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瑠璃色の月  作者: Alice-rate
旅立ち編
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Chapter3 神隠しの森

「ごめん、朱理。待った?」


家を出ると朱理が待っていた。


「ううん、全然!おはよう、瑠璃。」


赤い眼鏡の奥の笑顔が眩しい。朱理は毎朝笑顔で迎えてくれる。


「おはよう。」


瑠璃もこれに笑顔で答えた。


瑠璃と朱理は小学校時代からの親友だ。二人とも勉強は真面目にやる方だったから、長い受験勉強の末、この春二人は晴れて近くの進学校に合格した。家も近くなので毎朝一緒に学校に行っている。



「今日はいつもより遅かったね。何かあった?」


瑠璃と朱理はまだ慣れない学校への道を辿り始めた。


「…うーん、夢を見たの。それが不思議な夢だったから。」


朱理になら簡単に言えてしまう。瑠璃はこんな事を言っても、朱理が瑠璃を馬鹿にしたりしない事を知っていた。


「夢かー。でも何か意味があるんじゃないかな。ほら、昔から予知夢とかあるって言うし。」


見ると朱理は真剣な顔で考えている。瑠璃はその顔が面白くて思わず噴き出してしまった。


「な、なによー。人が真剣に考えてあげてんのに。」


朱理は不服そうに言った。


「ごめんって。朱理の顔が面白くて……つい。」


瑠璃と朱理は声を重ねて笑った。こんな時間が当たり前に続くと信じ込んだままに。


ひとしきり笑い終えると、朱理が思い出したように口を開いた。


「そう、瑠璃、聞いて‼︎」


朱理の顔が輝く一方で、瑠璃の表情は曇った。また、あれか……


「神隠しの森の入り口を見つけたんだよ‼︎」


朱理の言葉に瑠璃はピクッと反応した。


「えっ、あの森の?」


彼女のオカルト好きにはすっかり慣れた瑠璃もこの言葉には驚いた。

ーー神隠しの森、その名の通りその昔、人が消えたらしくそれ以来森への立ち入りは固く禁止されていた。しかし、禁止されると破りたくなるのが人の心。かくいう瑠璃もその一人であるから、あの森には興味があったのだ。



「行きたい!案内してくれるよね‼︎」


瑠璃は興奮気味にそう言った。朱理もまた興奮している。


「あったりまえじゃない。じゃあ今日の放課後ね!弓道部はまだ部活始まってないんでしょ?」


「うん、りょーかい!」


瑠璃は初めて朱理のオカルト好きに感謝した。





ーー放課後。朱理の案内で瑠璃は裏の裏の道としか書けないような細い道を歩いていった。


「本当にこっちであってるの?」


「うん。任せといて。」


そんな会話をしながら歩いていくと、確かに森を囲う頑丈な壁に人一人通れそうな小さな穴が空いているのが見えた。瑠璃と朱理は周りに誰もいないのを確認すると、無言で頷いた。


瑠璃は這うようにしてその穴を通り抜け、顔を上げて息を飲んだ。

高く高く伸びた巨木の隙間から木漏れ日が差し、苔生した岩を照らしていた。見渡す限り緑の世界。ゴミ一つないその森は本当に神様が住んでいるようだった。


瑠璃に続いて森に入った朱理も同じように口を開けて立ち尽くしている。


「もっと奥に進んでみよう。」


瑠璃も朱理もこの森への好奇心でいっぱいになった。ズカズカと森の中に入っていく。しかし早足で歩き過ぎたせいだろうか。瑠璃は苔生した岩に足を滑らせてあっ、と言う間もなく坂道を下っていった。咄嗟に手を着いたものの、擦り剥いた手や足がズキズキと痛む。


「痛っ……」


そう呟いてスカートをはたきながら立ち上がると、瑠璃は目を見開いた。なんと目の前には道が続いている。道の両端に木々が立ち並び、その根元に見たことのない蒼い色の花が咲いている。


「不思議……」


そうつぶやいて瑠璃はその道を歩き始めた。瑠璃が進むとそれに合わせて蒼い花が光り始める。風も吹いていないのに、花は花弁を揺らし、瑠璃が先に進むのを促しているようだった。


ーー綺麗


その景色の美しさに酔ったかのように、瑠璃の頭の中には前に進むことしかなかった。その時の瑠璃の頭の中には、共に森の中に入った友のことも、家で帰りを待つ母親のことも完全に消え去っていた。


その道の先には青い石でできた祠があった。屋根はドーム状になっており、ドアを挟んで二つ並んだ天使像の慈悲深い笑顔が印象的だ。瑠璃は少し迷ってから、そっと祠の扉に手を掛けた。力を込めて扉を引くと、鈍い音を立てて扉が開く。祠の中は真っ暗だ。瑠璃は祠の前に鞄を置いてスマートフォンを取り出し、祠の中に歩みを進めた。瑠璃はスマートフォンのライトで祠の中を照らし出していく。まず天井。何かを迎え入れるように両手を広げた天使の絵が描かれている。壁は青い無地の石。そして床は…


「何かの紋章?」


そこには丸く縁度られた複雑そうな紋章が描かれていた。

と、その紋章を見た瞬間電気が走ったように瑠璃の体は動かなくなった。瑠璃の意思ではないのに、一歩、また一歩と糸に釣られた操り人形のように紋章の方に近づいていく。紋章の中央まで歩いたところで糸が切れたように瑠璃はその場にしゃがみ込んだ。スマートフォンが手から滑り落ちて乾いた音を立てる。そのまま瑠璃は手を伸ばし、床に手を着いた。

その瞬間紋章が蒼く輝き始めた。瑠璃は逃げなきゃ、と思ったが足はおろか、指一本さえ動かない。瑠璃は自分の体が強く引かれるのを感じた。頭の中のもやが一気に濃くなる。瑠璃はそのまま意識を失った……






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