平和な世界
「ほら盗賊! 早く起きてよ! ご飯冷めちゃうでしょ!」
ぐぬぅ……もう少し寝かせろ……
「みんな起きてるんだよ? ほら早く早く!」
そう大声出すんじゃあない……頭に響くだろう……
「もう……仕方ない人だなぁ……よっこいせっと」
んぁ?
「おい、勇者……なんで俺様は空中を飛んでるんだ?」
「僕が持ち上げてるからに決まってるでしょ。どこまで寝ぼけてるのさ」
「おい、勇者……俺様をどこに連れていく気だ?」
「外。家の中だと掃除が大変でしょ」
うんむ、掃除が大変なのは大変だ。
「おい、勇者……俺様の目の前になんで水があるんだ?」
「それはねぇ……こうするためだよ!」
どわぁ!
「おいこら、勇者! てめぇ、人を池の中に落とすんじゃあねぇ!」
「目は覚めた?」
「……覚めたよ」
「だったらよし。ほら、早くご飯食べよ?」
ちくしょう……
「みんな、お待たせ!」
「盗賊……あなたまた酒を飲み過ぎましたね?」
「……すまない……俺からきっちり言い聞かせておく」
「勇者様、盗賊の分を出しておきましたよ」
「ありがとう、魔法使い!」
「いえいえ、どういたしまして」
……なんだ、これ。
「ほら盗賊も早く席に着いてください」
「あとはお前だけだぞ」
「わかった、わかったよ。席につきゃいいんだろ」
「やっぱりみんな揃ってる時は一緒にご飯食べるのがいいね!」
「ええ、その通りです勇者」
「ところで盗賊。働き口は見つかったのか?」
……痛いところをつきやがって……
「盗賊……まだ盗みなんてしてるの?」
「ば、ばーか! んなわけねぇだろう! 俺様はこの間からきっちり働いてんよ!」
「そうですよ、勇者様。私この間盗賊が働いているところを見ましてね。後で一緒に行きませんか?」
「いいよ! 一緒に行こうね、魔法使い!」
「我々も見に行くとしましょうか」
「そうだな」
な、なんでコイツら俺様の仕事場に来たがるんだ……
わかった……わかったぞ!
これは夢だ!
そうでなければ来るはずがない!
「という夢を見たんだが」
「いやいやいやいや、なんで俺様視点でお前が夢見てるんだよ。色々おかしいだろうが」
「ふむ……皆で一緒に暮らすのも悪くないものですね」
「おーい、騎士様やーい。平和ボケしてんじゃねぇぞ」
「盗賊……はたらかないの?」
「……働くに決まってるだろ? 俺様は天下の大盗賊様だからな」
「ふふ、では一緒に暮らす家を見つけに行きましょうか」
「いやいや、俺様の話聞いてたか?」
「みんなとずっといっしょにいられたらいいね!」
「ええ、そうですね」
「あぁ、そうだな」
「ふふ、それがいいですね」
「……なんだよ、そんな目で俺様を見るんじゃあない……わかった、わかった! 俺様も一緒に暮らせばいいんだろう! だから泣きそうになるんじゃあねぇよ!」
「やったー! じゃあ、いえをさがそうよ!」
「はぁ……どうしてこうなったのやら……」
「ふっ……魔王を倒して平和になったのだ。これくらいは目を瞑っておけ」
「元はと言えばお前が変な夢を見たのが原因だろうが」
「おーい、戦士! 盗賊! はやくこないとおいていっちゃうよ!」
「前見て歩け! 危ねぇだろうが!」
「……まるで保護者だな」
「保護者ですね」
「余計なこと言ってねぇでさっさと行くぞ!」
ここまでお読みくださいましてありがとうございます。
時系列的には魔王を倒した後になりますね。
全員生存ルートは本来有り得ませんが……こういうのも悪くないかなと……
そういえばブクマがついていました。
この場を借りて御礼申し上げたいと思います。
誠にありがとうございます。
これからも精進していく次第でございますので、何卒よろしくお願いします。
それでは。