第九話 作戦1
「好きです!付き合ってください!!」
いやー、若いね。非常に若い。
二十代後半とは思えない。
セーラー服とはこんなにすごい力を持っているのか。
サクは後者の影に隠れてその会話の様相を確認しながらそんなことを思う。
「貴様本気で言っているのか?」
すごんだ表情の、生まれつき凄んだ表情だったんじゃねえの?っていう感じの凄んだ表情の、五人の取り巻きを連れた浦間がすごんだトーンで聞く。
「貴様・・・。」
貴様という呼び名にイラついたのか二十代後半のセーラー服の女は、少し不愉快な表情をした。
「もし本気で言っているのであれば、いいだろう。こっちへ来い。」
そんな不愉快な表情にも気づかずに、高飛車な喋り方で浦間がいう。
マジか。できるだけ取り巻きのやつらには被害を及ぼしたくない。
標的は浦間のみだ。
「とりあえず恋人関係になることができたようだな。適当に終わらして今回は撤収だ。恋人になったからと言って二人きりになることはないらしい。仕方ないことだ。」
セーラー服の女は、見えないくらいのサイズで作動するイヤホンをつけている。今のサクのセリフは、手に持ったトランシーバーを通じてそのイヤホンに届く。
「わかりましたわ!『こっちへ来い』っていうのは付き合ってくださるということですよね!?」
「もちろんだ。今の数秒、俺様と交際することができてよかったな。やれ」
取り巻きのうちの二人がセーラー服の女に殴りかかる。
「!?」
くそ、まずい!!
だが、その心配には及ばなかった。女は飛びかかってきた二人のうちの一人の拳を避け、その反動で回し蹴りを食らわす。
その回し蹴りに驚き目を瞑っている隙を狙ってもう一人の拳を掴みこちら側へ引っ張り、頭突きを一発。その流れで回復しだした一人目の顔面に蹴り。
少しして、状況を理解し始めた残りの三人が飛びかかる。
だがそれだけの時間があれば十分だった。
女は姿をそこから消していた。
なぜバレた!
サクは自問自答を繰り返す。
トランシーバーにとりあえずの集合場所をささやき、サク自身も姿を消すことにした。
すぐに取り巻きが探し始めることを考慮してのことだ。
また作戦の練り直しだ。