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第2話 え? 俺みたいな作家がサイン会なんか開いてもいいんですか!

「はぁ……やっと終わった……」


 学校はいつも通りあっけなく終了した。

 ほとんどの授業を睡眠で溶かしたのだ。

 

 本当にいまさらだが、なんのために学校に行っているのか全く分からない。 

 部活も友達もいないし。

 これなら、家で小説書いていた方がいい気がしてきた。

 むしろ、そっちの方がいい!


「……まあいいか。早く帰ろ」


 学校に残るのは大体彼女持ちか部活に行く陽キャばかり。

 悲しいことに俺のような陰キャは早く帰らないと、あれなんでこいつまだいるの?状態になりかねない。

 出来るだけ早く行こう。


「お、もう流星は帰んのか」


「あ……うん」


「気をつけろよ」


「……ありがと。お前もな」


「おうよ! 今度、一緒に飯にでも行こうな!」


 こいつほんと、いい奴なんだよなあ。

 これだから陽キャは憎めないくせに、妬ましい。


 俺はそんな事を思いながら教室を出る。

 すると、スマホにがぷるぷると震えだした。

 メールだ。それも編集さんからの。


「なんだろう……こんな時間に……原稿が出来上がったからとか?」


 俺は不思議に思いながら、そのメールの内容をみる。

 そのメールにはこう書かれてあった。


『桜木先生、まずは仕事お疲れ様。最終巻、凄く良かったよ。これなら出版できそうだ』


 その文をみて、安心感を覚える。

 その下には、


『そんななか悪いのだけれど、今日こっちに来てもらえるか? 大事な案件があるんだ。メールで話すと長文になってしまうから、お願いするよ。あと、できるだけ早く来てほしいな。あまり遅いと残業しなくちゃいけなくなってしまうからね。それは勘弁だよ(笑)』


 なにこの雑な文章。これ、仕事でする文章じゃないよねっていうのはおいておいて。

 毎度のことだけど、この人自分勝手すぎないか!?

 しかも学校終わってすぐ直行とか……最悪なんだよなあ。

 会ったら、絶対文句言ってやる……


「でもまあ……それでも行くのが俺のいいところなんだけど」


 本来ならば、家に帰る所だが、早く来てほしいとのことだったので、逆方向である駅に向かう。

 新宿行のホームで電車をいまかいまかと待っていると、反対方向のホームに、


「あれ……福岡さん?」


 福岡さんらしき人物を見つける。

 他の人のようなモブと違い、異様なまでのオーラを放っていて、わかりやすい。

 あれは間違いなく、福岡さんだった。


 ふ~ん、福岡さんって一人で帰ってるんだ。初めて知った。

 俺はてっきり、友達の一人や二人連れて、一緒に帰るのかと思ってた。

 まあ、今日がたまたまかもしれないけど。


「ん? あれは……」


 福岡さんが持っていた鞄が太陽に当てられてぴかりと光る。

 まるで、ストラップがついているような……


「って、あれ完全にストラップだ。ああいうの、福岡さんもつけるんだな。しかも俺のキャラに似てる気がする……」

 

 茶髪で剣を持っている所とか俺の作品のキャラ、ファクトどことなく似ている気がする。ていうか、そっくりだ。

 いや、ま、まさかな……


 目を凝らしてよく見る。

 しかし、距離が離れていて、よく見えない。


「まあ……そんなわけないか」


 そうつぶやいた瞬間、電車が来る。

 それに乗り、約1時間ほどかけ、新宿へ行く。

 新宿は地下迷路のようにくねくねしていてわかりづらい。

 いつもここに来るときはグー〇ルマップを使わないと行く方角がわからないほどだ。

 

 そこから10分ほど歩くと、ビルが見える。

 ここが俺の小説を編集している場所だ。

 入り、エレベーターを使って3階に上がると、


「待っていたよ、桜木先生」


「……」

 

