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嘘は嫌い ロリショタは天使

「嘘は吐かれるの、すっごい嫌なんですよね」

「ンン?どうゆうことだね?」

 ニヤニヤと、明らかにわかっているのに、煽るようにリオルはカミスに訊く。

 リオルのその態度にカミスはイラッとして、一瞬殺してやろうと思ったがどうせ殺しきれないし、我慢しようと思ったが、殺しきれないなら一回ぐらい殺してもいいだろうと考えて、ナイフを首に突き立てて、何も言わずにため息をつく。

 リオルの首からナイフを抜いて、カミスが喋る。

「奪うつもりもないくせに奪うなんて言わないでくださいね。めんどくさいんで。

 呆れた口調でカミスが言って、リオルが「あちゃー、ばれたかー」と言ってリオルは手を頭に乗せ、ぺろっと舌を出す。

 チッ、と舌打ちしてからカミスがリオルに訊く。

「で、女の子は助けて、山賊も殺さないで解決するんですよね?そのための『遅延』ですよね?」

「どーだろぅねぇ〜」

 リオルはカミスを見ながらニヤッと笑って言って、正面を向き、親指と人差し指で円を作って、作った円を覗く。

 視えたのは、逃げていた女の子が男達に襟を掴まれ捕まっているところだった。

 女の子は泣きながら必死に暴れてる。

 やっぱり子供って元気だなぁ

 リオルは呟いた。

 『遅延』の能力を使っているため、今山賊と女の子のいる空間は普段の10分の1の速度で時間が進んでいる。

 子供という単語に、カミスの瞳が一瞬輝いたことにリオルは気付かない。

『感知』の能力にはどこに誰がいるかを知るだけではなく、閣下に伝わってくる音の振動を肌で感じて、相手が何を言っているのかを探る能力もある。そして今リオルは後者を使いながら、今にも走り出して行ってしまいそうなグリムを視線だけで押さえ込む。

「おい、あんま乱暴にすんなー、ボスに殺されるぞ」

「わーってますよー、でもこいつ暴れるんすよ、殴って気絶させてイイっすか?」

 真剣な表情で男の一人が言う。

 女の子は今も必死に抵抗している。

 だが10歳そこそこの子供の力に負けるような賊では無い。女の子にポカポカ殴られながら途中あいたたなど言いながらもあーだこーだ話しながら結局、

 両手を1人、両脚を1人

 賊が掴んで2人がかりで運ぶというものだった。

 今も少女は体を捻ったり、手足をバタつかせて暴れており、山賊は手を離さないことにかなり集中しており、女の子が疲れて動かなくなったところで、

「………………なんでこんな運び方にしたんだよ」

 この運び方を提案した男が、周りの男には聞こえない声で呟いた。

 いやもうほんとそのとおり。なんでそんな面倒な運び方してんのさ。

 僕が呆れていると、「どうしてすぐに助けないんですか?」と、今まで一言として喋らなかったグリムがリオルに訊く。瞳は返答によっては殺すという意思に満ちていて、その殺気に気付いたカミスもにわかに殺気立たせる。

「んー?どーゆーことー?」

「それで誤魔化されるとでも?早く、あなたの意見を聞かせてください」

 グリムが放つ殺気を強め、その殺気に当てられて周囲の獣がその場から離れていく。その殺気に山賊たちにも微かにだが伝わり、何人かが体を震わせて武器を構える。

「ほら、早く答えてください」

「あのさぁ、僕には僕の考えってものがあるんだよ。僕には僕の狙い、計画ってものがあるんだ。だからそのためにこうやって行動しているんだよ」

「チッ!つまり?今助ける気はあるんですか?ないんですか?」

 顔を怒りに歪めながらグリムが訊く。その手には、服の袖の下に隠していた刃渡り5センチほどの唾のないナイフが握られている。

 カミスの手もかなり開かれていて、殺す気まんまんって感じだ。グリムの全肯定botだから仕方ないかぁとリオルは納得する。

「どうなんですか?」

 グリムが再度訊いてくる。

「わかったわかった答えるよ。今助ける気はないよ」

 ビシャ、と

 地面に血が散った。

 身体を関節部分で斬り刻まれ、指や肩からボロボロと落ちる。切り取った頭部をグリムが木に投げつけて走り出す。

 身体が再生してから頭を拾い、綺麗に切断された首につけて、頬をポリポリかく。

「随分と優しいなぁ、君、《ラグナロク》のメンバーなんだろ?そんなに優しくても入れるんだ」

「違いますよ、私が優しくするのは15歳以下の子供だけです」

「あっ・・・・・・ショタコンロリコン疑惑は本当だったのか(ぼそっ)」

「聴こえてますよ、そしてその通りです」


「なんなら語りますが、キリッ」


「自分の口で言うのはどうなんでしょうねー」

 苦笑を浮かべながら、あの子も面白い子を組織に入れたなぁと思いながら『遠見』を使い、山賊たちの様子を見て、グリムに複数の能力を付与する。

 グリムが足音を立てずに山賊のうち、1番油断している男の首を掻き切ろうと背後に近づき、いざ殺そうというところで男がくしゃみをしてナイフは頭髪を少し切るだけに留まり、くしゃみをして背中が丸まり、グリムに勢いよく曲げられた背中がぶつかり、グリムが吹き飛ばされる。

