第三話 ラーメンフェスのルールのまとめを成功させる
「さっき言った通り、フェス内で最もラーメンの売れた店が優勝。優勝した店は日本ラーメン協会のホームページとかいろんなとこに名前が載る。今回の狙いはその宣伝効果。」
あごひげのすごい男はふくよかな腹を支えながら丁寧に説明する。
「動機ばかり聞いて申し訳ないのですが、そんなに豊富な金があるのであれば、ラーメン屋を有名にさせる必要はあるんですか?金儲け目的なのであればそもそもラーメン屋をやること自体ちょっとずれてると思うのですが」
ここからは敬語でしゃべることにしたサクは、さっきとキャラが変わったように真人間のようにしゃべる。
「金儲け目的じゃないよ。これは店長の趣味なんだ。ラーメンを作ることに魂をかけてる店長は、儲けるとか儲けないとか関係なく、世界一美味いラーメンを作ることを目指してる。つまりは、たくさんのラーメン好きに好きと言われるラーメンってこと。さっきの通帳は店長の持つ別会社の資金で、僕の持ち物じゃないんだ。ラーメン屋銀さんの売り上げは俺に入ることになってる。店長の課す制限の内で僕が店を運営し、店長がラーメンを作る、そういう仕組みだ。だから俺は売上を上げるという目的で、フェスに出ようと思ってる。」
淡々と構造を説明するあごひげの瀬田。
「それはわかりましたが、しかし、わからないこともたくさんあります。金儲け目的でないなら、人を集める必要はないのでは?あごひげさんを運営として雇ったがためにフェスに出ることは、店長にとって迷惑以外の何物でもないと思うのですが。」
「それは違うよ。店長は自分のラーメンの味のクオリティを向上させるために、たくさんのラーメン好きに集まってもらうんだ。つまり『自分のラーメンの感想を聞くためにたくさんの客を集める必要があるんだ。だから運営として僕を雇った。テレビCMは不特定多数の有象無象が見るけれど、ラーメンフェスにはラーメン好きしかこない。」
なるほど。だいたいのことはわかったが、順序が逆なんじゃないだろうか。ラーメンを美味しくするためにフェスに出るのではなく、ラーメンを美味くしてからフェスに出るというのが正しい順序だと思うのだが。
まあ、それはこの依頼を中断されてしまう可能性を含んでいたため口には出さなかったが。
「では、ラーメンフェスの続きを教えてください。」
「OK。えっと、どこまで話したっけ。たしか『ラーメンが数多く売れた方の勝ち』ってところまでは話したよね。一応ルールとしては・・・」
あごひげ、つまり瀬田は、文章力がなく、まとまりがなかった。そのため、箇条書きでまとめてみた。
これがラーメンフェスのルールだ。
・出せるラーメンは一種類。
・ラーメンは、店で出しているものとする。(分量、味、盛り付けなどもろもろ同じにする。)
・店で出しているラーメンが複数ある場合、その中の一つを自由に選んで良い。
・『販売数』以外の要素は全くもって最終的な順位に関係しない。
・制限時間は8時間。この時間は店員の就労時間を考慮して、労働基準法に由来する。
だいたいこんな感じだ。
もしさらに説明が必要となった場合は、その時に追々説明していこうと思う。
「それじゃ準備を始めようか。」