 満面の笑みで手を振ってくる女性がいた。

 彼女が俺の担当編集である、篠崎香織しのざきかおりだ。


 ボブの黒髪にキランと光る赤色のピアス。

 シマシマのおしゃれっぽい服を着ている。


 俺のことを先生などと呼んではいるが、彼女の言葉遣いや仕草はまるで先生のようだ。


「ほら、こっちに来てくれたまえ」


「あ、はい……」


 篠崎さんに案内され、小さな部屋に入る。

 周り一帯白色の壁で埋め尽くされ、細長い机と向かい合わせの椅子が2つある。

 俺と篠崎さんはそこに座った。

 ここは、いつも打ち合わせする時、入る部屋だった。


「意外と早かったなあ。びっくりしたよ」


「……言われてすぐに来ましたから」


「そうかそうか、それはありがたいなあ」


「ありがたいなあ……じゃないですよ。なんですか、このメールは。俺、これでも一応は高校生なんです。もう少し前に言ってもらわないと……準備が……」


「でも、たしか部活入っていなかったはずじゃなかったか。なら、問題はないだろう。小説も完成したんだしさ」


「たしかにそうですけど、急に呼び出されるとこっちも、こっちで大変なんですよ!」


「はいはい、わかったから」


 この人、ちゃんとわかってるのかな。

 ……いや、多分わかってないよな。

 だって、さっきからずっとにこにこしてて話聞いてなさそうだし!


「それで……本題だが……」


「え、俺の話……」


「本題だが……」


「……」


「よろしい」


 にこりと少しこわばった笑顔に恐怖が湧く。

 逆らったら、なにをされるのかわからない。

 なにもいえるはずもなく、完全に話をなかったことにされてしまった。

 くそ、悔しい。けど、仕方ない。


「それで本題だが、今日呼び出したのは他でもない。これからの予定だよ」


「予定……? あとは本を出すだけじゃないんですか?」


「そんなわけなかろう。これから、SSを出すのかとか、グッズ展開とか、あとは最後だしポスターを出すかもしれないからイラストどうするとか、他にも考えればたくさんある」


「な、なるほど……」


 意外と忙しくなりそう。

 てっきり、終わったからもう君は用済みだよ。解雇さ。さっさと出て行ってくれ。とか、言われるのかと思ってた。

 これなら、まだ少しだけ大丈夫そうだ。


「で、そのなかでも今日やるかどうか決める議題がある」


「へぇ……どんなのです?」


「サイン会だ」


「サイン会ですか……え? サイン会!?」


 あまりの驚きに椅子から立ち上がってしまう。


 サイン会ってあのサイン会のことだよな!?

 たしか、有名人とかが本とかグッズを買わせてそこにサインを書くっていう作家なら誰もが憧れるあの! 行事だよな!?

 ……俺別に有名人じゃないし、誰も来ないんじゃ……それにサインなんて全く作ってないし……


「俺なんかで大丈夫かって思い詰めた顔をしているようだな。そんなに深く考える必要はないよ」


「そう言いますけど、サイン会って俺みたいな作家が開いていいものじゃないでしょ。もっとなんて言うんですかね、売れっ子とかがやるべきで……」


「そんなことはない。桜木先生はもう立派な作家だよ。だって、一つの作品を終わらせることができたのだから。そんなのは一握りの作家しかいない。ほとんどは終わらせる前にどこかで躓く。そこを突破できたのなら誇ってもいい」


 真顔でそんな事を言ってくる。

 なんなんだよ、この人。

 いつもは変なことばかりしているくせに肝心な時はちゃんとして。

 めちゃくちゃな人だな。


「それに今回の件は私自らが持ち込んだ話でな。せっかく、人生初完結までいったんだ。それくらいのご褒美は上げてもいいと私は思う」


「え、……篠崎さん自らですか!?」


「苦労したんだぞ。上の人納得させるの。本来ならグッズの売り出しとか他の作品とかのことをやれと言われていてね、でもなんとか黙らせたよ」


 黙らせたって……少し怖いよ!?


「と、いうわけで、今週の土曜日、つまり3日後に小さな新宿の店でサイン会をやることにしたから、楽しみにしていてくれたまえ!」


 右手の親指を立て、キリっとした笑顔になる。

 綺麗だ。


「は、はい」


 俺はそう返事をした。

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