 リオルが走り出そうとするカミスの襟を掴み、カミスにキッと睨まれてリオルの頭部と首が離れる。

 リオルは落ちてきた自分の頭をキャッチして、自分の首を抱えながら、走り出したカミスを追い、ついでにグリムの様子を見る。

 グリムは背後の木に背中をぶつけ、肺の中の空気を出す。山賊からの蹴りを腕を交差させ防ぎながら、我ながら冷静じゃなかったなと反省して、男の蹴りに合わせてナイフを前に出す。

 蹴ってきた男の足にナイフが刺さり、すぐさま仲間が前に出てきて、追撃を防ぐ。

 ナイフが足に刺さった男は仲間から液体型の回復薬をもらい、ナイフを抜いてからゴクゴクと瓶に入ったそれを飲み干す。

 回復していくことを証明する緑色の淡い光が男を数秒間包んでいた。

 その間に、グリムは5センチほどの石を掴みながら立ち上がり、1番近くにいる男に投げつける。

 投げつけた石は狙い違わず男の眉間に飛んでいき、男がそれを右手を前に出すことで防ぐ。そのために、男の右目の視界は自分の腕によって塞がれてしまい、足音立てずに近づいてきていたグリムの接近に直前まで気付けず。足が見えた時にはもう首にナイフは突き立てられていて、そのまま通り抜けざまに首の横を切られながらナイフを抜かれる。

 ナイフは男の頸動脈を切り裂き、傷は気道にまで達していた。完全な致命傷である。

 グリムは13歳の少年である。

 前世は暗殺者である。

 その技術を全て使い、たとえ、目の前で人を殺して、そのことを恐れられ、アリスに離れられたとしても構わない。

 アリスを助ける。

 その意思のもと、それでもアリスの視界に入らないような経路を音も風もなく通り、腰に差していた剣を抜いて振り下ろしてきた攻撃をギリギリ当たらないように躱し、男の足を払い、倒れてきた位置にナイフを振り、男の首を掻き切る。

 男たちが騒いでいるが、今のグリムにその声は届かない。

 完全な集中。

 その視界の中には男たちの身体中にまとわりつきキラキラと輝く細い糸すら見えていた。

 糸の出所を瞬時に探り、そして見つける。

 自分の言ったこと全てを肯定して、一つ何かするごとに褒めてきた女、カミスの指先から糸は出ており、ぎゅっとカミスが拳を握りしめると同時に男たちの指、肘、肩、首、腰、太もも、膝、足首に糸が食い込み、まるで柔らかい物体に刃物を入れたかのような、なんの抵抗感も見せずに糸はするりと肉体から出てくる。そこには、元々何もなかったかのように。

 切断された男たちの体は重力に従ってボトボトと音を立てながら落ち。

 カチッと、スイッチが押された時のような音が自分の中から聞こえた気がした。

「はーい。これで力関係はちゃんとわかったよねぇ?だからおしまいおしまい。ここは僕の顔に免じて引いてくれないか?」

 グリムの前に現れたリオルはニコニコとした笑顔を貼り付けながら言って、それはまるで山賊たちを守るようなそんな態度で。

 その山賊たちも、グリムがカチッという音を自分の体の中から鳴ったように聞こえてからものの数秒で蘇ったのだ。

 しかもただ生き返っただけではなく、グリムもカミスも山賊たちも、動画を逆再生しているかのように動いて生き返ったのだ。

 そして全員その記憶はあるため、夢か何かと一瞬錯覚し、目の前に現れた男を見て全員が納得してしまう。

 こいつがやったんだ、と。

 実際その通りである。

 リオルの使った。もとい、グリムに植え付けていた能力、『逆時』は発言した時から時間を巻き戻し続ける能力であり、リオルはそこに『条件付け』の能力を組み合わせることによって、人を殺してから20秒後に『逆時』が発動し、人を殺す3秒前まで時間が巻き戻るようにしていたのだ。

 だから、まだ誰も死んでいないし、誰も誰かを殺していない。

 そのほかにもリオルは最初の攻撃が必ず失敗する能力『初回不評(ナンセンス)』をグリムにつけていたりもしたのだ。

 そして今はこの場の全員に少しでも恐怖を感じたり、動揺してしまった時体が硬直する能力『役立たずの腰抜け(アンレジスタンス)』を付与しているため、誰も動けず、もし動けたとしても、リオルの使っている見た対象を動けない状態にする能力『観客はカボチャ(ノンリアリティ)』と『両顔』のせいでリオルの話を聞くしかなくなっている。

