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瑠璃色の月  作者: Alice-rate
ロレシア編
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Chapter48 その首に触れたのは

更新のペースを上げると言っておきながら、遅くなってしまい、申し訳ありません。細かいところの設定に悩んでしまうが悪い癖です。


瞬間移動で降り立った先でまず目に入ったのは驚きのあまり目を丸くした兵士たちの表情だった。


「し……侵入者だ!捕らえろ!」


兵士の一人が声を挙げた。その声で兵士たちはようやくそれに考えが至った、というように一斉に瑠璃達への攻撃を始めた。スフィアの攻撃が次々に飛んでくる。瑠璃は蒼い光を操ってその攻撃を消し去った。以前力を使った時に比べれば、瑠璃が操ることができる蒼い光は、随分と強く大きくなっている。床を見渡すと階段はすぐに見つかった。


「シルフ、あそこに階段が!」


「うん、行こう。」


シルフはそう言うと風のスフィアで階段の近くに立っていた兵士を吹き飛ばした。兵士たちは壁にひどく打ち付けられる。

瑠璃はシルフの手を引いて階段を駆け下りた。


「地下に逃げたぞ!追うんだ!」


シルフを引く手に汗が滲んでくる。喚き立てる兵士の声と瑠璃達を追って階段を下る足音が聞こえてきた。



***


瑠璃達も、瑠璃達を追っている兵士も誰一人として気づかなかったが、一人、その場で固まったまま立ち尽くしている兵士がいた。足が震え、顔は血の気が引いて真っ青になっている。その兵士は誰に言うともなく、震える声で呟いた。


「……あれは天使だ。まさか……ロレシアを滅ぼしに来たとでもいうのか?ロレシアも滅びる?あの国、ゼナティス王国と同じように……」



***



ロレシア城の地下は、まるで迷路のように入り組んでいる。その上、幻影のスフィアが使われており、宝物庫へ行き着くのは普通に考えれば不可能なことになっていた。

ただし、それは瑠璃以外の人間にとって、の話だ。スフィアの影響を受けない瑠璃の蒼い目には、目印がつけられた宝物庫へ続く道がはっきりと見えていた。

目印、というのは地面に埋め込まれたスフィアのことだ。いかにもスフィアを大量に所有する国らしい目印である。王国の中で、宝物庫からスフィアを取り出すことを担当している兵士を操って聞き出したらしい。


「シルフ、こっち!」


男の子の手を引いて走るなど瑠璃にとっては初めてのことだったが、状況が状況なので気にしている余裕もなかった。

シルフがスフィアで照らしてくれるから、目印を確認するのは簡単だ。瑠璃は駆ける。


「幻影のスフィアを解け!奴らにはスフィアが効いていない!」


統率をとっているらしい兵士が誰かに指示を出した。

シルフの言っていた通りだ、と瑠璃は思った。

兵士たちにとっても幻影のスフィアで囲まれたこの環境は戦いづらい。瑠璃にスフィアが効いていないことに気がつけば、必ず幻影のスフィアを解除する。全てはシルフの読み通りだった。


幻影のスフィアが解かれた以上、もうシルフの手を引く必要はない。瑠璃はシルフの手を離し、自由になった手で矢を放つ。光を纏って放たれたそれは兵たちを吹き飛ばしていく。シルフは炎、風、雷、様々なスフィアを駆使して兵たちを遠ざけている。それでも瞬間移動で近づいてくる兵士は念力で投げ飛ばす。瑠璃はシルフが戦っている様子を横目で見ながら内心、とても驚いていた。

今まで瑠璃が見てきたスフィリアは同時に使えるスフィアは普通は一個、多くても二個だけだった。だが、シルフは今、四、五個のスフィアを一度に使っている。瑠璃はシルフの力の強大さを改めて実感した。





程なくして宝物庫の入り口にたどりついた。案の定、ここにも兵士が待ち構えていた。


「スフィア泥棒め!大人しく捕まれ!」


兵士はそう叫んで瑠璃達に襲いかかってくる。後ろから瑠璃達を追ってくる兵士もまだ残っていた。数は確実に減ってはいるが、倒しても倒しても新手が次々と加わってくる。


ーー瑠璃、消滅の力でこの扉を消して。俺が兵を遠ざける。


瑠璃は頷いて宝物庫の扉を仰ぐ。宝物庫の入り口を塞ぐ扉は大きさこそ大人が一人、やっと通れるほどだったが、見るからに頑丈そうだ。本当に自分の力で消せるのか、という不安はあったが、今は弱気になっている場合ではない。瑠璃は扉に向かって蒼い光を放った。瑠璃はさらに力を強め、その光を扉全体に広げていく。そんなに大きな扉ではないことが幸いした。光が消えると扉は消え去っており、宝物庫の口が開かれた。


瑠璃はシルフと場所を入れ替わって、再び兵を追い払うべく弓を放ち始める。弓を引き絞りながら、自分の体が重くなっているのを感じた。扉を消したのもそうだが、ここに来るまでに相当力を使っている。アリスがシルフの肩から離れ、スフィアを使って援護してくれているのは本当にありがたかった。

シルフの様子を伺うと、宝物庫の中のスフィアをオムの中に集めている最中だった。それでも兵たちへの攻撃をやめることがないから流石だ。



「瑠璃!」


どうやらシルフはオムの中にスフィアを移し終えたらしい。瑠璃は弓を手放すと、シルフが投げたオムを両手で抱えるようにして受け取った。

瑠璃は片方の腕でオムを持ち、もう片方の手で蒼い光を放った。疲労のせいか、なかなか思うように光を操れない。


これさえ消せば、この戦いは終わる。こうしている間にも宝物庫を守らんとしている兵士たちは傷ついている。彼らはここを守るのが仕事だから。だけど、これを消すことでシルフが守ろうとしているものも分かる。早くこんな戦い、終わらせてしまわなければ。頭痛は酷くなっていくばかりだったが、瑠璃はそれにも構わず必死で力を使い、そのオムを完全に消した。


瑠璃は荒い呼吸で思わずその場にへたり込む。力を使い過ぎてしまったが後はここから脱出するだけだからもう大丈夫だ。瑠璃がそう思った時だった。

背後から腕を掴まれて、無理やり立たされると同時に首に冷たいものが触れた。その冷たさに悪寒が走る。恐る恐る視線を落として自分の首に当てられているものを見ると、それは鋭い光を放つ剣だった。


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