イカサマ
「またまけたー」
「かかか。この俺様に勝つなんぞ100年は早いわ」
「むむぅ……」
そう頬を膨らますんじゃねぇよ、全く……
巨大オークとサシで戦える勇気はあっても、賭けの運は全くねぇみたいだな。
「次勝ったらいいもんくれてやろう」
「ほんと!?」
「あぁ、本当だとも。俺様を誰だと思ってる? 天下の大盗賊様だぞ? 嘘をつくはずなんてあるわけがないだろう?」
「うーん……」
おい、なぜ悩む必要がある。
「ディーラー、さっさと配れ」
「はっ」
俺様と勇者の前にカードが配り終わった時が勝負だ。
「おっ、勇者見てみろよ。魔法使いの嬢ちゃんが何かしようとしてるぜ」
「魔法使いが?」
適当に言っただけなんだが……まさか本当に何かしてるとは思わなんだ……
ってかなんだあの魔法。水の中で火の玉が燃えてやがる……クソっ、俺様もアレを見ていたいが、そうはいかねぇ……
「おい、ディーラー」
「……よろしいのですか?」
「俺様がいいと言っているんだ。いいに決まってるだろ」
「では」
勇者が魔法使いの嬢ちゃんの方に気を取られている間に、それぞれのカードをオープン。
うわ……また揃いなしか。とんでもなくついてねぇな。だが……これを替えて……よし。
「おい、勇者。さっさと勝負をつけようぜ」
「こんどはぼくがかつからいいもんだ!」
「ほー? でかい口たたいて後で泣くなよ?」
タイミングを合わせて同時にカードを表にする。
「やたー! へへーんだ! 盗賊の負け!」
「あーあー、負けちまった。んじゃ、いいもんをあげようじゃねぇか」
「どんなの!?」
「コイツだ!」
そう言って俺様はフルーツの山盛りを勇者の前に置く。
「おおおお!」
「どうだ、いいもんだろう?」
「ありがとう盗賊!」
フルーツに夢中になっている勇者はほっといていいな。どうせ俺様の部下達が見てるし。
「よろしいのですか?」
「あん?」
「イカサマ……とはらしくないですね」
俺様が賭博場の外に出ると魔法使いの嬢ちゃんに声をかけられた。
「はっ、イカサマなんかじゃねぇ。勇者の運が良かっただけ、ただそれだけだ」
「……そういうことにしておきましょう」
なんだよ……ニコニコしやがって……
「あー……そのアレだ。さっきのアレを見せてくれよ」
「アレとは?」
「ほら……水の中で火の玉が消えてなかったやつ」
「あぁ……いいですよ。勇者様を喜ばせていただいたお礼です」
ほう……見事なもんだ……
「綺麗だな」
「ふふ、そうですね」
「あー! さっきのまほうだー!」
……もう食い終わったのかよ。
「よいしょっと」
「どうされましたか、勇者様」
「盗賊と魔法使いにもこれあげる!」
「あげるってお前……俺様がやったもんじゃねぇか」
「みんなでたべるとおいしいよ?」
「ふふ、そういうことですよ」
……やっぱり子どもは嫌いだ。すぐ調子を狂わされる。
「仕方のねぇ奴らだ。この俺様が一緒に食べてやるんだ、感謝しろ」
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございます。
お久しぶりです。
本当は5月末に新作を投稿する予定だったのですが……えぇ、途中まで投稿して心折れました。
現在新作を書いていまして、ストックが溜まり次第徐々に投稿していこうかどうか悩んでおります。
いつになるかはわかりませんが。
さて、IFルートです。
このお話は盗賊と勇者が魔法使いと出会った街での出来事です。
もしかしたらこんなことをしていたかもしれないという妄sゲフンゲフン想像して書いてみました。
各話は短く構成する予定ですので、サックリ読めるかと。
それでは。