1─1
1話目です。
呪いが邪魔する系ラブコメでございます。
主人公がアホでヒロインがクールでバカですが、楽しんでいただければなぁと思っております!
まだまだ未熟ですが、長い間よろしくお願いします。
1話はヒロインが登場するところまでです。
「付き合ってください!!」
「ご、ごめんなさい。私暑苦しい人嫌いです」
「そうですか!!」
暑苦しいと思われてるのか。とにかく今回は撃沈だな。まあ初めて会話したコだったしな。
これでこの王都高校一年生の女子には殆ど全員に振られたな。百十八人くらいだろうか。
俺はサッカー少年であり童貞プレイボーイな花菱俊翔、高校一年生だ。
男子の中ではムードメーカー的立ち位置を確保し、女子に紛れば「最低」「変態」のレッテルを堂々と貼られ堂々と見せつけている。
「いや、お前バカだろ。全員に告白って、そりゃ後になるほど振られる確率高いだろ」
「まあそうだろうな」
「そうだろうなって、お前なぁ。女なら誰でも良いのかよ?」
「いや、俺は全ての女子を愛している。好きなんだ。誰だけなんて選べない! だから片っ端から想いを伝えて回るのだ」
「誰でも良い様なもんじゃねーか」
ふん、友人であるコタケは何も理解していないみたいだな。いいか、女子は全て国宝の様なものだぞ? 分かってるのか。
女子が存在しなければ子孫は残らず、男子のおかずだって無くなり、男子同士がホモホモする羽目になるんだぞ。分かってるのか。
ぶっちゃけ可愛ければコタケは男でもイケるらしいのだが、なるべく女子を選べよ。子孫繁栄の為にな。
「大抵の男は可愛くなければ嫌だなどと戯言を発するが、そんなものは捨ててしまえ! 俺は全ての女子を可愛いと思っている。愛さえ有ればそれ以外は要らん!」
「コイツ、やっぱヤバい奴だな」
「だなぁ」
「ふっ。言ってろアホ共」
「「いやアホお前だから」」
自分達が欲望を満たす為に顔やスタイルの整った女性ばかりをチヤホヤするこの時代には飽き飽きしてきたな。流石に俺もスタイルは良い方が好きなのだが、顔は重要じゃないだろ。
顔が良いからと付き合ったところで、そこに愛は無いと言えるな。
コタケはノートにメモしてくれた名簿を読み、途中で停止した。次のターゲットが見つかったのかな。
「なあ、これで最後になるんだけどよ、やめとけハナシュン。これは手の届かない高嶺の花だ」
「そんな修羅道はもう通った」
「お前にとっては全てがそうかもな」
「うるさいぞ」
コタケの持つ名簿を覗き込むメガネチビのヤスダは南極大陸にでも取り残された様に凍りついた。ヤスダの様なエロ男子が女子に対しこうなるという事は、コイツにとっては可愛くないという訳だろうか。
傲慢な奴だな。だから彼女も出来ないんだ。
俺だってこの十五年間出来た覚えも無いけどな。
コタケはピンクのマーカーで名前に印を付けると、俺にその名簿を突き出してきた。俺は迷わずピンクのマーカーを探した。
「矢吹星歌。クールな上生粋のお嬢様だぜ。お前のことなんて一蹴してくるだろうよ」
「それはどうかな」
「何その自信」
「お嬢様だからこそ押しに弱いかも知れんだろう。それにクールなのはタイプだ。ゾクゾクする」
「「うわぁ」」
矢吹星歌のことは俺だって少しは知っているぞ。大手の金融会社矢吹グループの娘で、確か双子の姉が存在する筈だ。
矢吹星歌は世にも珍しく地毛が灰色という特徴を持ち、全体的に幼い容姿をしているが俺のクラスメイトだ。席は二つ前。
その幼い容姿とは裏腹に、性格は誰ともつるまない様な度がつく程クール。口調はキツい訳でも無い。
ただ、残念な事に成績はいつも下位で、勉強が苦手だというのが確認出来た。教えてあげようかな、俺も出来ないが。
身長は百五十六センチメートルで俺より十三センチメートル低く、体重は確か四十一キロで抱っこも容易い。視力は然程良くなく、稀に眼鏡を掛けている姿も目撃する。
仕事が少なめな風紀委員に進んで入り、お昼休みになると部室で一人静かに弁当を食している。タコさんウインナーが大好きな様で、頬張っている姿が愛らしかった。
胸のサイズは目測でB以上E未満で、髪の毛で口元を隠す照れ隠しの癖がある。
「「気持ち悪ぃ」」
「何だと」
「「すんげぇ気持ち悪ぃ」」
何だ、彼女に対する愛を盛大に見せつけていただけなのに気持ち悪いとは。酷いものだな。
そんなに彼女を愛しく思ってる俺だが、やはり彼女相手には多少の不安がある。
一つは彼女の委員会のことで、風紀委員だからって慎めと注意を受けないか。そして二つ目はクール過ぎて近づかせてもくれないんじゃないか、ということだ。
女子生徒とすら会話しているのを数回しか目撃したことが無く、男子とはそれ以上に話さないのだ。かなり難度が高いだろう。
「流石に、振られ過ぎると辛過ぎる。堪えるものだな」
