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瑠璃色の月  作者: Alice-rate
ダリラドール編
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Chapter29 出発の朝

バルツを仲間に迎えた後、突然降り出した雨に追い立てられ、瑠璃達三人は宿舎の中に逃げ込んだ。


「やっぱり雨、降り出したね。」


瑠璃が後ろ手でドアを閉めながら言うとバルツが頷いた。


「ああ。ここの所、割と晴れの日が多かったから油断したな。」


そんな会話をしながら瑠璃達は宿舎の玄関ホールの角に集まった。瑠璃達の横を慌てて傘を取りに来た自警団員達が走り抜けて行く。窓の外は雨で白く煙っていた。





「バルツが仲間になったのはいいけど、次はどこに向かおうかしらね。」


チェリアが腕を組んで言った。するとバルツが驚きの声を上げた。


「えっ、目的地、決まってないのかよ。まぁ、いいけどさ。」


そう言って笑うバルツを横目に、瑠璃は話すなら今だ、と思って口を開いた。バルツにはもちろん、チェリアともゆっくり話す機会が取れず、瑠璃はまだこれからの行き先のことを伝えられていなかったのだ。


「二人とも、そのことなんだけど、……次はブラッシュフェーブルっていう山に行ってみようと思うんだ。」


瑠璃がそう告げた瞬間、チェリアとバルツは互いに顔を見合わせて固まってしまった。

瑠璃は二人の様子がおかしいことに気づき、首を傾げる。


「どうかした?」


瑠璃が尋ねるとチェリアは重たい口を開いた。


「あのね、瑠璃。貴方は知らないだろうけどブラッシュフェーブルってとても危ない所なのよ。」


「危ないところ?」


確かにシルフも簡単な所ではないと言っていたけど、やはり魔物が出るのだろうか。

バルツもチェリアの言葉を受けて口を開いた。


「俺もはっきりとしたことは知らねぇけどさ、その山に近寄らない方がいいって話は聞いたことあるぜ。なんかその山に入った奴、帰ってきてないらしいな。」


「それってつまり……」


瑠璃はぞっとした。恐怖が足元から這い上がってくる。


「そう。麓までなら大丈夫だそうだけど、奥まで入った人はなぜか誰一人として帰ってこないの。だからあの山は一部の人には聖山っていわれてるけど、殆どの人はこう呼んでるわ。魔の山、ブラッシュフェーブル……」


「魔の山……か。」


その山に行った人が誰一人として帰ってこない、それは魔の山といわれて当然だと瑠璃は思った。

それにしても、その話が本当だとしたらブラッシュフェーブルから帰ってこなかった人々はどうなったのだろう。やはり魔物に襲われたのか、それとも遭難したのか。いずれにせよ無事ではないのだろうと思うと恐ろしかった。

瑠璃はふと昔テレビで見た、登山者が行方不明になったというニュースを思い出した。

ーーもしかしたら、私たちも……?


「でも、どうしてそんな所に行こうと思ったんだ?」


不思議そうに尋ねてくるバルツの声で瑠璃は我に返った。瑠璃は慌ててバルツに答える。


「うん。話すと長いんだけど…」


瑠璃はバルツとチェリアにマスターに聞いた天使の伝説の話やシルフに会ってその山に行くように言われたことを話した。


チェリアは黙って聞いていたがバルツは時々口を挟んだ。特にシルフの話になると彼がどんな人物なのか詳しく聞きたがった。

瑠璃が一通り話し終えると、二人とも長い溜息を漏らした。


「……つまり、瑠璃が探している男の子について知りたければ、ブラッシュフェーブルに登って、そこにいるという山の民に天使の伝説について聞いてみるしかない、そういうことね?」


先に口を開いたのはチェリアだった。瑠璃は頷く。


「うん、そういうこと。でも私、ブラッシュフェーブルに行こうって軽い気持ちで思ってたけど思ってたより危険な旅になるかも。もし嫌ならついてこなくても……」


「おい、瑠璃、そういうことは無駄だから言うなって。俺は絶対にお前と行くぜ。」


決めたからな、とバルツは笑った。チェリアも微笑んで言う。


「私もよ。それにね、何だか瑠璃がいたらどんな厳しい場所でも大丈夫な気がするの。」


「あっ、それ俺も分かるぞ。」


「もうっ、適当なこと言って!本当に何が起きるか分からないんだよ。」


楽しげに話す二人に向かって瑠璃はムキになって反論する。


「でも、瑠璃はもしも私たちが一緒に行かないって言ったとしても、一人でブラッシュフェーブルに行ってしまうんでしょ?」


急に真剣な顔になったチェリアに瑠璃は狼狽える。


「それは……うん。そしたら一人で行ってたと思う。」


「でしょ?だったら私たちもついて行くわ。貴方を放ってはおけないもの。」


瑠璃は俯いた。胸に罪悪感がこみ上げてきた。


「ごめん。私がブラッシュフェーブルに行きたいって言い出したせいでチェリア達まで巻き込んでしまって。」


チェリアは笑って首を振った。


「瑠璃、私もバルツも自分の意思で貴方についてきてるの。そのことを貴方が気負うことはないわ。……ねぇ瑠璃はもっと私達に甘えていいのよ。だって私達、旅の仲間じゃない。」


「チェリア……ありがとう。でも私ね、もっと強くなりたい。私だってチェリアやバルツを守りたいから。」


勢いに任せてそう言って瑠璃ははっとした。何かを守れば何かが傷つく、シルフの言葉を思い出したのだ。私がチェリアやバルツを守ることが一体何を傷つけるっていうんだろう。










ーー次の日の朝。


ダリラドールの門の前に瑠璃達三人はいた。夜通し降り続いた雨は止まず、朝だというのに空は暗い。見送りに来てくれたレーガ達、自警団員も傘を重ね合わせるようにして立っていた。


「助けて頂いたうえに二日間も宿舎に泊めていただいて、本当にお世話になりました。」


そう言って瑠璃は自警団員を見渡す。自警団員は口々に楽しかったぜ、などと笑いながら言った。

一番前にいたレーガが瑠璃の肩に手をおいて言った。レーガはどこか寂しそうにみえた。


「嬢ちゃん、すっかり逞しくなったな。これからどこに向かうのか知らねぇが、元気でな。」


「はい。レーガさんも。」


瑠璃は微笑んで答える。レーガはよし、と言うと今度はバルツに話しかけた。


「バルツ、しっかり嬢ちゃん達を守るんだぞ。」


「分かってるって。瑠璃もチェリアも俺が守る。そのためについて行くんだからな。」


バルツの顔は笑っていたがその言葉には力があった。バルツは相当な覚悟で私の旅について来ると言ったのだろうな。瑠璃はそう思ってきゅっと唇を噛み締めた。


やがて開門の時間がきた。大きな音を立てて瑠璃達の後ろにある門が開かれる。


「さようなら!」


瑠璃達は大きく手を振るとレーガ達に別れを告げた。

更新が遅くなってしまって申し訳ありません。次からはブラッシュフェーブル編に入ります。

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