざ死んで信じさせようとしたのか? だとしたらもう二度とやらないでほしい」


 俺の考察が正解ならば、矢吹に信用されていなかった証拠でもある。実際、俺も疑いを消せなかったしな。

 だがその所為で矢吹が苦しみを味わうのなら、俺は大反対だ。

 どうしても信じて欲しい場合、一度でいいから◯◯◯◯させてくれればいい。秒で信じるぞ。


 何か無性におっぱい揉みたくなってきたぞ。矢吹の鷲掴みで包み込めるのを求めるか、昇の有り余るおっぱいを求めるか、李々華の貧乳を求めるか……どれなら怒られないだろうか。

 試しに李々華にお願いしてみるか。


 一つ右の部屋、李々華の寝室にノックして入る。

 朝九時になっても誰も出かけていないのは、恐らく学校が日曜で休みだからだろう。俺も今日は部活無い。

 机に向かっていた李々華は俺を横目で見て、早くも軽蔑した様な冷めた目つきになった。

 それでも俺は堂々と、


「おっぱい揉ませてくれないか?」


 真顔で発言。

 数秒後、李々華は眉を寄せて汚物を見る様な目で俺を睨む。怖い怖い。


「ウジ虫でも頭に湧いてんの? 何で? 意味分かんないよゴミクズ兄」


「段々罵り方が酷くなっていくな。因みにウジ虫はハエの幼虫だぞ」


「知ってるけどそれが何。キモい。話逸らすな。質問に答えてよ」


「痛い。痛いぞ李々華。目潰しはいかん」


 瞼に突き立てられたシャーペンを何とか机の上に置かせ、先程の思考についてを語ることにした。


「実はさっき、彼女の写真を眺めていたら胸に目が行ってな、揉みたくなったんだよ。矢吹か昇、李々華くらいしか親密な女子がいないから頼んでみようかと」


「バカじゃないの? 男だしその上バカ兄だしエッチなこと考えるのはまあ分かるとして、普通妹に頼む?」


「頼むぞ。揉ませてくれないか?」


「死んだら?」


 椅子から降りた李々華はベッドに座った。相変わらずお綺麗な脚ですこと。

 ベッドに座ったってことは何かな。お誘いかな? お兄ちゃんにならどうされたっていいよっていうアレかな? それなら遠慮なく。


「痛い、何故蹴る。そこはちょっと大事な場所だぞ」


「何で近づいて来んの。キモい来るなさっさと出てけ!」


「ええ……李々華が誘ったんだろ」


「誰が兄貴誘うか! 頭にウィルスでも発生してんじゃないの!? いいから出て行け!」


「は、はーい……因みにウィルスは大気中だけにあるんじゃないぞ」


「知ってるっての! バカ兄よりバカなわけないでしょ!」


 酷過ぎないだろうか。俺よりバカな人間が存在しないとでも言いたいのだろうか。

 もしかしたらだが、矢吹よりは成績上な可能性あるからな! そしたら正真正銘の『馬鹿ップル』だが。

 あと五日で中間考査だ。うわ面倒。


 俺が部屋を出る直前に、李々華は小さな声で「揉める程ないし……」と俯いていた。

 別に小ちゃくてもいいと思うぞ? 俺は大きさこそトップオブインポータントという思想を掲げているが、控えめなのもまたそそられる。

 まだ中学生だし、育つ可能性は充分にある。その場合いち早く俺に捧げてくれないだろうか。


「あ? 起きてたのか俊翔。珍しいな」


 眠たそうに携帯を耳に当てるのは兄廉翔だった。

 携帯片手でも、洗面台の鏡を前にし髪を整えている。

 流石イケメンか何かとかいって持て囃されてるモテ男だこと。そういうとこはしっかりしてんのな。

 俺が全然やってないだけかも知れないが。


「おう。因みに毎日六時には起きてる。部活あるからな」


「ああそっか。忘れてた」


「別にいいけど、今日から毎日彼女とデートなんだよ。俺もイケメンになっていいか?」


「いや、厚化粧しなきゃ無理じゃね? つってもまぁ、彼女の為に格好良くなりたいってのは認めるわ。彼女が可愛いとは限らないけどな」


「お前いい加減殴るぞ」


 李々華は早々に認めてくれたというのに、このクソ兄貴は微塵も信じてくれない。矢吹凄いからな。めちゃくちゃ美少女だからな。

 古い時代のヤンキーの様に睨みつけていたが、廉翔が通話に集中した為にやる気を削がれた。

 凄い謝ってるし、『愛してるよ』なんて上辺だけっぽい臭い台詞を放っているので、恐らく彼女だ。


「廉翔。おい、終わってんなら退けよ。俺だって今からイケメンになるんだよ」


「なれるかバカ。ん? ああごめんごめん。今のは弟との会話。ミアは全然バカじゃないよ、大丈夫。ん? また今度してあげるよ」


「んべー」


 口調が違い過ぎて気持ち悪い廉翔が去って行くのを舌を出して見送る。本当アイツ大嫌いだ。

 さてと、俺は矢吹とのデートの為、イケメンになりますか!