「まぁ、僕の要求を簡単に率直に言えば、君たちのボスに合わせて欲しいんだ。それ以外はどうでもいいと言っていいくらいだね。あっ、ちゃんと手土産は持ってきてるぜ?僕も伊達に長生きしてるわけじゃないんだ。そうゆう礼儀作法はある程度覚えてる。さぁ、君たちには二択あるよ。この場で僕の前にいる2人に殺されるか。僕たちを君たちのボスの元に案内して交渉に応じるか」

 さぁ、どっちがいいかなぁ?

 リオルの質問に、能力を解除され、喋れるようになった山賊たちが答える。

 すなわち、案内します。と。

「『接続機関(カオス)』」

 とリオルは言って、言った瞬間からリオルの前の空間が裂けていき、裂けた先には洞窟の入り口と、口を開いて間抜けな顔をしている2人の山賊だった。

「あ、どうもどうも、初めまして、僕リオル・クライシスと申しますぅ。あなたたちのボスと交渉をしにきましたぁ」

 ふざけながら友達の家に来たみたいな、まるで緊張感を感じない言葉に、山賊が「はぁ」と言って頷いて、どうするどうすると話し合いを始める。

「あっ、ちなみにぃ、僕たちはあなた方の仲間の命を握ってるのであなた方が仲間も死んでいいと思っているのでしたら構いませんが、そうでないならあなた方に拒否権はございませんよ〜」

 にこやかに言い(脅し)ながらリオルは裂けた空間を超えて警備している男たちに近づいていく。

 突如空間を裂いて現れた男が交渉をしたいと言って(脅して)きて、その後ろから自分の仲間たちが申し訳なさそうにしながらついてきていて、さらにその後ろから殺気を出しまくっている少年、少女と話しながらもこちらを警戒していることが丸わかりな女がついてきている中で、冗談とも思えず、警備をしている男たちは自分たちのアジトを案内する。

「いやぁ、やっぱり親からの虐待、元奴隷等の王国の騎士団がどうもしてくれない状況から助けれてやった人たちの結束力は硬いねぇ。まるでダイヤモンドみたいだねぇ」

 男たちの肩がビクッと震えて、全員の視線がリオルを向く。

「そんなものは関係ない。僕の大切に手を出そうとしたんだから」

 グリムが強くアリスの手を握りながら殺気を込めて言い放つ。

 アリスは、一瞬見知らぬ人を見るかのように怯えて、ぎゅうともう片方の手でグリムの手を握る。

 そのせいでグリムの顔は少し赤くなり、それを見て余裕のあるリオルとカミスはほっこりとする。

 アジトの中を歩いていると、目の前に女性の集団が現れる。

 1番前にいる女性は顔の半分以上が火傷のケロイドで引き攣っている。その女性は腕を胸の前で組んで、高圧的な雰囲気を醸し出している。

「ねぇ、どうしてメンバーじゃない人をここに連れてきたの?なんで?」

「ボスと交渉したいんだと。石はちゃんとある」

「石を渡す交渉なの?」

「さぁ?わかんね」

 コツコツと彼女は近づいてきて、先導してきていた男の頬を張る。

「ふざけたこと言ってんじゃないわよ!ボスを危険に晒す気⁈」

「そんなことないですよー。危険なことは何一つしませんよ〜。多分」

 彼女と男の口論が始まりそうな気配を感じて、リオルが口を挟む。

 彼女の視線がリオルに向き、男に対してはパーだったのにリオルに対してはグーで殴る。

 だが、彼女の拳がリオルに触れた瞬間、女の全身が燃え出し、一呼吸おいて彼女が絶叫する。

 彼女にとって火とは、初めて感じた死であり、いまだに忘れることのできないこと。

 そしてそれが今度は顔だけでなく、全身にあるのだ。

 火が消えて、彼女の叫びが終わっても、彼女の記憶は消えない。

 過呼吸になり、地面に膝をついて、涙も拭わずにいて、そっと優しく頭を撫でられる。

「だいじょーぶだ。お前は死なねぇし。オレが助けてやる」

 そして彼女の所属する山賊のボスは、彼女たちメンバーにとって、ヒーローと同じである。

 その彼女が顔あげると、そこにいた。

 それだけで、心が救われるものだった。

「それで、なんの用だよ。何しにここにきて、なんでオレの女を傷つけた?」

「君の女を傷つけたのは手っ取り早く君を呼ぶため、ここには交渉に来たんだよ。エリナ・クリムゾンちゃん」

 リオルは人好きのする笑顔を浮かべて、そう言った。

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