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きっと、それは  作者: 篠宮 楓
第5章 手を伸ばして、君が求めたものは。
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二人の後ろ姿を見送って、圭介は両腕を前で組んで隣に立つ翔太を見た。


「由比さんのことだけど」

「ん?」

「きっと彼女には、何か過去にあったんだと思う」

突然話し出したその内容に、翔太は思わず圭介を見上げた。

その視線を受けて、圭介は由比を見つめる。

「お前も、そう思う事。ない?」

翔太は、圭介の視線を辿るように由比を見ると、小さく頷いた。



翔太の脳裏を掠めるのは、突然変わった由比の態度。

圭介の態度を気にして怯えていた由比が、いきなり普通に戻った。

確かに家族だからと心配するのは当たり前だと宥めてはいたけれど、それでも拭えない違和感がそこにはあった。


「ある」


周囲と楽しそうに話す由比の顔には、そんな翳りは見られないけれど。

一緒にいると、気づくことがある。

もしかしたら、圭介と翔太の抱えるものも、由比に気づかれているのかもしれない。


圭介は小さく頷いて、その視線に強い意志を込めた。


「それ含めて、私は由比さんを大切にしたい」

圭介の言葉に、一瞬口を噤んだ翔太が口端を上げた。

「奇遇。俺も」


にぃっと笑って圭介の背中を軽く叩くと、翔太は由比達のもとへと歩いて行った。

圭介は、立ったままそれを見送る。




由比に声をかけた翔太が、彼女が持っていたパンをその手ごとを掴んで口に入れているのが見えた。

思いっきり、由比に怒鳴られている。




それを笑いながら見遣ると、圭介は目を伏せた。



圭介にも、翔太にも、抱えている過去がある。

そして、きっとそれは、由比も同じ。

彼女は、乗り越えていない過去を、きっと抱えてる。

そして、それは私達も同じ。


由比が周囲の感情に対してあまりにも鈍いのも、以前聞いた、一人で生きていけなくなってしまうといったのも、何か過去に要因があるんだろう。

それを。それごと、由比を受け止めたい。

由比に、自分を受け止めてほしい。



今まで持っていたような、優しい感情では追いつかない。


穏やかな日々を望む、決して穏やかではない感情。


自分に家族を求める彼女にとって、望まない気持ちなのかもしれないと気付いているけど。



でも、ごめん。

由比さん、ごめん。



もう、決めた。



由比さんを、妹としてもう見ない。

好きだから、その感情のまま動く。



これから先、ずっと未来まで由比さんに傍にいて欲しいから――



5章終了です。

手を伸ばして、君が求めたものは。


現実に幸せを求めた、由比。

自分だけの人、自分だけの居場所を求めた、翔太。

由比が求める家族になれたらと、穏やかな感情を求めた圭介。


三人とも、それぞれ違う形で感情を育ててます。


幸せを求めようとして、自分の居場所を思い出しその手を下した由比。

自分だけの居場所を求めようとして、何とか自分に振り向かせようとあがく翔太。

由比の求めるものとは違う、穏やかではない感情に気づいてしまった圭介。


次章、伏線を頑張って回収していく予定です^^

お読みくださり、ありがとうございました。

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