第六話 学校の嫌いなやつを殺すことを成功させる
「お前にしては珍しいな」
「なにがだよ」
いつも通り僕の机の横にもたれかかりながらうっとうしい話をうっとうしくしてくるやつの応対をする。
「お前が凹んでるなんて珍しいって言ってんだよ。お前のそんな姿みたのあの時以来だ」
「その話はするなと言ったはずだ。」
書類からおっさんの顔に目を移す。目を細めて強くにらんだその目を。
「わかってるよ。」
「わかってないな。その話を少しでもしてくる時点で。」
「もうしない。すまなかった」
こいつのことについて語るのはまだまだ先のことではあるが、だがしかし便宜上だとしても名前を言っておく必要はあるかもしれない。いつも「おっさん」では伝わりづらいからな。
こいつの名は田崎。
まあ実際これは偽名で、本名は別にあるのだが。
仕事に協力してもらうことはあるが、しかし僕が雇っているわけではない。そんな存在だ。
『ピンポーン』
「お、新インターホンの初鳴りじゃないか」
また客か。最近客が多い。
悪名高きこの会社にくる依頼など限られたやつ以外してこないのだが。
「はさみ。これ頼んだ。」
「・・・」
はさみの座った椅子にしっかりと包んだ機密書類を渡す。
ガチャッと扉が開き、少年が入ってきた。
少年とは言ってもおそらくサクと同じくらいの年だ。
「学校の同級生、浦間のやつを殺して欲しいんだ!」
はぁ。犯罪依頼か。
「無理だ。犯罪はやらない。やるのは何かを成功させることだけだ。」
「浦間を殺すことを成功させてくれ!!」
・・・なんでこう皮肉が効かないやつばかりなのだろうか。
それとも俺の言い方が冗談っぽくないことが問題なのか?
「そもそも犯罪はやらないと言ってるだろうが。金にも困ってないからいくら金を積まれてもやらんぞ」
最近大きい振り込みがあったところなのだ。一眼じゃ数えられないような桁の振り込みが。
「頼むよ!なんでもするから!!」
「ん? 今何でもするって・・・」
1ヶ月後、浦和という人間は学校から姿を消していた。
この世からも。