「まあ、そりゃそうだろうなぁ」
「あと五分休憩しなくては」
「早いなおい」
現在は二時間目と三時間目の十分間休憩の時間で、そろそろ授業が開始される頃だ。
だが情報収集とアプローチをしていきたいのに矢吹は何処にも居ない。つまり、部室に居るのだろう。
「はーい、授業始めるぞ」
担任のヤマナカが入室したが、俺は今彼女のことで頭が一杯なんだ。勉強や授業内容が入る余地は無い。
俺は右手を天井に限界まで伸ばし、廊下まで響くよう盛大に叫んだ。
「はい!! 具合が悪いので保健室行っていいでしょうか!!」
「ふざけんな、あんた元気だろ」
「いえ! 今すぐ矢吹星歌に会わなければ息子が元気になりません!!」
「大人しく授業受けていろ」
「行ってきます!!」
「次は矢吹さんかぁ」「アイツ本当最低だなぁ」などと女子の侮蔑が聞こえてくるが、俺は一途なので今は矢吹を最優先にする。
元気良く扉まで行進して行ったが、ヤマナカ先生に首根っこを掴まれ席まで引き戻された。強引だなぁ。
矢吹も俺に会えなくて寂しいのではないだろうか。あ、もしかしたら今は屋上に居るかも知れないな。
彼女、矢吹星歌は眠いと屋上にエスケープし小一時間程眠りに就くのだ。起こさぬ様小声で確認し写真を撮らせてもらった。可愛い寝顔だぞ。
「仕方ない、矢吹のこれからの行動を今までの行動から計算してみるか」
今日は寒いなぁ、もう五月後半だと言うのに。ああそうか、視線は熱くても凍る様な空気だしな。
俺は掌サイズのノートを持ち出し、授業そっち退けで八通りの行動パターンを算出した。
まずはパターン1から確認してみようか。彼女は昼食の時間になると大抵空中廊下か屋上の廊下を利用してもう使用されていない校舎の屋上で眠りに就く。飯の時間は俺も食べるのでスルー。
いち早く廃校舎に身を移し、息を潜めた俺は矢吹が現れるのを根気強く待った。
現れなかった場合は、パターン2の部室で睡眠またはパターン3の校内風紀の見回りだと思われる。
「あ、来た! だが、アレは矢吹じゃないな」
何故かやって来たのは茶髪のロン毛が黒いチェックのリボンで結ばれている女子、梅原昇だった。発育のいい双峰が愉快に踊っている。
確か彼女には六番目に告白したが、呆気なく拒否されてしまったんだったな。気持ち悪いと怒られた。
「あ。あんた何でこっちの校舎に居るのよ?」
「いや、矢吹星歌を待っているんだ。来ないけど」
「そりゃそうよ。あのコ帰ったもん、体調不良で」
「仮病か……!!」
「それはあんただけ」
まさか第四のパターンが出て来るとはな。計算が全て外れてしまった。これでは帰るまで会えないな。
昇は意識の高い女子だ。同じサッカー部の人間だとしても不正行為を許してくれるとは思えない。
だが、俺が目的を果たすには矢吹の事を追いかけなければならないんだ! 今日で結果が知りたいからな。
怒られるのは覚悟の上で、俺は昇の両手を握り締めた。
「えっ」
「昇、俺は早退する。ヤマナカには何かしら言い訳をしておいて欲しい。ごめん」
「は……」
「な?」
「わ、分かったけど」
思ってたのとは全然別だったが、とにかくこれで障害は一つだけとなった。それは荷物のことだ。
帰るとのなれば絶対に荷物も持ち帰らなければならない為、取りに行きたい。それをクラスメイト達に絶対注目を浴びてしまう。
さてと、向かうとするか。
「何してんのお前」
教室ににスライディングしたらコタケにバレた。というか全員にバレた。これは失敗だな。
まだ午後の授業は始まっていないから、先生は居ないな。さっさと荷物持ってそれとなく出て行くのが手っ取り早いよな。
俺はバッグを自然な動作で持ち上げ、コタケに自然な笑顔を見せつけ、自然なスキップで退室した。そして鞭を打たれた馬の様に急速ダッシュ。
先生にバレてシバかれる訳にもいかないので、数秒で減速した。
無事正門も抜け、家に到着──して漸く自分の目的を思い出した。俺矢吹の家知らないな。
「失敗ばかりだなぁ、どうするべきか。矢吹の家を探し出す事は俺にとって容易いことなんだが、金持ちの家に行く気にはならないな」
矢吹星歌の家は恐らくデカい事だろう。金持ちの家というのは大抵そう決まっているのだ。俺の知る限り。
豪邸に住んでいる事が多いだろうが、一部屋が一軒家くらいある家だって見た事がある。テレビで。
矢吹の家は目立つが入り辛い、そう予想している。
「矢吹と仲良い、奴は知らないしな。仕方ないな、家まで行ってみるか」
最も簡単に建物を探せると考えられるのは、スマホなどでマップ機能というのが有る。それだ。
だが、想定外なことに矢吹の家らしき大きな建物はこの町にも周りの町にも存在しなかった。どういうことだ? もしかしてそれ程巨大な建物には住んでいないのか?
