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「いただきますね」
私は目の前の食事に手をつけた。流石クリサンセマムの朝食といったところか、朝から豪勢な食事ですその内太る。
この世界が前世私がプレイしたゲームの世界だとわかってから、4年経った。私は9歳となり(リリィの誕生日は冬遅く)、より恐ろしくなった。
なにが恐ろしいかって?
一つは容姿である。時々お父様と街に出る時があるのだが、目を合わせる人老若男女全て、怯えたように逸らすか逃げた。別に睨んでるわけではない。多分、母親譲りの顔がいけないだきっと。
そういえば、始めてゲームでリリィ・リスを見たとき「とって食われそう」と正直に思った。今、リリィになってわかったこの気持ち。食わねーよ。
年齢も間違えられることがよくある。身長が一般少女より高いのと、私が紫や黒いドレスを好んで着る所為だろう。
まぁ、精神年齢30はいってる私に「お嬢様可愛いね!」と言われる方が辛いな。
そして二つ目。フラグ破壊活動についてだ。やはりというか、最近お父様から婚約者はどうする?どうする?とよく聞かれる。勿論「外国の方と結婚いたしますの〜」なんて言えないし。もういっそのこと全てのフラグをへし折って家出しよっかな。でもしない。
「リリィ」
「あ、はい」
幼い頃からの癖である自問自答をしていると、お父様の声に呼ばれ我に返る。
お父様は現在長机の端で朝食をとっていた。因みにお母様は部屋だ。お母様は身体が弱く、少し動いただけで倒れたり、病気にかかったりする。私が家出をしない理由は、お母様を見放せないからでもあった。
「今日、実はパーティーに呼ばれていてな。早めに朝食を食べ終えなければならない」
「そうなんですか」
「他人事のように言ってるが、お前も行くんだぞ?」
「……え」
ちょっと待て。何か嫌な予感しかしない。嫌な汗しか垂れない。
「なんの、パーティー、ですか?」
「ああ、ローズ家の御曹司が記念すべき10歳を迎えたからな。その誕生会のようなものだ」
「ちょ、おと、お父様!なんでそれを今日言うんですか⁉︎」
「すまん。忘れてた」
ジーザス。
「というわけだ。リリィはローズ家の御曹司に会うのは始めてだろう。バレー家の御曹司も来るし、婚約者を選ぶいい機会だろう」
「はぁ……」
「まぁ今日決まらなくても12歳までに決めてくれればいい」
この世界では年齢で幼児、子供、大人、老人の4つに分かれる。婚約を取り決められるのは幼児を卒業し、子供になる12から。お父様は早々と縁談を進めたいらしい。因みに18歳から大人で結婚を許される。
おまけで10歳のように切りが良い年になると誕生会を開くのが、上流会での決まりだ。
「……ごちそうさま」
朝食を食べ終えた私は今日も1人部屋で自問自答タイムだぁ!ではなく、使用人と部屋でお着替えタイムだぁ!ちくしょう。
◇◇◇◇◇◇
「お嬢様は本当になんでもよく似合いますね」
「あら、そう?」
「ええ。さ、最後に口紅を塗りますね」
ううん。くすぐったい。
「はい。できました」
私は鏡の前に立った。
髪にはウェーブをかけられ、紫色した百合の華を添えられた。ドレスは紫ベースの黒飾りで普段着と似ているが、いつもよりかなりボリュームがある。そしてコルセットで、うっぷ。息苦しい。
その後迎えに来たお父様と馬車に乗り、ローズ邸を目指した。
うっぷ。
◇◇◇◇◇◇
………はぁ。行きたくない。
できることなら走る馬車から飛び降りたい。
できることならお父様のカツラを毟りたい。
知っているんですよお父様。あなたがカツラだってことを。
あれは7歳の時。廊下を歩いていたら、お父様が風でカツラを吹っ飛ばしたことろを、偶然見てしまった私。叫びそうになったがグッと抑えた。お父様は誰にも見られていないと思ってるらしいが、残念。
流石クリサンセマムの馬車というべきか。速いし、揺れない。イコール、早く着く、事故も起こらない。
「ん、どうしたリリィ。酔ったのかい?」
「大丈夫…ですわ」
行きたくないオーラをお父様は馬車酔いと勘違いしたようだ。
作者の乗り物酔いは異常。




