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怪奇日誌  作者: 赤犬 悠
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#2 願いを叶える方法


 何でも一つ願いが叶うとしたら、あなたは何を願う? 自分の思い通りの世界に変えて欲しい……なんていう大雑把な願いは不可能だ。



 その方法が分かったら、あなたは実行する? もちろん考える時間は十分にある。ゆっくり時間を掛けて、これしかないという願いを決めてから実行すればいい。



 もしかして、失敗したら大変なことに? 失敗を挙げるとするならば、時間をさかのぼろうとすることだ。未来を変えるのなら何の不具合も発生しない。しかし、過去を変えようものなら……考えたくもない。



 ただ、それだけだったはずなのに。






 1.


 遠距離恋愛といれば、どれくらいの距離の恋愛をいうのだろうか。たかが20km。それだけの距離だとしても、移動手段の無い少年にとっては遠距離と言えるだろう。



 そんな少年が今朝、付けっぱなしのテレビに目をやると、緊急ニュース速報が流れていた。そのニュースはつい数分前に起こった事故。信号待ちをしていた親子が乗った車の後ろに一台の車が衝突した。左後方から衝突されたその車は大破。そこに乗っていた少女が意識不明の重体で緊急搬送された。



 少年はすぐに少女へ電話を掛けた。それしか少年に出来ることが思いつかなかったからだ。もしかしたら車を運転していた少女の母親が出てくれるかもしれない。そうじゃなくても、救急隊の人が電話に出てくれて家族に知らせてくれるかもしれない。呼び鈴が数十回鳴った時、少女の携帯にその母親が出た。



 母親は泣いていた。少年のことは少女から聞いていたので、すぐに今の状況を説明することが出来た。少女は緊急手術をし、ICUで治療を受けることになる。母親を含め家族、少年もまた、ただ信じて待つしかない。何かあればすぐに電話をしてくれることになった。



 迷信でもなんでもいい。少女のために何かをしたいと思い、思い出したのが願いを一つ叶えてくれるという方法だった。






 2.


 少年は一つの街灯を見つめていた。この街灯がスタートでありゴール。そこから少年は歩き出した。



 (走るな……急ぐな……焦るな)



そう少年は自分に言い聞かせた。決して喋ってはいけない、決して走ってはいけない、それがルールだからだ。



 (そこの曲がり角を右に曲がる。まだ大丈夫、まだ大丈夫)



左に曲がってはいけない。左回りは反時計回り。時をさかのぼる方向に行ってはいけない、それがルールだからだ。



 少年はもう少しで二つ目の曲がり角に差し掛かる。



 ここまでどれくらいの時間が経っただろうか。抑えられる焦りと、どうにもならない不安と恐怖。少女が死んでしまうなんて考えたくない。



 (よし、あと二つ角を曲がればゴールだ。頑張ってくれ……僕は諦めない)



 三つ目の曲がり角が見えてきた。ゴールに近づくにつれ、焦りが抑えられなくなってくる。平常心を保てない。どんなこともマイナスにとらえてしまう。こんなことで本当に願いを叶えることが出来るのだろうか。



 (またあの笑った顔がみたい。事故によって傷ついた体を治して欲しい。そしてまた合って遊びたい)



 少年の気持ちはゴールに向かって急いでいた。障害物なんてものは存在しない。他人から話しかけられることだって無い。だって人気のない、この静かな場所を選んだのだから。――そのはずだったのに。



 (えっ……なんで……どうして)



 少年のポケットに入れていた携帯が鳴り出した。着信は……少女の携帯からだった。



 (やだ……辞めて……嘘……信じない)



 少年はその着信からは恐怖しか感じられなかった。喋らなくてもいい、声だけ聞けば何の問題もないはずなのに、今の少年の頭ではそう考えることは出来なかった。少女に何かあったのだ。だから少年の携帯に電話を掛けてきた。



 (急げ……急げ……)



 三つ目の角を曲がり、四つ目の角が見えた時、二度目の着信が鳴った。少女の携帯からだった。少年は勇気を出して電話をでる。喋らなければ何の問題もない。無言だった理由はあとで話し、謝ればいい。少年は携帯を耳にあてた。



 携帯から聞こえたのは少女の母親の……鳴き声だった。言葉をうまく発することの出来ない、ただただ泣いている少女の母親の鳴き声だった。



 (やだ……やだ……もう嫌だ……もう)



少年はすぐに電話を切った。



 目の前にはスタートでありゴールの街灯がある。点滅する街灯、これが成功のサインだった。もう少し速ければ少女を救うことが出来たかもしれない。でも、もう……。少年の願いはただ一つ。少女ともっと一緒にいたかった。



 (僕も……死にたい)






 3.


 少年の自宅に一本の電話が入った。それは少年の携帯が道に落ちていたという交番からの連絡だった。それと同時に少女の母親からの伝言を受ける。内容は少女の意識が戻り、危険な状態は乗り越えたとの連絡だった。



 少女の母親は少年がどんな子なのか少女からたくさん聞かされていた。だからこそ少年に早く伝えたかった。だけど嬉しさのあまり、泣くことしか出来なかった。



 それから少年は行方不明者となった。もちろん見つかることはない。



 だって少年がそう、望んだのだから。


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