第2話 増援は……何人来る!?
「わたしは、エクエルです! 司令官様! よ、よろしくお願いします! です!」
整えてはいるものの、汚れた身なりに痩せ細った腕。コケてる頬と血色も青白い――栄養失調手前だな。
「ハンニバル・K・バルカだ。よろしくな」
「は、はい!」
「じゃあ、さっそく司令室に案内してくれ」
「こちらです!」
オレはエクエルの後に続きながら基地内の様子に目を配る。
割れた窓に腐った板の床。それなりの部屋数だが、窓や扉は塞がれ室内でも戦闘を行ったかのような様子だ。門では防がれなかったか。
「……」
出迎えが少女。恐らく軍属じゃない。今も前を歩く度に少しよろけてる。まともに休めてない証拠だ。
「悪くない『課題』だな」
「……あの……わたしは司令官様に変なことをしたでしょうか?」
「うんにゃ。オレの独り言」
このオドオドした様子から、信用されるのも少し手間がかかりそうだ。
「こちらです」
司令室は三階のハズだが、一階の比較的綺麗な部屋に通された。どれどれ……あるのはソファーに棚に机に椅子。ハハハ、どれもボロボロだな。まぁ、他の部屋はもっと酷いんだろうが。
「ありがとよ、エクエル」
「は、はい! それでは失礼――」
「ああ、待ってくれ」
一礼して出ていこうとするエクエルは、オレの制止にビクッと反応する。
「な、何でしょう……?」
「オレが来るまでの責任者はいるか? それか一番年齢の高いヤツを連れてきてくれ」
「え? あ……その……」
「まさか、エクエルが一番年上か?」
「そ、そうじゃないのです! つ、連れてきます! です!」
そう言い残して逃げるように司令室を出て行った。可愛いモンだな。さてオレは――
「一応、備えておくかね」
責任者が中々来ないので部屋を見回ったり、窓を開けたりして気分転換。
とにかく知りたいのはこの基地の状況だ。
何部隊が所属し、隊員は何人居て、どの様に動いているのか。まぁ、エクエルが出迎える時点で基地としては機能してない事は明白だろう。
しかし、エクエルの様な少女が生き延びている事から、少なくとも護ってるヤツは居るはずだ。そいつとなら話が出来るかもしれん。
「水平線を見れるのは役得だな」
師匠と住んでたトコは断崖絶壁だったし、朝日なんて分かれば良い、と言うのが師匠の認識だ。水辺なんて渓谷の下の川くらいで魚を釣るくらいしか以外に近づかんかったし。
「海を利用して色々と出来そう――」
その時、沖合に近い海面が盛り上がると水面から巨大な生物が巨魚を食らい持ち上げていた。
「『海蛇』か。結構デカイな」
この近海の主ってトコか。ハハハ。どうりで船が一隻も出て無いワケだ。
『海蛇』はオレに気づいたのか、視線を向けてくる。そして、そのまま海中へと戻って行った。
アレも早い内に何とかしないとな。
“駄目だよ! 天那!”
“ね、寝てないとダメなのです!”
部屋の外からエクエルともう一人別の声が聞こえる。と、次の瞬間には扉が外から壊れんばかりの勢いで開かれた。いや、ちょっと留め具が飛んだ。
「ハァ……ハァ……」
現れたのは身体に包帯を巻いた隻眼の女だ。息荒く、ふらふらと部屋に入ってくるとそのまま、テーブルに寄りかかる様に項垂れる。
「俺……は……六道……天那だ」
「オレはハンニバル・K・バルカだ。ここの司令官に任命された。報告書は――」
と、説明しながら近づくと、胸ぐらを強く掴まれて勢い良く引き寄せられた。
「何人……だ!?」
至近距離で天那が朦朧とする意識を繋ぎ止める様に必死に叫んでくる。コイツは……
「増援は……何人来る!? 補充要員……は……」
と、それが最後の気力だったのか力を失ってそのまま倒れた。
「天那!」
「天那さん!」
司令室の外から様子を伺っていたエクエルと名前の知らない少女が倒れた天那に駆け寄る。
「ああ……どうしよう」
「もう、お薬もないのです……」
「よっ、オレはハンニバル・K・バルカ。エクエルに似てる君は?」
「あ……す、すみません! サンダーです! サンダー・ファイルです!」
ぴっ、と敬礼の姿勢を取るサンダーとその隣で天那とオレのどっちに対応すれば良いのか分からないエクエル。ハハハ。とりあえず、
「コイツを運ぶわ。どこで寝てたか案内してくれる?」
少女二人では運べない天那を抱え上げる。オレのパワーじゃ、お姫様抱っこなんぞ出来ないので荷物を担ぐ様に首の後ろに回して持ち上げる。
「こっちです!」
「天那さん……」
サンダーが先導し、エクエルはオレの周りをウロウロ。未だ基地の状況は全く解らないが、一つずつ処理していくしか無いねぇ。それに、
「『オーディーン』じゃ、もうやってないんだがな」
『強化兵士』の製造は。




