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第4話 どうやらこの悪魔な女神様は俺のファンらしい

「いやあ、本当に驚いたよ。桜木先生の知り合いがここに来るなんて」


「篠崎さん、知り合いっていうか……クラスメイトです」


「クラスメイトも知り合いのうちだよ。向こうも先生の名前も知っているようだし、話したことくらいはあるんじゃないのか?」


「いやないです」


「そうか。……うん、でも、よかったじゃないか。桜木先生は友達がいなそうな感じがしてたまらなかったから一人でもいたことに私はおおいに安心したよ」


「だから友達じゃないです。あと、ついでに俺をディスるのやめてくれませんかね!?」


「冗談さ。本気じゃないよ。私が意味もなく人を貶すわけがないじゃないか」


 篠崎さんに笑顔でそんな事を言われる。

 いつものトーンからふざけて言っていることはわかった。


 どうやらこんな堅苦しい篠崎さんも冗談を言うらしい。

 まあ、言ってたことはほとんど冗談じゃないけど。

 事実なんですけど。

 胸辺りにグサッとナイフが刺さった感じがした。


 まあ、それはそれとして。サイン会は無事に終わった。

 時間にして約一時間。

 それくらいの時間、俺のサインのために並んでいる人がいてくれたらしい。

 

 こうしていまは反省会兼お祝い会みたいなものをしている最中だった。


「あの……先ほどからですけど、二人だけの世界に入らないでもらえますか? 一応、私もここに居るので……忘れないでほしいです」

 

 もちろん、彼女――福岡さんも一緒に。

 学校とは違い、ひらひらとしたワンピースを着ている。

 まさに女神って感じだった。

 見た目だけは本当に美しくてほれぼれする。

 俺でさえ、あいつのように恋の病にかかりそうになる。危ない危ない。

 

「ああ、ごめんごめん。つい熱くなってしまったようだ。たしか……福岡さんだったかな。サイン会が終わるまで待たせてしまって申し訳ないよ」


「全然大丈夫です。待つの苦手じゃなかったので。それに、私の方が残りたかったんですよ」


 福岡さんにはあの場で話すと後ろに迷惑がかかるということで店の後ろの方で待っていてもらっていた。


「……名前は正確にいうと、福岡咲っていいます。咲でいいです」


「咲さんか……それで、桜木先生とはどんな関係なんだ?」


 だからクラスメイトだって言ってんじゃん。


「……ああ。ここにいる学校じゃほとんど話さないし、存在感も薄い陰キャラの桜木君とはクラスメイトの仲です」


「え、なんで俺話したことない奴にいきなりディスられてんの? そういうゲームなの?」


「ふふ、冗談ですよ。本気で思っているわけないじゃないですか。私はそんなことw思ってませんよ」


 ニコッと急に笑顔になる。

 笑顔からはなにやら狂気的なものが読み取れた。


 いや、こえぇよ。

 全然冗談に思えないわ!

 全く話したことないから距離感つかめないし、篠崎さんと違ってめちゃくちゃメンタルキツイじゃん。学校でのこと正解だったな……

 もう小悪魔っていうか、本当の悪魔だろこれ。

 普通にしていたらかわいいのに、もったいなさすぎる。


 そんな事を考えていると、福岡さんが言う。


「はぁ……正直、こんな近くにこの小説の作者がいたなんて驚きでした。ネットでも、顔は載っていなかったし、どんな人かなって思っていたら……まさか桜木君だったなんて……もっとおじさん的なのを想像してました」


「まあ、桜木先生みたいな高校生作家は非常に稀だ。普通に考えれば、桜木先生がちょっと特殊過ぎる。ほとんどが30~40歳を超えたおじさんおばさん世代だよ」


「でも、こんな近くにいるなんて……夢にも思わなかったです」


 酷く驚愕した様子だった。

 別に隠しているというわけではないのだが、ほんの数人にしか自分が小説家だってことは言っていない。

 だからいくらファンでも俺の素性までは知らないのは当然のこと。

 だけど、どうしてそこまで俺の事を知りたがっているんだろう。

 全くわからない。


「あ、あの桜木君。さっきは毒舌吐いちゃいましたけど、私ちゃんとあなたのファンなんですよ。第一巻はもう30回は読み直しましたし、こないだようやく出た待望の最新刊も何回も読み直したんです」


「は、はぁ……あ、ありがとうございます」


 さっきとは違い、目をキラキラに光らせながらこっちに段々と近づいてくる。


「だけど、もうあの作品は終わりだっていうし。続編は……作る気はないんですか?」


「……ないよ。アイツらの物語はこれで完璧に終わったんだ。だから、これ以上書く気はないし、書くこともないよ」


「そう……ですか」


 残念そうに俯く。まるで魂が抜けてしまった空っぽのように、ふんわりとした感じになる。

 俺だって、自分の好きだった作品が終わってしまったら虚しく、喪失感が物凄く湧く。だからこそ、福岡さんに共感できた。

 そして、俺の作品を好きでいてくれているということが容易に伝わってくる。

 それが素直に嬉しかった。


「へぇ~咲さんはそこまで桜木先生のファンだったのか。私も意外性を感じずにはいられないよ。サイン会を開いておいてあれだが、そんなに熱狂的な人がいるとは思わなかった」


「まあ、それほど……好きなので」


 嬉しい。

 ……ってそういえば、最初に話した時、福岡さんがなんか言ってたな。

 たしか……


「……なあ、福岡さん。さっき言ってた俺の作品が福岡さんを助けたってどういう意味なんだ?」


「!? え、えっと……そ、それは……」


 少し困った感じの表情になる。

 なにかやらかしてしまった感じがしてならない。

 

「ああ、いや。言いたくないなら別に言わなくてもいいんだけど……」


「あ……はい。ごめんなさい。詳しくは言いたくないです」


「そ、そうか。ならいいんだけど」


「……」


「……」


「「…………」」

 

 気まずい。

 なんで変なこと聞いちゃったんだろう。

 最悪だ。俺にこの雰囲気をどうにかできるわけがない。


「ごほん、じゃあ、これにて今日は解散にしよう。桜木先生と咲さん気を付けて帰ってくれよ。私は片付けがあるから、もう行くとするよ」


 そういって、篠崎さんは一目散にその場から逃げていく。

 俺はそのことに絶望を感じざるを得なかった。


「桜木君」


「え、は、はい!」


 福岡さんはなにかを決心した形相で俺を見る。 

 なにを言われるのだろうかと心配しながら待っていると。


「……明日、遊びに出かけませんか?」


「……………………え?」


 こうして初めて、女の子との遊びにいく約束をしたのだった。

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