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華の都、貴女は蕾  作者: Onyx
学院生活編
14/17


突然現れた男をじっと見る。どこかで見たことあるような…。彼と目が合う。すると彼は一歩後ろに下がる。


「おっと失礼、クリサンセマムのリリィ様」


どうやら私が「私に向かってなんて口を聞いてるの!」と言いたげに見つめていたように感じたらしい。別にいいんだけどね。

だが目が合ったのに怯えず、はたまたどこか楽しそうだった。クリサンセマムでは、ない。アマリリスの同学年だろう。


「…あなたの名前は」

「ちょ、もしかして制裁ですか⁉︎勘弁してくださいよぉ」

「勘違いなさらないで。…問題を指摘していただき感謝してるわ」


彼に指摘された問題、確かに間違っていた。暗算で解ける一問だったが、どこをどう間違えたらそうなるのか、一桁も違う数字が出ていたのだ。子供に指摘されるなんて無念。しかし教えてもらったことには感謝をしなければならない。

問題から目を離し、彼に目を向ける。どうしたことか、彼は目を丸くし何かに驚いていた。そんなに私が怖いか。


「…意外だな」


何がだ。


「あんたみたいな人が、人に礼を言うなんて」

「…それくらい言うわよ」

「おっとまたまた失礼。まぁでも、ギャップがすごいなぁって」

「なによギャップって」

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の華。それを忠実に再現したザ・お嬢様のあんたが、格下の俺に礼を言うって、なんつーかなぁ、おもしれぇなぁって」


態度も悪けりゃ言葉も悪い。それを忠実に再現したザ・ウザスなあんたが、私はよくわからん。本当にアマリリスかこいつ。


「あ、俺の名前はサーニクルス・アネモニ。以後お見知り置きを」


そう言うとサーニクルスは軽くお辞儀をした。そのお辞儀にさからは敬意が殆ど伝わってこなかった。

サーニクルス…サーニクルス…どこかで聞いた名前…。

ああ!ゲームの攻略キャラ!


サーニクルス・アネモニ。アマリリスでヒロインと同学年。しきたりやら階級やらあまり気にさず、自由に生きる少年だ。例えるなら、夏にカブト虫を取りに行く虫取り少年。こげ茶色の髪とオレンジの瞳は、なんだか蜜柑を連想させる。確か彼の好物も蜜柑だっけ。


「ま、長いからクルスでいいよ……っといけねぇ。また敬語を忘れてたぜ」


ケタケタと笑うクルス。こういう明るい性格のため、二番目にヒロインが絡みやすい相手だったりする。因みに一番は…これはまた今度話す。活発な言動から、本当にヤンデレですか?と聞きたくなるが、ヤンデレです。主にカニバリズム。なんでだろうね。怖いね。


「……いいわよ別に、無理に敬語を使わなくて」

「え、いいの?」

「毎回そんなやり取り見たくないし、二人きりの時なら許してあげる」

「おお!サンキュー!」


因みにクルスは頭がよかったりする。ヒロインに勉強を教えるシーンがよくある。まぁこいつの図書室通いは授業サボりのためなんだけどね。


「つーかリリィって、意外に勉強できないんだな」


本当に失礼な奴!ムキーッ!


「なんなら、俺が教えてやろうか?」

「えっ」


いつのまにか私の隣に座っていたクルス。私を映したオレンジの瞳は、まるで新しいオモチャを見つけたようにキラキラ輝いていた。

なんか、フラグ立ってませんか?

そうだそうだ。またまた思い出した。ヒロインとクルスの出会いはここ、図書室。自習に来たヒロインはクルスに出会い、その日から図書室でクルスに勉強を教えてもらうことになる。そこから発展して行く恋心とヤンデレ心。

緊急事態発生。どうやら私がクルスルートの扉を開けてしまったようだ。残念。私の冒険はここまで!とは言わせない。


「え、遠慮させてもらうわっ」


これ以上余計なフラグを立たせてたまるか!全力でフラグ破壊させていただきます!


「え〜しなくていいよ遠慮なんて。あんたといると、なんだか楽しいんだ。なぁ、いいじゃん?」


誰かロードローラー持ってこい。




◇◇◇◇◇◇




「あーここ違う」

「どこどこ」

「まず公式が違う」

「…なんだっけ」


結局押しに負けました。なんですか、私はこいつと恋をして食べられなきゃいけないんですか。決定ですか。助けてください。

まぁでも、死亡回避方法は現時点でならいくらでもあるんだけどね。現時点でなら。今は私が目指すトゥルーエンドは、全攻略キャラの好感度が一定が条件の一つ。今勉強会を許可してしまったことから、クルスの好感度は残念ながら上がってしまった。ならばヒロインが転入してから、他の攻略キャラの好感度を同じくらい上げればよいのだ。

しかし調子に乗って全員の好感度を上げてしまうと、恐ろしいエンディングが待っているということは、言うまでもない。


「ここを解くコツはな…」

「へぇ…そうなんだ」


それよりクルスの教え方は上手い。将来教師になることをお勧めしよう。


しばらく経つと、この時間の終わりを告げる鐘が鳴る。この後の予定は家に帰るだけだ。


「んじゃ、今日はお開きってことで」

「ありがとうね。教えてくれて。助かったわ」

「いいってことよ。じゃあ明日は何時間目にやろうか」

「やるって…なにを?」

「勉強会だよ」


やらないという選択権はありませんか?

でも、家で自習するよりわかりやすいし、頭に入りやすい。たった一時間でここまでできるのは効率がいい。このままやれば学年首位もいけるかも!…クルスがいるから二位止まりからか?

好感度を上げなきゃいいことだし。


「なら昼休み、図書室でどうでしょう」

「おっし!」


明日からはお弁当を持ってこよう。シルバーとハールティアには悪いけど、二人で食堂に行ってもらおう。思いっきり図書室で昼食をとるつもりだが、大丈夫。私はクリサンセマム。




◇◇◇◇◇◇




その判断が、後にあんな自体になるなんて、誰が想像できようか。


「攻略キャラ」


名前・サーニクルス・アネモニ

性別・男

階級・アマリリス

趣味・イタズラ


良い友人になれると思いきや、一番はグロいエンディングの持ち主というカニバリズム野郎。筋力や素早さなど高く、対抗ロールで勝つのは難しい…って、本当に何のゲームだこれ。

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