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今回から後書きに、キャラクター紹介を載せていきたいと思います。
「ひ、秘密基地ですって?」
「ああそうだ!俺らクリサンセマム専用基地だ!」
な、なーに言ってるだ。秘密基地ってのは秘密の基地であるから秘密基地であって、ここは秘密でもなんでもないただの基地でってバカヤロウ。
ああ…なんかとっても輝いてるよ。輝いてるよゼルダの瞳が。そうだよね。秘密基地なんて少年のロマンだもんね。そういえば君も少年だったね。
……でも、ゼルダってこんな少年キャラだっけ?もっと、こう…俺に近寄るなオーラが出るクールボーイだったはず…。成長するにつれてそうなるのかな?君もうこのままでいいよ。
「よし、そうと決まれば早速基地作りしようぜ」
「基地作り?」
「ああ。次の時間からルシッサも呼んで、そうだな、ここをサロンにでもするか」
「サロンって、この学院食堂以外での飲食は禁止なんじゃ」
「クリサンセマムの俺達に、注意できる奴なんていないだろ」
さいですか。
サロンか…。流石金持ちだ。考えることがそのへんのガキンチョとは違う。まぁでも、それっていいかも。好きな時に飲食ができ、授業サボリにはちょうどいい。あまり二人とは近づきたくないが、優先されたのは「楽」の意思だった。
「…ちょっと待ってろ」
ゼルダは教室を出て行ってしまった。どこに行ったんだろう。待ってろって言ってたから、私はここから出ちゃいけないんだよね。…授業が…。あとでシルバーにでもノートを見せてもらおう。
しばらくすると、ゼルダが戻ってきた。後ろに人を連れて。
「掃除要因を連れてきた」
あっさりと言ってしまうゼルダ。連れてきたのは、スカーフの色からして4年生あたりだろう。黄色だからね。彼らの手にはバケツ、雑巾、箒などの掃除用具があった。
この教室を掃除させるために上級生をパシるとか、聞いたことないぞ。どうやら彼らは授業をサボっていたところ、ゼルダに声をかけられたらしい。
掃除は一時間にわたり行われた。せっせと働く先輩方を、私とゼルダはどこかの教室から椅子を持ってきて、それに座ってただこのシュールな光景を眺めていた。
その間にゼルダとポツポツと会話を交わした。周りの女子が煩いだの、無理やり渡されるプレゼントで困ってるだの、見つめられるだの。…私泣くぞ?
しかしここまで彼との距離が縮まるとは思ってもみなかった。そもそも第一印象が悪過ぎたため、願わくば二度と会いたくないと思っていたのに。でも婚約は破棄させていただきます。殺されたくないんで。
先輩方の掃除も終わり、教室は先程よりは綺麗になった。壁の染みも落とされ、ソファーに溜まっていた埃も叩き出され、ロッカーも磨かれ。
先輩方はとてもやりとげた顔をしていた。お疲れ様でした。
でもゼルダ、少し不良っぽいこの先輩方を、どうやって手懐けたんだ。
◇◇◇◇◇◇
「リリィ様!」
外国語の授業から帰って来たシルバーに声をかけられた。今、私は教科書を置くためにクラスの教室に戻っていた。
「どうなさったのです?移動教室にリリィ様が来ないので、とても心配したんですからね!」
「ごめんなさいね。私、少しやらなけらばならないことができてしまって。次の授業も受けないわ」
「なにをなさってるのですか?」
「それは、秘密です」
私は軽くウインクをした。一度やってみたかったセリフとポーズ。キモいのはわかってます。全米が吐くのはわかってます。でもやりたかったんです。反省はしているが後悔はしていない。
シルバーはなぜか顔が赤くなっていたが、熱でもあるのだろうか。少し心配だが、次の授業が始まる前にあそこへ行かなければ。
◇◇◇◇◇◇
「あ、リリィちゃん」
「早いわねルシッサ」
「まぁね。ゼルダが僕の腕をつかんで走って連れてきたからね」
私は先程先輩方が掃除してくれた教室を開けると、ソファーにゼルダとルシッサが座っていた。
ルシッサが私のことを「リリィちゃん」と呼んだのに吐き気を覚えたが、呼び方は人の自由だろう。私は頬を引きつらせながら、二人が座るソファーの反対側に座った。
「それより久しぶり、リリィちゃん。僕の誕生日パーティー以来だね」
「入学式の時にも会ったじゃない」
「一言も会話してないでしょ。会ったとは言わないよ。僕はね」
「おい挨拶はもういいだろ。早くやるぞ」
ゼルダが会話を遮った。そしてソファーの間に挟まれたローテーブルに足を乗せる。お前、本当に御曹司?
