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きっと、それは  作者: 篠宮 楓
第3章 とある攻防 とある策略
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13


「……とりあえず、目に見える場所はどうにかなったかな……」


夜七時。定時から一時間を回ったところで、ゆっくりと顔を上げた。

散乱していたファイル、崩れたダンボール、その他諸々とりあえず見られるようには片付いた。

ついでにファイルの中の書類も整理したし、ダンボールも外から分かりやすいように明細もつけたし。

ちょっと、私凄くない?

思いっきり両手を腰に当てて自画自賛していたら、ちょっと気が晴れた。

そうよね、大掃除するために荷物を崩しておいてくれたと思えばいいのよ。


人生一度きり! 悩んでいても仕方ない! 泣いてたって悩んでたって同じだけ時が経つなら――


そこまで考えて、反っていた背をゆっくりと戻す。

ゆるく息を吐き出して、にぃっと笑った。


笑顔で。

笑顔で、生きていこう。

私にとって“今”は、日常ではないんだから……





その時、倉庫のドアが開いて桜が顔を出した。


「あら、綺麗になってるじゃない。頑張ったわね」

感心したように倉庫内を見回しながら入ってきた桜の手には、私の荷物。

帰りロッカーに行こうとするとどうしても一階に上がらなくてはならず、桐原主任と遭遇する確立が高い為、ロッカーの鍵を桜に預けてあったのだ。

「桐原主任、まだ上にいるみたいよ。皆川さんと話す声が、人事課からの電話で聞こえたから……」

「そっか。ありがとね、桜」

持っている荷物を受け取って、服を着替える。

この姿のまま外に出たら、目立つだろうし。

汗でしっとりしてしまったロングTシャツを脱いで、いつも通勤できているカジュアルスーツに着替える。


今日はシャツワンピース。

ジーンズに着替えやすかったからね。



「今日は早く帰ってシャワー浴びよー。汗臭いわ」

着替えながら桜に言うと、倉庫を歩き回っていた彼女の足が止まる。

そこは、スチールラックの後ろ。


「……、掃除の期間はあと何日?」


前のボタンを止めながら顔を上げると、眉を顰めた桜の姿。

綺麗な人は、どんな表情も見惚れるほど綺麗だわ。

そんな関係のないことを考えながら、ボタンを留め終える。

「一応、課長から了承を得ているのは三日間。だから明後日まで」

片付けのついでに書類整理や倉庫内のレイアウト変更も言いつかったから、多めに日にちをもらえたのだ。

まぁ片付くし綺麗になるし、ある意味一石二鳥。




桜は呆れたように、ため息をつく。

「課長も、ただじゃ起きないわね。とりあえず、由比の受け持ちの書類は私と課長で処理してあるから、安心して片付けに専念して頂戴」

ね? と苦笑する桜に、思いっきり抱きつく。

「ありがとう!」


片付けに三日間もらえたのは嬉しかったけど、それが一番不安だったのだ。

一日でも抜けると凄い未処理書類が溜まるのに、三日ってどーなっちゃうのって思ってたから。

ぎゅっと首に回した腕に力をこめると、私の背中を軽く叩いて桜が笑う。

「ふふ、汗臭い」

「ごめんね」

いろいろ、迷惑掛けて。

そういう意味を込めて一言伝えると、もう一度私の背中を叩いて桜は身体を離した。



「さ、帰りましょ? あー、面倒だから駐車場からでちゃう?」

「うん、そーしよっか」

非常階段で一階に上がるの、面倒だしね。


着替えを入れたトートバッグを肩に掛けると、桜と二人、倉庫から外に出た。




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