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きっと、それは  作者: 篠宮 楓
第2章 びっくりの法則
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13

駅を出た車は、真っ暗な道をゆっくりとアパートへと向かっていく。


隣ではいかに桐原が理不尽かを、由比が懸命に話している。

圭介はそれに相槌を打ちながら、思考には別のことを浮かべていた。



たったの。

確かに、たったの四日。


驚くほど距離が縮まったと、圭介自身もそう思う。

それは多分、翔太の存在が大きい。

他人に表面しか見せない翔太が、なぜか最初から由比に対して心を許していたから。

そんな翔太の事が嬉しくて、由比と仲良くなろうと、距離を縮めようとしたのは嘘じゃない。



たったの。

確かに、たったの四日。



それでも、由比が充分信用できる人間だと分かった。

人に頼らず、自分の事は自分でやる彼女に好感が持てた。


今朝、由比を車に乗せて話していた時。

必要以上に過保護になっている自分に、改めて気付いた。

由比に対してその理由を言い募る自分に、その焦りに。



確かに、ありえないと、思った。

そんなに自分は、いい人間じゃない。

無条件に守りたいと思うのは、翔太だけで充分だ。

なのに彼女を見ると、守りたくなるのはなぜだろう。


その時、翔太と彼女が、なぜか重なった。


自分でもよく分からなかったが、なぜかすとんと納得した。

彼女は。

翔太と同じ、自分にとって庇護する対象なのだろうと。

向けられるその表情に、感情に、彼女を守りたいと思う自分がいるのだろうと。



翔太は、自分の弟。

ならば、彼女は妹。



そう伝えて、彼女を安心させてやりたい。

いつも自分と話す時、顔を真っ赤にする由比さんを。

そうすれば、もっと距離が近づくんじゃないかと――



そう思って……


――妹みたいに、見えるのかも


……伝えた。



素直に喜んでくれる由比さんを見て、これで彼女を怖がらせずにすむとほっとしながら。

喜ばれた事実、それに少し寂しさを感じた。

なぜかしっくり来ない感情の小さな欠片が、残ったような感じで。



――あー、妹。確かに、おにーちゃんって感じ



その欠片はなんだろうと内心首を傾げていたら、由比さんは苦笑しながらさっきよりも少し砕けた雰囲気になって話してくれて。



その事実に温かい気持ちになって、その欠片から意識的に視線を逸らした。





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