クマさんとヤギさん
クマさんは山の中を歩き回っていました。
食べるものを探していたのです。
しかし秋だというのに、なかなか食べるものが見つかりません。
クマさんは、すっかりまいってしまいました。
「お腹がすいた」などという独り言も、むなしくなるぐらい空腹でした。
しばらく行くと、友だちのヤギさんに出会いました。
「ああ、ヤギさんおひさしぶりです」
「ああ、クマさん。お元気ですか」
お互いにあいさつを交わします。
「ヤギさんは、何をしていたんですか」
「私は食べられるものを探していました。クマさんは?」
「僕も同じ。お腹が空いていて」
クマさんの言葉を聞いて、ヤギさんは嬉しそうな顔になりました。
「じゃあ、私と一緒に探しましょう」
「良いですね」
クマさんとヤギさんは一緒に食べるものを探すことにしました。
クマさんは食べられるものなら何でも好きでした。
川にでも行って魚でも探してみようかな、と考えました。
「魚を探しに行きませんか」
それを聞いたヤギさんは、残念そうに言いました。
「悪いけれど私は、魚はあんまり好きじゃないんです」
そう言えばヤギさんは、魚は嫌いだったな。
クマさんはそんなことを思いました。
「そうでしたね。ごめんごめん」
「いや、でも行きましょう。私は川の近くに何かないか探してみることにします」
ヤギさんがそう言ってくれたので、クマさんはヤギさんと川までやってきました。
クマさんは川で魚を探しました。
ヤギさんはその周辺で栗や柿、キノコなどを探していました。
川には何もいませんでした。
クマさんはがっかりしてしまいました。
ヤギさんも何も見つけることができないようで、がっかりしていました。
二人は、お互いに顔を見合わせました。
「やはり何もないようですね。どうですか? 寒くなってきましたし、どこかで一杯飲みませんか?」
「良いですね。賛成です」
クマさんの提案に、ヤギさんは賛成しました。
こうして、熊田正行(人間、男性、四十六歳、通称:クマさん)と八木次郎(人間、男性、四十四歳、通称:ヤギさん)は山を下りて、近くの居酒屋へと向かいました。
今年は不作ですねぇ、などと言いながら。