 鏡に向かって意気込んだところで一言。


「何やりゃいいんだ?」


 背後から『バカ兄』なんて呆れた声が聞こえたが、恥ずかしいので反論しないことにした。

 よく考えたら普段何もしないや。外見気にしてない。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 トートバッグを肩にかけ、普段の地味な服装が想像つかなくなる程お洒落をした矢吹に、屈しそうになった。

 ビューティフル。美しい。

 胸元が少し開いている赤のカーディガン。それとは反対に、絶対領域までもう少しくらい短いショートパンツで、生脚が美しい。

 ボーイッシュな点として、紫のキャップを被っている。かなり深めなのは、顔を見られるのが恥ずかしいからだろうか。


 ひらひらと手を振る矢吹の立つ、待ち合わせ場所である王都柊公園の風水前に駆けて行った。

 因みに柊の部分は、王都市柊町というわけでだ。

 王都、王都「市」だったんだな。今知った。


「何その髪型。面白いね」


「あ、マジっスか。ちょっと直して来る」


「うん。ここで待ってるね」


「トイレまでついて来てくれてもいいんだぞ?」


「ここで、待ってるね」


 釣れない矢吹に手を振り、公衆トイレに駆け込んだ。市を代表する公園というのもあってか、トイレは広い。

 この王都柊公園自体が往復三キロメートルくらいある広さだからなぁ。

 噴水とか、人口池などが多過ぎて遊べるもの少ないけども。敷地の広さ勿体ないよな。


「うわぁマジだ。これじゃ七三分け失敗したナルシストだよおい。直さないとな」


 自分でもよく分からない比喩を述べ、鏡の前で髪をグシャグシャグシャグシャ。はい、いつもの髪型に元通り。

 慣れないことはしてみるもんじゃないな。てか俺この髪型でここまで歩いて来たの? 恥ずかしい。


 矢吹の元へ戻る道中、自販機で麦茶を購入した。

 正直矢吹の趣味は鼠集め以外不明だが、大丈夫かな。麦茶嫌いとかはないよな?


