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きっと、それは  作者: 篠宮 楓
第5章 手を伸ばして、君が求めたものは。
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食事会当日。

朝七時から起きだした私は、まず必要な食器類を用意した。

来るのは合計八人。

圭介さんと翔太と相談して作ることになった料理に必要なカトラリーは、スプーン。そして箸。

割り箸はスーパーやコンビニで貰ったものがあるから、それでよし。

スプーンはうちと圭介さんちので、なんとかセーフ。

お皿は、もうばっらばら。

適当もいいところだけど仕方ない。

できるだけごみを出さない方向で、必要ならその場で洗いに戻ればいいと諦めた。


桜たちが来るのは、夕方。

本当はお昼とかの方がいいんだろうけれど、なんたって既に八月。

とにかく、暑い!

事情を話したら大家さんである孝美さんが日除けにタープを貸してくれるといっていたけれど、さすがに日中は耐えられないだろう。

と言うことで、ビアガーデン並みに夕方開始に決めた。


だというのに、なぜか溝口先生は午前中から手伝いに来てくれるらしい。

うん、本当にいい人だ。

あんなに迷惑を掛けたのに、早くから来て手伝ってくれるなんて。

圭介さんも、いい同僚に恵まれてるんだね。


私は機嫌よく鼻歌を歌いながらお手拭やタオルをテーブルに置いて、冷凍庫の氷を確認した。

冷たい飲み物は、必須だろう。

作れるだけ作っておいたけど、後で圭介さんちにも頼もう。

最悪、足りなくなったら一階の人に貰えばいいし。


作っても作っても、ご飯も氷も足りなそう。


大変だというのに、つい顔が笑ってしまう。

楽しいな。自分のご飯を食べてくれる人がいるんだよ。

私が役に立てるんだ。

私を、必要としてもらえてるんだ。


「お父さん、お母さん」


つい、呟いた。

目を瞑れば、笑ってくれる両親の顔。

きっとお父さんなら、がしがしと頭を撫でてくれるはず。


「……」


ふいに、昨日、自分の頭に触れた掌を思い出す。

そして、自分を見るその視線を。


最近、圭介さんが私を見る雰囲気が変わった気がする。

触れてくれる掌は、とても温かいけれど。

何か今までと違うように思えるのは、ただの思い過ごしなのかな。


ほんわかな雰囲気は変わらないんだけど。


たまに、じっと私を見るその視線に。

何か怖いものを感じてしまうのは、気のせいなのか……


口元を押さえながら、目を伏せる。


翔太は一時期不安定な感じを受けたけど、今は至って普通で。

一応圭介さんに聞いてみたけれど、思い当たる事があるらしくて何もしなくて大丈夫と言われてしまった。

だから気になりつつも、様子を見るだけにしているけれど。

そこで、ふと、気付く。


もしかして、翔太が不安定になったきっかけを私が作ったから、圭介さん、私の事を内心苦々しく思ってるとか?

圭介さんが一番に守るべきは翔太で、それは当たり前で。

そこにちゃっかり居つかせてもらっているのが、私。

なのに、そんな私が翔太を……それどころか皆を振り回しちゃったから……。

翔太の為とか言いながら、本当に自分の為の行動だったってこと。

あの後の翔太の状態を見れば、一目瞭然だったのだから。


「……あ」


そうだ、きっとそうなんだ。

圭介さん優しいから、はっきりと言えないだけで。



ぎゅ、と手を握り締める。

なんで今更気がつくんだろう。

なんでいつも、気がつくのが遅いんだろう。


桐原主任の時もあれだけ後悔したのに、また……




その時、壁の向こうから叩く音が聞こえて、飛び上がらんばかりに肩を震わせた。


“そっちにいっていい?”の合図に、慌てて返答する。


胸を押さえて動悸を治めながら、時計に目を向ける。

考え事をしながら用意をしていたら、いつの間にか十時を過ぎていたらしい。

十時半に溝口先生を迎えに行きがてら、今日の食材を買いに行く予定。


沈みこみ始めた感情を、両手で頬を打って切り替える。



今、考えても仕方ないもの。

今日は楽しもう。

そう、翔太にも圭介さんにも、会社の皆にも楽しんでもらうんだから。

その後の事は、今は考えるのはよそう。



私は、慌てて戸締りを始めた。



お礼SS……というより短編になってしまったので、新たに立ち上げました。

よろしければお読み頂ければ嬉しいです^^

「きっと、それは」のほかのおはなし 下記リンクより飛べます^^

お礼のおはなし「圭介と由比のデート」1~



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