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瑠璃色の月  作者: Alice-rate
ダリラドール編
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Chapter22 作戦会議

レーガの呼びかけで辺りは一瞬のうちに静かになった。数人の客は何が起こったのか分からないという様子で周りの様子を伺っていたが、殆どの客は食事を止め、レーガを中心としてぐるりと円を作り始めた。


酒場のマスターはさっと動き、呆然としている客を、悪いがもう店じまいだ、と言って追い出している。


酒場には瑠璃も含めて円になって並んだ人々だけが残された。



この光景を見て瑠璃は、この酒場の客の殆どが自警団の人間であることに気がついた。バルツが相談を持ちかけたことから考えると、恐らくレーガは自警団のボスか幹部に当たる人。その人の号令に応じてこうして集まったということはこの人達は自警団の人々。

瑠璃が今の状況を飲み込んだ頃、作戦会議は始まった。


作戦会議と言っても殆どの時間、レーガが作戦の説明をしていた。レーガはこの短時間で立てたのが信じられない程、しっかりとした作戦を考えていた。


瑠璃は必死で話に耳を傾け、なんとか作戦の内容を理解した。


作戦の内容はこうだ。

まず、例のカジノでぼやを起こし、カジノの客を避難させ、カジノの外に出す。カジノの中に一般人である客がいたら危害が及びかねないし、人質にされる危険があるからだ。

次に、二つのチームに分かれた自警団が正面玄関と裏口の二手からカジノに侵入する。

カジノの正面は避難させた客で混雑するので、正面玄関から入るチームはテレポートでカジノの正面玄関付近に移動。正面玄関チームはいわば裏口チームが確実にカジノの内部に侵入する為の囮だ。敵側にこちらが正面から侵入するつもりなのだと思わせ、正面玄関チームの方に敵が集まった所で裏口チームが行動を開始し、上の階にあるであろうチェリアの入ったオムを奪おうという作戦だ。



「作戦の決行は今夜。準備が出来次第すぐに始める。油断すんなよ。敵は悪どいことして稼いだ金を使ってスフィアを大量に購入してるらしい。恐らく敵の中には多くのスフィリアがいる。では、それぞれ準備にかかれ!」


レーガが言い終えると自警団の人々は胸に手を当てて敬礼し、一斉に動き出した。



レーガが自警団全員のチーム分けを終えた所で瑠璃はレーガに尋ねた。


「レーガさん、私、裏口チームに行きたいんですけど、差し支えありませんか?


レーガは僅かに眉を動かした。


「嬢ちゃん、あんた戦えるのか?罪悪感でついて行こうとしてるなら迷惑だ。マスターに話しつけてやるから、俺たちがオムを取って来るまで、この酒場で大人しく待っときな。」


瑠璃は頭を振った。ここで引き下がる訳にはいかない。


「確かに私には自警団の人程の戦闘能力はありません。でも私には、スフィアが効かないという能力があるんです。さっきのレーガさんの話だと裏口チームのスフィリアの数を減らして、激しい戦闘が予想される正面玄関チームにスフィリアを多めに入れる、というチーム分けの仕方をするんですよね?だったら、私が裏口チームにいたら、もしも敵のスフィリアと戦闘になった時、私がスフィアによる攻撃の盾になることができます。」


「しかし、それじゃああまりにも嬢ちゃんが危険だ。嬢ちゃんのせいでスフィアの攻撃が邪魔されると分かったら敵は嬢ちゃんの事を集中的に狙うだろう。矢の集中砲火を受けるかもしれない。数名の剣士に狙われるかもしれない。……どんな攻撃を受けるか分かんねぇぞ。」


「危険は百も承知です。それでもチェリアを、大切な友達を取り戻す為に何かしたいんです。」


そう、引き離されて瑠璃ははじめてチェリアがどんなに大切な存在だったのか気がついた。そして自分がどれほどチェリアに守られていたのかも。


チェリアを助ける手助けがしたい。その一心で瑠璃は蒼い大きな瞳でレーガを見つめた。レーガはしばらく瑠璃の眼を見つめていたが、やがて瑠璃の眼から視線をそらし、ふっと笑うと言った。


「驚いたな。あんたすげぇ良い目をしてるよ。誰かを守りたい、あんたはその気持ちが人一倍強いんだな。そういう奴は戦場でも良い働きをするもんだ。……すぐに裏口チームに合流しろ。」


「ありがとうございます!」


瑠璃はさっき自警団員がしていたのを真似て敬礼をした。


「おい、バルツ。こいつもお前と同じ裏口チームだ。持ち場まで連れてってやってくれ。」


レーガは瑠璃達の近くで剣を磨いていたバルツに声をかけた。


「なんだ。瑠璃もこっちのチームなんだな。分かったぜ。レーガ。」


バルツは言うと剣を鞘にしまい、瑠璃に行こうぜ、と言って歩き出した。瑠璃は走っていってバルツに追いつき、バルツの横に並んだ。


「バルツは私がこの作戦に加わるって聞いても驚かないんだね。」


瑠璃が言うとバルツは笑って言った。


「だってお前、明らかに大人しく俺らの帰り待ってるなんて出来なさそうだから。それに攫われた女の子を助けたいんだろ?だったら意地でもついてくるかなって」


「アハハ、全部お見通しだったって訳だ。」


瑠璃が笑いながら言うとバルツはさっと瑠璃から目をそらした。瑠璃はどうしたんだろ、と思い、バルツの顔を覗き込んだ。バルツの頬が少し赤い。


「バルツ、もしかして体調悪いの?」


瑠璃が心配になって尋ねると、バルツはそんなんじゃねぇよ、と言い、歩く速度を上げて瑠璃の前に出た。

瑠璃は首を傾げながらも黙ってバルツの後ろをついていった。





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