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詞の葉―ことのは―

作者: 根室

女は夢を見た。

いつもより2倍の睡眠薬で。

それは誠にみょうちきりんな夢だった。

女は泣きながら眠っていた。

つい昨日さくじつ恋人にフラれたばかりなのだ。

優しくて頭が悪く気の弱い男だった。

取り柄と言えば見た目くらいの。

その彼が浮気、所謂いわゆる二股をしていたのだ。

自分と付き合いながら浮気相手ともズルズル続いてたみたいだ。

何故バレたかと言うと答えは簡単。

それは少しの好奇心とドキドキ。

彼がバイトが終わるまで待って、つい先日のケンカの事を謝ろうと思っていたからだ。

1時間が過ぎて裏口から彼らしき人が現れた。

彼は直前に出てきた女性を追いかけていた。


何これ?

意味が分からない。

女性は涙ぐみ、彼は酷く辛そうな顔をしていた。

会話までは聴こえないけど何か争っているようだ。

ゆうきを出してユックリと彼に近づいた女は彼に訊ねた。

「何してるの?」「この人誰?」となかば震える声で。

女の頭の中では半ば(なかば)どしようもないと誰かが呟いていた。


一拍置いて気まずに彼がポツリとつぶやいた。

「・俺の・・彼女」と。

瞬間、女の頭は考える事を許否した。

聴きたくない聴きたくない聴きたくないと。

女性の肩を優しく抱きしめる彼も、彼の腕の中で泣きじゃくり続ける女性も。

何も見えないし聴きたくなかった。

「・あんたなんか・・もう・いらない」

そう言うのが精一杯の虚勢だった。

涙で視界がかすむ中、女は踵を返し走り出した。

橋のたもと迄来た時、女は荒い息を吐きしゃがみこんだ。

真夜中誰も居らず、時折車のライトが女の後ろ姿を舐めるようにして過ぎ去ってゆく。

女は泣いた、泣きに泣きまくり彼に対する罵詈雑言を叫び続けた。


幾何いくばくかして落ちついた女は、重たい足を引き摺り帰路についた。

化粧も落とさず、パジャマにだけ着替えて女は眠った。


ピーンポーン・・・ピーン・・・ポーン。


夢の中でチャイムが鳴った。

女は無理矢理、現実の世界に呼び戻されてしまった。

さっき迄某バンドのSの夢を見ていたとゆうのに。

女は重たい身体をベットからひっぺがし、ブチブチと口の中で文句を言いながら玄関を開けた。


そこには某同バンドのNがいた。

驚きで声の出ない女にNはチケットを手渡した。

それは天国までのチケットだ。

女はチケットをマジマジと見つめ、数秒後顔を上げると男は何処にも居なかった。

足音一つ、気配ひとつ残さずに。

女は夢見心地でベットに戻り惰眠だみんを味わおうとした、でないと何をしていても彼の事が頭を過って離れようとしないからだ。

そしてスンナリまた闇の中に落ちていった。

暫くしてまた玄関チャイムがなった。

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンと。

今度は、やにしつこい。

仕方なく女は玄関に迎うため身体を起こした。

その時不意に左手にカサリとした感触を覚えた。


そこには、やっぱり天国行きの片道切符が握られていたのだ。

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