表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝国の進撃  作者: 芥流水
激戦編
39/49

第三九話 東太平洋大海戦三 電探

「索敵機を強化しますか?」

 そう言ったのは、草鹿少将であった。しかし、源田中佐がそれに反論する。

「現在水上機は全て出払っています。索敵には艦攻を使うことになりますが、それではこちらの攻撃力が低下する恐れがあります。いざというときに敵空母を仕留められなければ、困ります」

「それよりも、敵を見つけられていない現状の方が、問題だ。攻撃を加えることが出来ずに、一方的に空襲を受けることになる。いや、何も全方位に索敵しようとしている分けではない。先程敵機が現れた方向を中心として、索敵機を四機出す。それなら、一次攻撃に出さなかった雷装の艦攻で補って十分にお釣りが来る」

 草鹿少将のその言葉を聞いた源田中佐は、にわかに得心が行き、迷うことなく賛成したのであった。いや、迷っている暇は無かった。


「索敵機が敵空母を発見しました」

「よし、攻撃隊を即座に発艦させよ」

 この時米海軍は空母『サラトガ』『ヨークタウン』を基幹とするTF16-1及び、空母『エンタープライズ』『ホーネット』を基幹とするTF16-2をこの海域に投入していた。TF16-1及びTF16全体の指揮はフランク・フレッチャー中将が、TF16-2の指揮はトーマス・キンケイド中将が執っていた。

 というのも、元々TF16の指揮官であるハルゼー中将は皮膚病のために海軍病院に入院していたのである。その為、彼の抜けた穴を埋める形で、キンケイド中将が引き抜かれ、TF16の指揮権はフレッチャー中将に渡されることとなった。

 ハルゼー中将としても、この一大海戦に参加できないのは無念の極みであったが、病身の自分では十分な指揮が出来ない事を考え、それをぐっとこらえて院中の身となったのである。

 そのような経緯を経たTF16であったが、ハルゼー中将が入院して二月経つ現在、以外と上手く回っていた。フレッチャー中将の努力の成果であった。

 さて、話を戻そう。

 TF16が放つ第一波攻撃隊は以下の陣容で構成された。

 F4Fワイルドキャット三六機

 SBDドーントレス六〇機

 TBFアヴェンジャー二七機

 計一二三機である。

 更にその三〇分後、第二次攻撃隊が発艦した。

 F4Fワイルドキャット三〇機

 SBDドーントレス四八機

 TBFアヴェンジャー六五機

 計一四三機

 第一波攻撃隊は強襲となるであろうが、機動部隊の内の半分にでも発艦を封じるほどの損害を与えることができれば、勝利したも同然である。そうすれば、第二波攻撃隊でとどめをゆっくりと刺す。

 フレッチャー中将はそう計算をして、北の空へと飛び立ってゆく攻撃隊をじっと見つめていたのであった。

「合衆国の未来を頼むぞ……」


「電探に感あり!方位一七〇、距離四〇〇!」

 伝声管を通じてこの報告を受け取った南雲中将は妙な顔をした。彼にはこの電探―電波探信儀―という装置がどの程度信用のおける物か判断が付きかねたのであった。

 何でも、これから襲おうとしている―いや、もう襲っている時刻か―サンディエゴ基地から通常電で不具合の報告が伝えられた兵器とのことで、帝国海軍は出撃前に急いで『金剛』『赤城』『翔鶴』の三隻にこの兵器を取り付けたのであった。合衆国がそれ程重視しているなら、余程の物だろうと。この三隻のみに備え付けられているのは、未だ研究段階であり、量産がきかないからである。

 電探と同時に乗り込んだ技術員から説明を受け、電波を放ち、それの反射を捉えることにより、敵機の早期発見を可能とする物だとは知っていたが、まだ研究段階とのことで、武人の蛮用に耐えれる物かどうか分からない。いや、それ以前に出力が安定しておらず、何もなくても故障することまであるという。その男は成程誠実な人間なのであろうが、そのおかげでどうもこの新兵器に、よりいっそうの不信感が出たのは間違いが無かった。というよりも、意識から外していた。この報告がなかったら、この海戦中思い出すことはなかっただろう。

「先程の偵察機の時には感じていなかったが?」

「数が違います。目標が大きければ、大きいほど遠くから正確な位置が感知可能となります。この調子ですと、敵機は相当数いるものと思われます」

「ふむ」

 技術屋が言ったことは成程、もっともらしく聞こえる。それに電探が敵機を発見した方向は、偵察機が現れた方向と同じである。電探に心が傾き始めた彼らの元に、だめ押しとなる報告が入ってきた。

「五航戦より信号。電探敵機を捉える」

「よし、直掩機を当該方向に向かわせよ」

 三基の内二基で同じ結果が出たのなら、疑いの入る余地は少ない。故障にしても同じ時間に二基とも壊れる事は、無いであろう。南雲中将はそう判断して、命令を下した。参謀もこれに反対しなかった。


「……敵機発見」

 金子大尉は言うが早いかバンクを振り、味方機にそのことを知らせた。電波探信儀という物が、どの程度の信頼性を持ち得る物か分からなかったが、どうやら問題は無いらしい。

「まあ、小難しいことはともかくとして……俺のやるべき事は唯一つだ」

 敵機を撃墜すること。今考えるべきはそれだけである。

 先ず狙うのは、爆撃機と、雷撃機だ。奇襲となる第一撃は必ずとも成功させる必要がある。

「今だっ!」

 上空からの降下制限ぎりぎりの角度を持って行う一撃。それは狙い過たずアヴェンジャー雷撃機に命中した。操縦士は即死したらしく、それは高度をどんどんと下げて行き、海面に激突した。

米軍の猛攻を凌ぐ三艦隊。しかし、不幸なねーさんが真っ先に被弾してしまう。

果たして三艦隊の未来はどうなるのか!

次回東太平洋大海戦四!万里の波濤を乗り越えろ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