先程まではアパート二つ分以上のサイズの建物を探してスクロールしていたが、今度は一つ分くらいで考える。いや、有り過ぎて難度高い。
「聞き込み、といくか」
何食わぬ顔で職員室までやって来てノックをする。先程授業をサボる為に帰った男が恐ろしげも無く戻って来たんだ。先生も驚くことだろう。
運良くヤマナカは授業中だった為、職員室には居なかった。その隙に他の先生から矢吹の住所を聞き出し、俺は再度帰宅した。
ふと、住所の記されたマップの位置と、自分の記憶を照らし合わせてみた。
「この場所、オンボロアパートが二つ並んでいるだけじゃなかっただろうか。畑の目の前だし」
おかしいな。金持ちがこんないかにも田舎のような土地に住むのだろうか。見下したりしてるんじゃないのか?
何故、しかもアパートに住んでいるんだ。俺もアパートなんだが、しっかりと整備されている綺麗な建物だ。矢吹の住所であるアパートは台風を受けて欠壊する程脆い筈だぞ。
どうしても俺の知り得る金持ちの情報と一致しない為、疑問が止めどなく溢れて来る。
ふと、とある仮説が脳内を埋め尽くして行った。
あり得ないとは思っていたのだが、これまでのとアパートの事を考えるとな。
「もしかして金持ちというのは嘘か……? 確かに本人自体が金持ちだなんて言ってたシーンは入って来ないな」
リアルな世界では本当にそんな人間居るのか疑問だが、創作の世界なら居るよな。実は見栄を張って金持ちの振りをしていたって設定のキャラ。
見栄を張るタイプには見えないが、矢吹もそうなのかも知れないな。だとしたら勝手な想像が申し訳なく思えてきた。
一応、確認の為にも告白の為にもと考え、記された矢吹の住所へと向かった。駅一つと徒歩で十数分とかなり近い方だった。
「やっぱり、オンボロアパートだよなぁ」
一階の三号室のプレートに『矢吹』と書かれている辺り、嘘じゃない事が理解出来る。それにしても男子共が態度豹変しそうだな。事実を知ったら。
矢吹星歌は生粋のお嬢様なんかではなく、古びたアパートの一階三号室に住む普通の女子高生だった。
普通はないか。一応社長の娘なんだもんな。滅多に居ない──いや、社長の数だけはいるな。余裕でいるわ。
家でスーツ姿になった為、印象はバッチリの筈だ。俺はネクタイをきっちりと締め、鏡で鼻毛を確認し腕回しからのチャイムを……と思ったら押す直前にドアが開き始めた。
「来るって、分かってたよ」
出て来たのは噂の矢吹星歌嬢。灰色の柔らかそうな生地で作られたパジャマ姿で、雪の様に色白なすらりと伸びた脚が俺の心を擽る。
クールな口調とは裏腹に、少しだけ微笑んでいるのがもう俺の心臓を一突き。今すぐ抱きたい。
ふわりとカールしている髪の先はプライベート感を醸し出し、ドアを全開にしてくれていることから「もしかして受け入れてくれてる?」と思考回路が道路に飛び出し暴走中。パラリラパラリラ。
今すぐ、昼間からの夜戦に突入したい気持ち爆発寸前だが、ひとまず整理しておきたい事柄が一つある。
──何て言った? 『分かってた』?
「どうぞ、入って。立ち話も何だし、これで今日は僕生きられるから」
「え、あ、うん」
僕っ娘可愛い〜なんてので頭の中真っピンクに染まりそうになったが何とか耐え、夜戦したいと駄々を捏ねる息子も黙らせ、突っ込み体勢に入る。
今疑問が三つ、いや、四つ程頭を駆け巡っているんだ。答えてもらうしかない。
俺は服で下腹部を隠す様に座り、呼吸しながら彼女の部屋の空気を堪能した。
ストーリーが進んで行けば勿論色々公になってくるのですが、あらすじで何か多少は分かっちゃいそうですね。
これからよろしくです!
気に入ってくれた方はブクマしてくれると嬉しいです!あと広めてくれたらなんて贅沢も少し思ってます(笑)
評価もしてくれるととても有難いです。
感想もお待ちしております!まだ1話ですが!