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第9話 女神様は俺と一緒に遊びたいらしい⑤

「まさか……福岡さんとこんなところに来るとは夢にも思わなかったな」


 俺はそうつぶやく。

 正直なところあまりここに来たくはなかった。

 疲れるんだよなあ。


「そうですか?」


「……そりゃそうだろ。つい、最近まで福岡さんがヲタクだなんて知らなかったんだぞ。むしろ、俺とは生きている世界が違うとまで思ってた」


 彼女は俺に言わせれば、超人だった。

 人付き合いもできて、美人。

 全くもって俺とは似つかない。


「ふふ、それは面白い発想ですね。たしかに陰と陽。真逆ですから、あながち間違いではないかもしれません」


「馬鹿にしてんのか」


「はい!」


「そこはいつもみたいに否定しろよ」


「ふふ、桜木君の反応は見ても飽きないですね」


 俺は現在、アニメイトの目の前に来ていた。

 何故か知らないけど、福岡さんと一緒にだ。


 秋葉原のなかでもそこは一段と人の通行量が激しく、まだ入ってもいないというのにもかかわらず、人で溢れている。

 前にもアニメイトに来たことはあったが、より一層人がいた。土日ということもあるだろう。

 だが、この人の数はヤバいと直感が言っている。

 

「とりあえず、なかに入らないか?」


「……そんなに入りたかったんですか。桜木君はせっかちですね」


「いや、そういうわけじゃないから」


「じゃあ、どういうわけなんです?」


「……外だと福岡さんが注目され過ぎちゃうから」


 周りをみると、ほとんどの人が福岡さんの方を向いている。

 てっきり気づいているかと思ったが、そんなことはなかったらしい。

 やはり、秋葉の住人達にとって、漫画の世界のような美少女は注目されやすいのだ。


 まだ中に入れば、多少マシだろう。

 人も多くて、狭いうえにみんなが求めているものがそこにはあるのだ。

 美人がいるだので気にしていられるはずがない。


「あ~、さっきからなんかいつもより人の視線が多いなあとは思っていたんですよ。こういうところに来るとこうなるんですね。勉強になりました」


「ってことで、いくぞ」


「はい」


 俺たちはアニメイトのなかに入る。

 すると、まず目に飛び込んできたのはガチャだった。

 数段に積み上げられ、いろんなアニメのものがそろっている。


「おお、ガチャポンですね。桜木君はなにかやりたいの、あります?」


「いや、俺はいい」


「なら、私は一回だけやりますね! 前から、これやってみたいと思ってたんですよ」


「……これもやったことないのか?」


「はい、見たことしかなかったです」


 両替してあまりにあまっている100円玉を三枚だし、ガチャを引く。

 なかから緑色のカプセルが出てくる。


「おお、こんな感じになっているんですね。意外と面白いです。もう一回やりたくなりますね」


「それ、沼にハマって抜け出せなくなるから止めておけ」


「? でも、お金ならいくらでもありますし、出せますよ」


 このドがつくほどのお金持ちが!

 

「……で、そういえば、なんでここに来たんだよ。まさかガチャがしたかったとかじゃないよな」


「当たり前じゃないですか。私、メインイベントだって言いましたよね。そんな不純な理由でここに来たわけではありませんから」


「なら、一体、なんの理由があってここに来たんだよ」


「そ、それは……」


 少し間があく。

 なにか聞いちゃいけない質問をしたのかと冷や冷やしていると、


「ひ・み・つです」


「……秘密かよ」


「直にわかりますよ」


 どうやら、いまは教えてくれないらしい。

 少し気になるが、放って置こう。


「それでは、そろそろ次の場所に行きますか。二階に行きましょう!」


 階段を使って二階にあがる。

 ここ、秋葉のアニメイトではエレベーターやエスカレーターではなく、階段を使って移動する。

 その方が効率が良いからだ。


 だが、その分キツイ。

 縦に長いため、階段の量が多く、上がるのだけでも一苦労なのだ。

 いまはまだ大丈夫だが、何回も上り下りすると、運動部にも入っていない俺は間違いなく次の日、筋肉痛になる。それは避けたいところだ。


「ふう、着きましたね。ここには漫画とか小説が置いてあるみたいです」


「ここは飛ばそう。本なんて本屋にいけばいいし」


「とかいって、本当は自分の小説があるかないか探してみたいんじゃないですか?」


 ふふと笑われる。

 完全になめられている。


「……別にそんなことない。ただ単に必要ないと思っただけだ。勝手に理由を想像するなよ」


「強がりなんですね、桜木君は」


「だから違うって!」


 また笑われる。

 やはり、彼女は悪魔だ。

 完璧なる悪魔だ。


「……まあ、ここは私の目的のものではないですし、いいですけど。行きましょう3階に。ここに私が求めているものがあるはずです」


 そう言った。


「3階にあるのか?」


「はい。楽しみです」


 ふ~ん、3階ってことは、なんかのアニメグッズが欲しいのか。

 なんだろう。

 今流行ってる東京リベ〇ジャーズとかスパ〇ファミリーとかかな?

 もしかして……いや、それはないか。


 俺は一瞬あることが頭に浮かんだが、すぐさまそれを否定した。


「わあ……こんなに……あるんですね。少し驚きました」


 そんな事を考えているうちに3階につく。 

 人の目がキラキラと光っている。

 まるで、虎が獲物を見つけた時のような目だ。


「だろ、ここがヲタクたちの楽園だ」

 

 限定商品以外の奴ならば、大体ここにある。

 なんでも買える。


「で、なにが買いたいんだ?」


「少し探さないとわかりませんね。あんまり人気じゃないですし、見つけるのに苦労するかもです」


「そうか」


 すると、福岡さんは動き出した。

 俺もそれについていく。

 

「あ、ありました」


「おお、もう見つかったのか。マニアックな割に簡単に見つかったな」


「まあ、それほどに好きな奴なので」


 出て来た商品を見て、俺は驚く。

 なぜなら……それは……


「忍者カゲロウの……フィギア!?」


 ありえないと否定したはずの俺の作品だった。

 たった一つ。

 人気作品ではないから一つしか出せなかった俺のフィギアがそこにはあった。


「メインイベントはこれなんです。私、これを今日は買いに来たんですよ。ネットでも良かったんですけど、味気ないと思って。そんなとき、作者が桜木君だってしって、ならちょうどいいかなってことで誘ったんですよ」


「ま、まじかよ……」


「あれ……なんで、そんなに驚いているんですか。私、ファンだって言っていましたし、察してもおかしくないと思うんですけどね」


「だって……俺のファンっていっても……そんなの買うなんて思わなくて……」


 信じられない。


「私、サイン会の時に言いましたよね。この作品には色々と助けてもらったんだって。詳しくは言えないんですけど、あの時辛くて、辛くて、死にたいなんて思っていた時。たまたま本屋でこんなバカげた名前の本を見つけて、読んでみたんです。そしたら面白くて、いつの間にファンになっていたんですよ」


 笑いながらいってくる。 

 

「だから、ありがとうございます。助けてくれて」


 たった一言。

 その一言を言われた瞬間、胸になにかガツンと来るものがあった。

 いままで、この作品に向けて来た苦労とか努力とかが全部こぞって認められた気がした。

 嬉しかった。


「……早くお会計しましょう。ここにいたら邪魔になってしまいますし」


「あ、あ、ああ……そうだな。買うか」


 俺たちは会計のところに行く。

 その日はそうして、帰った。

 電車のなかでの会話はおぼろげにしか覚えていないけれど、その日の思い出は一生忘れないだろうと俺は感じた。

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