「俺たちの秘密基地…いや、サロン」
どうやらこの教室の名前はサロンに決まったようです。そのまんまだな。
「やはりまだ殺風景だ。狭いが、何か家具を置きたいと思うんだが、何がいい?」
「いや、何がいい?って聞かれましても」
「リリィちゃんはセンス良さそうだし、部屋のレイアウトとかはリリィちゃんに全部任せない?ゼルダ」
あっ、おい、てめぇルシッサ。面倒だからって私に全て押し付けんじゃねーよ。
ルシッサはこう見えて、腹黒だ。真っ黒だ。人当たりの良い笑みを浮かべて、心の中では何を考えてるのかわからない。わかりたくない。ゲームでもそうだったね。君。
「そうだな。んじゃ、任せたぞリリィ」
「…努力はします」
「それで僕とゼルダで学院側から許可を得るよ。正式にここを僕たちのものにするためにね」
ルシッサも結構ノリ気のようだ。そうかそうか、君も少年だったか。確かに楽しいよね、秘密基地作りって。あ、ここはサロンだっけか。
コンコン。とサロンの扉を叩く音が響いた。誰か外にいる。誰?使われてなかったはずだから、いちいちノックしてくるのは不思議でしょうがなかった。
「あのー、リリィ・リス様いますか?」
学院長の声だった。てか学院長から「様」で呼ばれるって、どうよ。流石クリサンセマムです。はい。
「つーかなんで学院長が、お前がここにいること知ってんだよ」
「さぁ?兎に角リリィちゃん、行かなくていいの?」
「そうね」
私は立ち上がり、サロンの扉を開けた。
◇◇◇◇◇◇
そしてサロンに帰って来た。
「おかえり。なんだったの?」
「いや、なんか学院長がさ」
元凶はシルバーにあった。
次の授業はクラス教室で行った。その時私がいない理由で、シルバーがこう答えた。「リリィ様はクリサンセマムの大切な仕事があって来られないのです!」。いや、あってるっちゃあってるけど。どういう経路か知らないが、それが学院長の耳に入ったようで、兎に角私の仕事を知っておきたかったようだ。学院側は私達に口出しなどできないが、その代わりに状況をしっかり把握しておきたいらしい。
私がここにいるとなぜしっていたのか。それは他に余ってる教室がここしかないと考えたからだそうだ。冴えてるな。
「と、いうわけで。ここを私たち専用のサロンとして使用して良いと許可がおりました」
私は学院長にサロンの計画を伝えた。するとすぐに許可がおりたのだ。
「へぇ、早いな」
「じゃああとはリリィちゃんが模様替えするだけだね。よろしくね」
ああ、面倒くさい。
「この話の主人公」
名前・リリィ・リス
性別・女
階級・クリサンセマム
趣味・自問自答
乙女ゲームの世界にライバルポジションで転生。なんとか自分の死亡エンドを回避しようと、現在フラグ破壊活動を頑張っているが、逆に建設しているような気がする。
自分の外見にコンプレックスを持っている。
この話を考える際、大まかに書いた設定です。