第七話 スクールカーストの打開を成功させる。
スクールカーストの創造。
それが浦間が学校の、明々高等学校の生徒全員から嫌われた要因だった。
もっとも、『生徒から』というだけあって教師からは全くもって嫌悪感は抱かれず、むしろ好かれていたと言う状況だった。
それにはれっきとした、れっきとしたクソな理由があった。
スクールカーストの創造主である浦間は、それと同時にスクールカーストの頂点だった。
教師にとって、スクールカーストとは"いいこと”なのだ。
なぜなら生徒全員を簡単に束ねることができるから。
特に高校となると、義務教育じゃないために辞めさせることが可能になる。
つまりはスクールカーストの頂点に君臨する浦間の上の立ち位置にいることができるわけで、
そう言う意味ではスクールカーストの本質的な頂点は教師全員である。
教師の中にもスクールカーストにも似たちょっとしたカーストはある可能性はあるものの、それは生徒からだと抽象的なものくらいしか受け取れないため、ここではその説明も不要である。
あくまで生徒全員から嫌われて、それを代表してここにいる佐藤が成功屋への依頼をしにきたその経緯を説明するのがこの話の目的だから。
とにかく、教師にとっていじめとは、外に漏れたりしなければとても便利でやりやすくなる、いい方法だった。
浦間の上に立てるということは、生徒全員を好きに操ることができるということであり、浦間の上に立てると言うことは教師としてのの役目にも、人間としての優越感にもプラスをもたらす。
そんな理由があって、教師は浦間を嫌わなかったし、スクールカーストの解体を行うことも、行おうとすることさえしなかった。
その事実は浦間を除く生徒たちの浦間へ向けられる嫌悪を更に増長させることとなる。
そして、最終的に死人が出た。
そのスクールカーストを崩そうとするものが現れたからだ。
ちなみにそのスクールカーストが具体的にどんなものだったのかを紹介しておこう。
浦和は策士だ。まず最初に、
浦間の気に入った、カーストを形成する上で役に立ちそうな人間たちを二番目、つまり浦間の下におく。
下に置く方法なんてものはたくさんある。ようは弱みを握ればいいのだ。そのうちの一人は援助交際を行なっていたことをバラすぞと脅した。もう一人はかつて殺人を犯していることを警察にバラすぞ、と。ちなみにその時浦間の選抜した人間は二人。
その二番目のものたちに、『お前らは舎弟を三人ずつ用意しろ』と命じる。
もうわかっただろう。浦間の事実上舎弟は、ネズミ講式に結果的に全員を確保するに至るのだ。
2番目は3番目を3人ずつ六人集め、3番目は4番目を3人ずつ12人集め・・・・。
二番目にいる人間は浦間を嫌い、三番目にいる人間は二番目と浦間を嫌い、四番目にいる人間は三番目と二番目と浦間を嫌う。
そんな浦間以外の全員が誰かを嫌い合う恐怖政治によって成り立つカースト制は、誰かが誰かに助けを求めることさえも弱みを握ることによって防いだ。
情報不足により弱みを握れなかったものに関しては、裸にして動画を撮影し、それを拡散するぞ。それでも効かない場合は犯罪を犯したという証拠をでっちあげ、「これが出回れば偽の証拠だとは誰も思わない」などと吹き込む。そんな要領で舎弟に加えていった。
最悪最低という言葉はこの様相を表すために生まれたんじゃないだろうか。
だが、この完璧にも思える制度には、欠点があった。
ほぼ全員がこの制度を嫌がっているという点である。
つまり、少しの失敗も許されないのだ。
誰かの舎弟になってしまった人間はしかたなく誰かを舎弟にしなくてはならない。そう、『しかたなく』。
そこに失敗は許されない。
許されないが、失敗を完璧に防ぐなんて不可能だった。
その失敗が今ここにいる佐藤である。
佐藤は、弱みを握られ、それをエサに舎弟にされた。だが、
その弱みがガセだったのだった。
つまり実質的に弱みを握られていない唯一の人物、それが佐藤だった。
だから佐藤は成功屋に依頼をすることができたし、するほかなかった。
これが佐藤から聞いたことをまとめた文だ。
だいぶ長くなってしまったな。