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帝国の進撃  作者: 芥流水
激戦編
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第四七話 東太平洋大海戦一一 雀蜂

お久しぶりです。

空母『ホーネット』艦橋からは、低空から迫り来る艦攻の姿がよく見えた。エリコン二〇ミリ機銃から放たれる銃弾も必死にこれを阻止しようとしているが、それらは空しく艦攻の上にある空気を切り裂くだけであった。

「取り舵いっぱい!」

回避を試みるも、艦首が振られるより前に、艦攻は魚雷を投下した。

頼む、かわしてくれ。『ホーネット』艦長はゴッドに祈った。できる行為と言えば、それだけであった。

その願いがゴッドに通じたのか、『ホーネット』は魚雷が到達するよりも一瞬早く、回頭しはじめた。

「艦首、魚雷通過します」

「いけるか」

見張り員からのうれしい報告に、思わずそうつぶやいたときであった。『ホーネット』を鋭い衝撃が襲った。


攻撃隊の猛攻が収まったとき、『ホーネット』には、爆弾五発、魚雷四本が命中していた。しかも、そのうち三本が右舷に集中しており、さらに一本が艦首水面下を破壊しているという事態であった。

このため、『ホーネット』は急速に船側を衰えたばかりか、右舷側に大きく傾き始めていた。この艦は左舷に注水を行って、傾きを直そうとしていたが、それも空しく、なおも右舷側に一七度の傾きが生じていた。

「このままでは、転覆してしまいます。缶室への注水を許可願います」

副長の具申に、艦長は数瞬迷いを見せた。

確かに缶室に注水すれば、艦は救われるであろう。しかし、それを行えば、たとえこの海戦を生き残ったとしても、少なくとも一年は修理ドックを出られないだろう。いや、それどころかこの海戦を生き残れるかどうかさえ怪しい。というのも、注水を行えば、その缶室は使えなくなる。そうなれば当然船速は鈍る。一〇ノットを出せるかどうかさえ怪しくなるだろう。そうなれば、逃げられるかどうかさえ怪しくなる。

しかし、彼は決断を下した。

「注水を許可する」

ここは合衆国西海岸から、そう離れているわけではない。この場で沈みさえしなければ、『ホーネット』は生き残れる。そのためにはあらゆる手段を尽くさねばならない。それに、どうせ艦首は破壊されており、速力も大して出せない。

たとえ廃艦同然になろうと、浮かんでさえいれば良いのだ。あるいは、本艦が沈んだとしても、『エンタープライズ』さえいれば――反撃のチャンスはある。

艦長の英断は果たして、吉と出た。『ホーネット』はその傾斜を完全に元に戻したのであった。しかし、その代償として、速力は一〇ノット以下にまで落ちてしまった。


「『ホーネット』より入電。『我損害回復に成功せり。速力一〇ノット』以上です」

「そうか……『ホーネット』はよくやってくれた。しかし、『ホーネット』を切り離せば、敵に各個撃破の格好の機会を与えることになる……艦隊速力一〇ノット。針路一六〇度。それと、今のうちに直掩隊の弾薬と燃料の補給を済ませておくように」

キンケイド中将は即座に、そう命令を下した。

「さて……あちらが上手く動けば良いが…………」


サンディエゴ基地に有る飛行場では、航空機が何機もひしめいていた。

その中でも、エンジンを回し、今にも発進せんとする機体があった。

P38及びB26である。その数は四三機と、五一機。上空に大きく待避していたそれらの機体は、今、応急修理の終了した飛行場を駆け抜け、遙か西の海にいる機動部隊に一矢報いんと、青空に黒々とした機影を浮かべていった。


「敵機発見、方位約九〇度!」

「何!敵機だと?馬鹿な」

見張り員の言葉に山口中将は思わずそう叫んだ。しかし、一呼吸の内に落ち着きをとりつきを取り戻し、見張り員に尋ね返した。

「直掩機の様子はどうか?」

「向かっていきます。間もなく交戦に入ると思われます」

この時、電探を積んでいた『赤城』『翔鶴』『金剛』の内、『赤城』は沈没し、『翔鶴』は被弾の影響か、電探装置に不具合を生じ、『金剛』のそれは最初から不調であった。つまり、三艦隊の電探は盲の状態となっていたのだが、これを完全に知っていたのは、艦橋にいる人間だけであり、直掩隊の人間には知られていなかった。彼らは今回もそれまでと同様に、電探による敵機の早期発見、それによる余裕を持った迎撃を行えると考えていた。そのため、少しだけであるが、初動が遅れた。それは、確かにほんの少しであったが、無視できない遅れであった。


「目にもの見せてやるぞ、ジャップ!」

P38乗員のトーマス・トレイン中尉はそう叫びながら、零戦の群れに突っ込む。

零戦の姿を照準に納めるや、機銃を撃ち込む。しかし、紙一重の部分で避けられた。本能的に追いかけようとしたトレイン中尉であるが、頭を振り、速度を味方にして、下に逃れる。

米軍はそれまでの戦訓から、零戦が格闘戦に異様に強いこと、しかし速度は世界標準レベルであること、また降下速度にどうやら制限がつけられているようであることを見抜いていた。そのため、搭乗員達に一撃離脱攻撃を徹底し、格闘戦には決して乗らないようにすることを厳命していた。

それもあり、両者ともに命中弾の中々出ない、サンディエゴ上空で行われたものに良く似た空戦が繰り広げられていた。これは、零戦にとって重爆に手を出すことの出来ない状況が続いていることを意味していた。

零戦は格闘戦に持ち込もうとするのであるが、P38はそれを許さない。それどころか、横合いから別のP38が攻撃を加えてくる始末である。普段よりペロハチと軽侮していた相手に、思わぬ苦戦を強いられていることに、零戦乗りたちは驚きを覚えていた。

そう、零戦はP38に封じ込められていたのである。P38は護衛隊としては、十分な働きを見せていた。

彼らの頑張りもあり、B26は六機が撃墜されたものの、その大部分が生存に成功し、空母に一直線に向かっていった。

「対空戦用意…………撃てっ」

各空母や、それらの護衛艦からは機銃がしゃかりきに撃ち放たれるが、B26はそれに臆することなく、すいすいと空を走る。

「……」

南雲中将は、ほとんど祈るような心地で、重爆が次々に撃墜される光景を期待するが、しかし、B26は煙こそ吐くものの、火を噴くことはなく、僅か二機が落後したのみで、四〇機以上が投雷に成功していた。

パソコンのデータが消えたことにより、書く気力が消失していた本小説ですが、また書き始めることにしました。でも、この戦闘が終わった後のことかんがえてないんだよなあ……

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