2話 第一ヒロイン?
入学式から数日が経った。
新しくできた友達? ゼロ。
クラスでの存在感? 空気。
やばい。これはマズい。
何がハーレム計画ノートだよ。
自己紹介でキザなセリフ? 冗談で笑いを取る?
……二年間引きこもってたやつができるわけないだろ!
緊張しすぎてどもりまくりだったわ!
過去の僕は馬鹿なのか? 本当に自分で書いたのか、あの作戦ノート。
いや、最初から分かってたことだ。
コミュ障で、二年間引きこもってた僕が、いきなり「高校デビュー!」なんて無理ゲーだった。
昼休みも一人。
パンをかじりながら、スマホをいじるフリ。
でも耳はしっかり立てて、教室内の情報を収集している。
学校一の美少女は誰か。
どの先生が怖いのか。
誰と誰が同じ中学だったのか。
……すべては、いつか話しかけられたときのために。
けど――現実は、残酷だ。
誰も、僕に話しかけてこない。
僕はいま、完全に “ソロ” である。
……あれ? 僕、ハーレムを作るために高校来たんじゃなかったっけ?
「ハーレムどころか、会話すらしてねえ……」
机に突っ伏しながら、自分にツッコミを入れた、そのとき。
「ねえ、貴方」
……え?
耳元で、澄んだ、それでいて少し冷たい声がした。
ゆっくり顔を上げると、そこにいたのは――
同じクラスの美少女。
黒髪ロングに整った顔立ち。誰もが振り返るレベルの完璧美少女。
財前 美羽
その美少女が、僕の……左手首を見ている?
「それ、オーデマ・ピゲのロイヤルオークでしょ。本物?」
えっ……ああ、これ?
モテるって聞いて、思い切って中古で買った高級腕時計。
ネットで「女子は時計を見る率が高い」って記事を読んで、即ポチったやつだ。
「……あ、うん。た、多分、本物……だと、思う」
「多分ってなによ。自分で買ったんじゃないの?」
「う、うん……ネ、ネットで、ちょっと安いやつを……」
「ふーん。金持ちアピールかと思ったけど、変に正直なのね。意外」
そう言って、彼女はふっと笑った。
なんか……バカにされてる?
いや、ちょっと楽しんでる……?
「貴方、なんか変ね」
その一言を残して、美羽は教室を出ていった。
僕は、ただその背中をぽかんと見送るだけだった。
でも――
高校で初めて、女子と話せた。
それだけで、世界がほんの少しだけ、明るく見えた。
──俺のハーレム計画、第一歩を踏み出した……のか?
第一ヒロイン登場?
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