ハープの調べ
『初めに』
初めましての方は、初めまして。
見かけたことがある方は、こんにちわ!(いないと思いますが…
水野 氷華です。
温かい焚き火の近くで、黙々と楽譜にペンを走らせる。鳥のさえずりを聞いても、朝日が昇ってくる空の色を見ても。なにも沸きあがってこなかった。
ため息をついて空を見上げる。キラキラと控えめに輝く星達と女王のように中央でくるくると回るラデカ。何かが沸いてくるように思えるけれど、その感覚は一瞬で消え去った。
【ポロン… ポロロロン…】
…美しい弦楽器の音色。奏者は誰だろうと耳を傾ける。弦楽器の音はまだ続くようだ。焚き火を消し、少しの荷物が入った鞄を手にとってゆっくり歩く。森の中をしばらく歩いて、湖の近くについた。黒いローブを着た女性が、弦楽器を奏でている。
《パキッ》
「… ! 誰だっ」
女性は、くるりとこちらに回って、クロスボウを取り出し、ボルトがすごい速さでこちらに飛んでくる。ギリギリのところを避けて叫んだ。
「ぼ、僕はただの旅人だよっ! なにもしないかやめてくれ!」
まさに2本目のボルトを放とうとしていた、ローブを着た人物は手を止めた。ローブから出ている手は、細くてスラリとしていて美人の印象を与える。
「リラを… 狙ってきたのか…?」
彼女の視線が僕の顔を捉える。見え隠れする瞳は、キレイな緑色だった。
「リラ? それ、君が演奏してた弦楽器のこと?」
彼女はうなずいて、ぎゅっと持っていた銀色をしたハープのようなものを取り出した。細い、スラリとした手で、彼女は旋律を奏ではじめる。
【ポロン… ポロ、ポロロン…】
そっと、僕も銀色のフルートを取り出して、おもいでた節を奏でる。
【ポロロン、ポロロン ヒュールルルルルルー ポロロン、ポロロン ヒュールルルルルルー…】
「曲が思いついた! ありがとう。 そういえば、君の名前は?」
「… アイビス・メディウム」
「僕は、スプリング・ミンストレル! よろしくね!」
「… スプリング。お前になら、リラを譲れる」
「え?」
「このリラは、3つの一家を10年に一度、動く。最初に持っていたのはミンストレル一家だ。そのとき、メディウム一家と銀のフルートを交換し、そのあとクラウン一家と 銀のシロフォンと。そうやって一家を回り、それぞれの所有者によって旋律を奏でられて、リラは成長してきた。そして…」
「今日の満月のラデカに、新しい所有者によって、リラが奏でられれば、リラに魂がやどる… でしょ? アイビス」
「・・・・・・・・ そうだ。だから、スプリング。奏でてくれないか」
「わかったよ。貸して」
アイビスからリラを貸してもらって、旋律を奏でる。
【ポロン… ポロロロロン… ポロンポロロン…】
リラが光りだし、ラデカの元へと昇ってゆく。少し経った、その瞬間に星屑のようなキラキラした欠片が落ちてくる。その欠片は落ちてくるごとに、ほろほろと崩れて消えていった。
「キレイ……… だったね」
「そうだな。さ、泉に入るぞ」
「え、ちょっと待って!」
アイビスに腕を引かれた勢いで、泉の中に入ってしまった。
「願いの詩は知ってるか?」
「え、あ、うん」
「2人で歌うぞ。いいか? 1、2、3」
「「星屑になって消えた神の楽器よ 今ここにまた現れて、我らに楽器の楽しさを 恵んでくださいっ」」
リラが手に戻ってきた。なんどか触ったことのあるような気がするけれど、また違う感覚だ。
「ありがとう。少し、目をつぶってくれないか?」
「う、うん」
唇と唇が重なる。そのとき、神様がリラを奏でた気がした。
~~~END~~~
ハープの音色、いかがだったでしょうか。
二次創作なのですが、はっきり言ってイメージをつかみ切れている気がしません…
よければ、評価などなどしていただければ幸いです。
それでは、またいつか。