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きっと、それは  作者: 篠宮 楓
第2章 びっくりの法則
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さぁ、ゴールデンウィークが始まりました!


早速、初日ですが!!

――掃除と洗濯で終わりましたよ。

一人暮らしの社会人なんて、こんなもんさ。








「おはよう、出かけるの?」


生活観溢れた初日はとっくに過ぎて、本日二日目。

少し大きめのバッグを持った私は、アパートを出てすぐの所で圭介さんに呼び止められた。

ほとんど人の通らない道だけど、少し路肩に寄せて車が止まる。

エンジンも切ったらしい。真面目な先生だ。


「はい。ちょっと、出てきます」

「また、敬語」

くすりと笑いながら指摘されて、慌ててごめんなさいと謝る。

私の慌てっぷりがおかしいのか、面白そうに口元を緩める圭介さんの姿は、格好いい。

うん、眼福眼福。

心の中で頷きながら、とりあえず少し睨むと謝りながら苦笑された。


「あんまりにも、由比さん可愛いから」


――爆弾投下!


ナチュラルにするりと言われて、つい呆気にとられてしまった。

恥ずかしさも出さず、爽やかに優しい笑顔でさらりと言われちゃったよ。

固まっている私をよそに、圭介さんは何か考えるように視線を上に向ける。

「なんていうの? 猫って言うか……子犬って言うか、リスっぽいって言うか」

零れてきた言葉に、赤くなった顔が平静に戻っていくのがよく分かる。

そーいう、可愛いね。

小動物っていうか。


「あぁ、ハムスターが一番似合いそう」



――広義の意味で、桐原主任と言ってる事同じじゃないですか……



がっくりとうなだれつつも、まぁねずみよりかはいいかと考え直す。

「同じ種類を指すにしても、ハムスターの方がまだいいよね……」

一昨日の桐原主任の行動を思い返しながら、思わず溜息をついた。

ネズミに見えるからって、指食べるってどうよ。

捕食対象とか、肯定されたしなぁ。


「ん? どういうこと?」

私の言葉に反応したのか、やっと笑いを収めた圭介さんが私を見上げた。

頭の回りに、ハテナマークが乱立してそうですよ、圭介さん。

「うちの会社の上司で、私のことを“ねずみ”って呼ぶ人がいるんですよ。酷いと思うよね? 人扱いじゃないんだから」

なんとなく敬語とタメ口が混ざり合ってるけど、そこは聞かない振りを希望します!

圭介さんは、そうなの? と呟くと、車のエンジンキーを回した。



「もし駅まで行くなら、乗せてくけど。お礼は、夕ご飯のおかずで」

なにやら、私の作るおかずは気に入ってもらえたらしい。

ちなみに昨日は、冷凍しておいたハンバーグとジャガイモ・にんじん・スナックエンドウを、デミグラスソースで煮込んだだけのもの。

ハンバーグさえあれば、野菜を切るだけなのでめっちゃくちゃ簡単。

確かにお弁当用のストックまで使い切っちゃったけど、また作ればいいわけだしね。

私的には喜んで食べてもらえるなら、別に等価交換みたいなものがなくてもいいんだけど。

「今日の夜はちょっと用事があるんで、明日の夕飯のおかずでもいいですか?」

「もちろん」

「じゃ、お言葉に甘えます」

そうする事によって圭介さんの気持ちも落ち着くみたいだから、それに乗っかっておこう。




助手席を指で示されて、頷いて乗り込む。

彼女さんとかいたらまずいんじゃないかなぁとか思うけど、まぁ、圭介さんがそこに座るように言うんだからいいのだろう。

圭介さんは私がシートベルトを締めたのを確認すると、アクセルを踏んだ。

ゆっくりと加速していく運転の仕方に、本当に穏やかな人だなぁと内心つぶやく。



「圭介さんは、どちらに?」


てっきり仕事かと思ったらいつもみたいなスーツじゃなくて、カジュアルシャツにジーンズを穿いていて、先生のする格好じゃないと思い直す。

圭介さんはは前を向きながら、仕事だよ、と苦笑い。

「流石に生徒のいない日くらいは、スーツから開放されたいからなぁ」

肩凝るんだよと笑う圭介さんに、なるほど……と返す。

確かにスーツって、肩凝るよね。

就職活動の時、嫌って言うほど経験しました。

会社もスーツって言えばそうだけど、リクルートスーツみたいじゃないものを着られるから、そこまで肩は凝らない。

楽だわ。


「確かにそうですよね。でもちょっと残念。圭介さん、スーツ姿格好いいから」

「え?」

丁度赤信号で止まったらしく、私の言葉に少し固まった圭介さんがぎこちなくこっちに顔を向けた。

「普段着も格好いいけど、スーツ姿は素敵に目の保養です。眼福~」

にっこりと言うと、眼福って……と圭介さんも笑う。

「上手いなぁ、由比さん。ちょっと照れちゃったよ」

「何言ってるんですか、さっき私だって照れましたよ」

うふふ、と笑いあう。




ここに翔太がいたら、確実に「二人とも鈍いとか言われない?」と聞いていただろう。←作者突っ込み


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