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第8話 女神様は俺と一緒に遊びたいらしい④

「昼ご飯の場所ってここかよ……」


 俺は緊張交じりに言う。

 肩はいつもよりも上がりっぱなしで、体が少し震えていた。


「はい、ダメでしたか?」


「ダメってわけじゃないけど……これは……」


 俺はそわそわとしながら、周りを見る。

 すると、一人と目線が合う。

 そして、こちらに向かってきた。

 

「どうかしましたか?」


 その後に一言。


「ご主人様!」


「…………いや、大丈夫です」


 そういうと、そうですか、失礼しましたといって去って行った。


「おお、いまのが生ご主人様ですか! いいですね!」


「……なに嬉しそうにしてんだ」


「だって嬉しいじゃないですか。メイドさんの生ご主人様ですよ!」


 そう、俺たちはいま、メイド喫茶にいるのだ。

 数人のメイドが俺たちの注文を受けて、メッセージをかいたり、言葉を言ってくれたりするあのメイド喫茶だ。

 

 発端はもちろん福岡さんだ。

 いきなり、昼ご飯を食べようといいだして、ついていってみたらここだった。

 入ったら、席に案内されて、とてもじゃないが、帰れるような感じではない。

 人生でこんなところ初めて、入った。


「大体、なんでメイド喫茶なんだよ。他にも色々あるだろ、飯屋くらい」


「いいじゃないですか、可愛いですし。癒されますよね」


「そういう問題じゃない。俺はたしかにメイドが好きだけど、現実でやられると困るんだよ」


「困る?」


 はぁ……と小さくため息をつき、説明する。


「……福岡さんみたいな女の子はいいかもしれないけどな、俺みたいな男にとって、メイド喫茶ってのはちょっと恥ずかしいんだよ。気恥ずかしいって奴かな。だから、あんまり入りたくないんだ。入れる人は常連さんか、恥ずかしさを捨てたヲタクだけだ」


 そもそも入ってるって考えるだけで恥ずかしい。

 もし友達とかに一人で行ったことあるぜ!なんて言う奴がいたら表彰ものだと思う。

 正直、いますぐにでもここから出たい。


「桜木君って、そうやって、言い訳ばっかりならべて生きずらそうですね。別にいいじゃないですか。楽しんだもの勝ちですよ!」


「おい、俺をいきなりディスるなよ。傷つくだろ」


「別にディスるつもりはありませんでした。ただ本音が漏れてしまって……」


「それそっちの方が酷くね」


「ふふ、冗談です」


「冗談にしては重いわ」


「まあ、それはいいとして、なに食べます? 私、このメロメロハンバーグとデザートにふわふわパンケーキ頼むつもりなんですけど」


「……いや、俺他の所で食べたいんだけど……」


 そういうと、福岡さんがすかさず、


「すいませ〜ん、注文したいんですけどいいですか~」


「俺の話聞いてる!?」


「話が長くなりそうだなあと思って」


 ダメだ。こいつ、全く聞く気がない。


 福岡さんは俺のことなんてお構いなしに店員を呼ぶ。

 これとこれくださいといい、俺にメニュー表を渡しながら、桜木君はどうしますか?と言ってくる。

 どうやら、もうここから逃げることはできないらしい。 

 俺はオムライスを頼んだ。


「これでご注文は以上ですね。オムライスのご主人様には後で私たちメイドが掛け声をかけながらメッセージを書きにくるので楽しみにしておいてください!」


「ん? え……」


 困惑する。

 いま、この人なんて言った?

 メッセージ? なにそれ?


「では、私はこれで」


 メイドが颯爽といなくなる。

 俺はそんななか青ざめ始める。

 

「よかったですね、まさかハードルの高いメッセージ付きのニコニコオムライスを頼むとは、桜木君は凄いですね。私も頼めばよかったです」


「これで褒められても嬉しくないんだけど……」


 いきなりメニュー表を渡されたから、ちゃんと見ていなかった。

 それがメッセージ付きだったなんて……

 まあ、いいか。福岡さんも楽しんだもん勝ちって言ってたし。

 その通りだよな。俺もメイドは嫌いじゃないし。むしろ好きな方だし。


 適当な雑談をしながら、待っているとお待ちかねのお料理が出てくる。

 もちろん、ここはメイド喫茶。

 そこまでいい料理が出てくるはずもなく。

 頑張って作ったって感じのオムライスだった。


「それでは、行きますね」


 メイドさんがケチャップを持ち、オムライスの前に立つ。

 そして言った。


「美味しくなあ~れ。美味しくなあ~れ」


 ケチャップでご主人様の文字が浮かび上がる。

 ちらりとメニュー表を見てみると、名前を言えば、名前でやってもらえるらしいが、流石に俺にそこまでの勇気は出なかった。


「ほ~ら、美味しくなりましたよ。ご主人様!」


「あ、ありがとうございます」


 オムライスを俺の方に出される。


「美味しく食べてください、ね!」


 最後にウィンクをしてどこかに行ってしまった。

 俺はそれをみて一息つく。

 

 いやあ、恥ずかしかった。

 ていうか、周りの人俺の方に向きすぎだろ。

 たしかに俺も近くでこんなことやってたら気になってみるけどさ!

 ……見ちゃうのかよ。じゃあ、仕方ない!


 でも、思ってたより良かったな。

 終わってみたら全然だ。

 メイドさんは……可愛かったし。


 そんな事を考えていると、福岡さんがオムライスを羨ましそうに見ていた。

 

「……私もそのオムライス一口食べてもいいですか? 私のハンバーグも一口上げるので」


「ああ、いいよ。ほら」


 皿を交換する。

 ハンバーグを食べてみると、なかから肉汁がぶわっと出てくる。

 意外と美味しかった。

 

 福岡さんはそれはそれは本当に美味しそうに食べていた。

 ハンバーグの方もそんなにか?と思うくらいな感じだった。

 頬っぺたをぷにぷにに膨らませ、ニコニコとしている。

 まるで小動物のようで、可愛いと思ってしまうほどだ。

 ずっと見つめていると好きになってしまいそうになる。


 俺は少し目を離し、オムライスを一口食べる。


「……美味しい」


 もう一口、もう一口と食べる。

 そして、いつの間にか食べ終わっていた。


「はぁ……美味しかったです。私、こういうところ初めて来たので、余計に美味しく感じたのかもです」


「そうか、初めてだったのか」

 

 相当お嬢さまっぽいし、そうなんだろう。


「ふふ、お昼ご飯も食べ終わったのでそれでは、そろそろ行きますかメインイベント」

 

「行くってどこに?」


「秋葉原といったらあそこじゃないですか」


 含み笑いを浮かべる。


「あそこ……?」


 俺は頭を働かせて、一つの場所を思い浮かべる。

 まさか……


「アニメイトか!?」


「当たりですよ。いまから最後にアニメイトに行きます!」


 ヲタクの聖地。

 アニメイトに行くらしい。

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