 不安な気持ちを抱きつつ、噴水の見える位置まで歩いた時点で、違和感に気付いた。

 矢吹が立っていた筈の噴水前に、明らかにチャラそうな金髪集団が楽しそうに笑っている。

 何の話かな。入っても大丈夫だろうか。


「あ! 花菱君っ、ここだよ!」


「あれ、矢吹その人達知り合い?」


「な訳無いでしょっ」


 金髪集団の中からひょこりと手を伸ばして来たのは矢吹だった。

 一緒に居るから友達か何かなのかと勘違いしたじゃないか。驚かせるなよ。

 まあ何はともあれ、これで漸く矢吹とのラブラブデートを始められる。そう期待を込めて手を掴もうとこちらも手を伸ばしたが、矢吹の手は俺ではない別の手に握られた。


「はいゲット〜。何お前彼氏? 全っ然釣り合わないし恥かくだけだからお家に帰りな! 彼女は俺達と楽しむからさ」


「あれ? 何で? 俺と矢吹のラブラブデートの筈だったのに……」


「いいから帰れよ!」


「えぇー……」


「花菱君っ! ちょ、助けて……!」


 矢吹が助けを求める中、俺は金髪集団を分析していた。デートを初っ端から邪魔されて切れたのだ。

 だが、相手は五人でしかもがたいがいい。そもそも殴りかかるつもりは無いのだが。

 だとしたら、どうやって矢吹を救出しようか。


「ん? ハナシュンじゃん。何してんだ?」


「あら、コタケじゃん。何してんだ?」


「いや、俺が質問してんだわ」


 突如俺達の前に現れたのは私服姿のコタケだ。中々決まっていない。

 外見こそ地味なコタケだが、身長は百八十を超える為、傍に立たれると威圧感が凄い。

 いや、コタケは凄い優しい奴だけど。


 何してんだ? と問われたなら、より正確に答えるのが俺のポリシー。

 ここまでのあらすじを説明する。


「起床してから、ずっと矢吹の写真を眺めてたんだが──」


「待て、そこからじゃなくていいから」


「ねぇ待って花菱君。写真って何!?」


「とにかく矢吹奪われそうで俺ピンチ」


「大雑把過ぎるけどまあまあ分かったわ。この人らが彼女になってくれた矢吹さんをナンパしてる訳ね」


「『なってくれた』って何だよ」


 矢吹は俺のことが好きだったんだからな? かなり前から。

 絶対信じないだろうからそんなこと教えてやらんけど。どうだ、羨ましいか。

 俺はいつの間にかコタケを睨んでいた。


 コタケはいつも凝っているらしい首を鳴らし、自分より背の低い金髪集団を見下ろした。

 わざわざ不良の様に威嚇するような態度を彼らに向けるのは、友情あってのものだろうか。有り難い。


「悪いな、あんたら。こいつら多分初デートなんだよ、邪魔しないでやってくれ。な?」


「……ちっ。クソ地味カップルなんかどうだっていいんだよ! 行くぞ!」


「バイビ」


 見下ろす威嚇はやはり効くもんだな。

 因みにコタケは微笑んで優しく交渉してくれただけだぞ。優しい彼のことをよく知る人物達なら、全く圧迫感を感じない。

 とにかく、矢吹は無事とり返せてよかったわ。


「サンキューコタケ。熱々のデートしてくるよ」


 敬礼のポーズをコタケに向け、矢吹を抱き寄せた。凄い早さで逃げられたけど。

 その様子を目撃したコタケは失笑し、俺を真似て敬礼のポーズをとった。


「あんまり迫り過ぎるなよ? 見捨てられちまうからな。じゃあ矢吹さんも楽しんで来いよ。何かあったら俺にも頼ってくれて構わないから」


「ありがとう、コタケ君」


「いえいえ。まあ俺もハナシュンとは腐れ縁だから、末長く見守りたいってことで。じゃな!」


「おうよ!」


 いい幼馴染みをもったものだ。俺は誇らしいぞ。

 でもな矢吹。真っ先にコタケのこと頼るとかはやめてくれよ? 幾ら格好悪くても俺が彼氏だからね?


「花菱君行こ? 今日はいっぱい遊びたいから。花菱君と」


 ちょっとだけ照れ臭そうに手を差し出した矢吹に、胸を射抜かれた。もう俺このコの奴隷になっても構わないかも知れない。

 俺は優しくしたつもりで手を握り、肌の滑らかな感触や、温もりを堪能しつつ歩き出した。

 今日で親睦を目一杯深めて、高校で色々デビューしたい。


 普通、女性の方には大不評なのですが、今回のデートプランは一切俺は考えていません。全部矢吹です。

 矢吹も俺も恋人なんて出来たことなくて、どこ行けば正解なんだか、何をしたらデートなんだか困惑。

 結局、矢吹が趣味だという食べ歩きに決定したのだ。


 それ、遊べなくない? という俺の意見もあり、午前中は映画を見に行くことに。

 つまり、結局遊べない。

 いっぱい遊びたいんじゃなかったのか!? 矢吹!


「あ、カップルシートってのがあるみたいだね。花菱君。ど、どうする? 僕はこれでも構わないんだけど……」


「アレ? そこかなり後ろの席じゃないか? もっと前の席にしよう。前過ぎるとちょっと見難いから、そうだこの中心辺りとか!」


「……うん」


 矢吹もOKしてくれたので、俺は迷わず中心の席を選んだ。百二十一番だそうです。

 席を選び、番号札を手に入れると矢吹は先に奥へ進んで行ってしまった。

 そんなに観たかったのかな。焦らなくてももう大丈夫なのにな。


 俺も矢吹に続き、彼女の右に着席。何故か目を合わせてもらえない。

 これじゃ恋人と呼べないだろう。もっと、手を繋ぎながらとかがいい。

 しかもいつの間にポップコーン買ってんだよ。食べ歩きもあるんだからな?


 映画のジャンルは俺が観たくて(恋人ムードを楽しみたくて)恋愛物。

 ホラーは俺も苦手だから選択肢に入れなかった。

 放映中、矢吹は欠伸をしていて、俺は数分後────寝た。

まだまだ続きます!

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