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きっと、それは  作者: 篠宮 楓
第5章 手を伸ばして、君が求めたものは。
100/153

きりがよかったので、今日はちょっと短めです。

すみません。

「ということで。今度の土曜日、夜は食べに行くからおかず温めて食べてもらってもいい?」

その日の夜。

仕事から帰ってきた圭介さんと翔太とうちでご飯を食べている時、昼の事を思い出して二人に伝えた。




あの後、工藤さんから返事が返ってきて、カニで脳内を埋められていた皆川さんは、都合のいい日の中で一番早い土曜日を選択したのだ。

……かわいそうに。給料日前。あと二日後なら給料日だったのに。

しかもランチならまだしも、カニがあるのが前提で、それがでてくるのがディナーのみという、桐原主任には大変お可哀想な展開で決められてしまいました。

五人分のディナー食べ放題って……、おいくらまんえん……?



……お気の毒に



掛かる金額を計算して脳裏で桐原主任を拝んでいたら、向かい側でご飯を食べていた圭介さんが眉を顰めた。

「……桐原さん?」

「はい、桐原主任がお財布担当です」

「お財布担当?」

意味が分からないと、今度は斜め横の椅子に座る翔太が首を傾げる。

「ご自身含めて五人分、桐原主任が奢ってくれるんです」

なんで、の、理由は言わないけどね!




前に圭介さんの前で泣いた時、桐原主任と何かがあった事がばれてる。

はっきり私から言ったわけじゃないけど、絶対にばれてる。

核心もって、言ってたもの。

”由比さんが言わないなら、桐原さんに聞くしかない”って。

だから、今回の奢ってもらう理由も薄々感づいているだろう。


でも、翔太には気付かれてないはず。

それに、わざわざ蒸し返していう事でもないし。

なんか二人とも相性悪そうだし。

できれば言いたくない。




「私の同期と、先輩三人。ディナータイムって言っても五時からスタートらしくて。制限時間一時間半だから、そんなに遅くならないと思うけど」

とりあえず話しを進めると、箸をかちかちさせながら翔太が口を尖らせた。

「いいなー。桐原さんに、俺の分も奢ってって、由比、強請って」

「強請るか。あ、もし行きたかったら、夏休み中に行ってみる?」

そうだよね、若い子だしたまにはお腹一杯普段食べないものを食べるのもいいかもしれない。


「ね、圭介さん」

「ん? そうだね、それもいいかもね」

もくもくと箸を動かしていた圭介さんが、顔を上げてにっこり笑う。

「あぁ、由比さん。その日は夕飯の支度はしなくていいよ。私か翔太が作るから」

「だなー。たまには作らないと、下手になりそう」

圭介さんの言葉に賛同するように、翔太が頷く。

「いつも作ってもらってるし。ゆっくりしてきなよ」

ね、と笑うその表情は、全く普段どおり。




学祭の日、私に縋りついてきた時は昏い瞳をしていたけれど、翌日にはいつもの翔太に戻っていた。

安堵すると共に、感情を押し殺して我慢しているんじゃないかとそう思った。

でも、どうする事も出来ない。

蒸し返して、理由を問い詰めて、心にどかどかと入り込んでいくのは優しさでも気遣いでもなんでもない。

それは、ただの自己満足だ。

――自分が一番、理解してる。



私は思考に沈みそうになった意識を引き上げて、ありがとう、と二人に微笑んだ。



100話目突破です。

皆様のおかげです、本当にありがとうございますm--m

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