新しい同居人
優斗の隣には、見覚えのある銀髪ショートの猫耳少女と、その少女を守るように立っている夜色ロングの狼耳の少女がいた。
どっちも俺の知り合いだ。猫耳の方がクラロで、狼耳の方がルマ。因みにルマ曰くルマはクラロのシモベらしい。
二人の性格は、クラロは純粋無垢で遊び好き。ルマはクラロバカで面倒見が良くクールだ。結構真面目だと思う。
ルマに関しては、クラロを傷つけた日には傷をつけた奴は肉片すら残さずこの世を去る事になる。それぐらいルマはクラロの事を愛しているし、重度のクラロバカだ。
クラロは、戦闘が遊びの戦闘狂だ。……まあ、もっとヤベェ戦闘狂がクラロの中にいるが……今は寝ているみてぇだから、また起きた時にでも説明しよう。……話を戻そう。さっきクラロは戦闘が遊びだと言ったが、勝ち負けというより、戦闘を楽しむ事をモットーに戦っている感じだ。戦う相手を“オモチャ”と呼び、壊れるまでそいつで遊ぶ。あ、壊れるっつーのはこの世を去るって事だ。オモチャは遊んでいればいつか壊れるだろ?クラロ的には戦闘相手はそんな感じの扱いらしいな。
優斗も無事に生還したみたいだ。怪我をしている様子もねぇし、成功したみてぇだな。
俺は優斗がクラロとルマ確保の応援に出向く事になった時、俺の姿をさせたのだ。勿論、クラロとルマ限定でそう見えるようにしてな。所謂幻覚の類だ。その状態で、俺は優斗にこう話せと言ったんだ。「クラロ、ルマ、久しぶりだな。俺は今はクラロにとってのオモチャが沢山あるところにいるんだが、来るか?」とな。んで、クラロが興味を示したら、SCPー682――不死身のトカゲとクラロを合わせるのと引き換えに、抵抗も攻撃もせず大人しくついてくると言う条件を出せと言ったんだ。
優斗のやつを死なせたかねかったからな。
そして、優斗は俺に言われた通りにしたようだ。
無事にクラロ達を確保して、こうして生還しクラロ達を収容室へと連れて来た。
正直、優斗のやつはクラロ達を見たらビビって死んじまうだろうと思っていたから、素直にスゲェなと思った。
優斗の事を考えていたら、優斗が口を開く。
「ふう……着いたぞ。ここが今日から君達の家になる部屋だ」
そう言って優斗は俺がいる部屋を指し示し、続ける。
「先客としてSCPー19005がいるが、喧嘩せず仲良くしろよ」
そう言って優斗は俺に近づき、俺の耳元で小さく言葉を発する。
「ありがとうな、19005。お陰で生還できた」
「……何、お前にちょっとばかし愛着が湧いただけだ」
俺は照れつつ、そう言った。
すると優斗は俺に対して優しく笑い……小さく、言った。驚きの言葉をな。
「まさか悪魔が人間に対して愛着を持つなんて……それに、悪魔の割には優しいし、全然悪魔っぽくないね、19005って」
優斗は知っていたらしい。俺が悪魔であると言うことが。
……だが。俺は人間に自分の種族を知らずに知られていたと言うのに、少しだけ、嬉しいような気がした。
……いつもは、俺が悪魔であると明かすと、人間達は俺を恐れて近づかなくなる。俺は魔界では魔王もやっているし、悪魔の間では知らないやつはいないぐらいに有名だ。不本意だが恐怖の象徴になっていたりもする。そのせいか俺は中々会話できる相手がいなかった。そんな中、クラロとルマだけは、俺を恐れずに仲良くしてくれた。
俺は多分……すごく嬉しかったのだ。俺が悪魔であると分かっているのに、恐れずにいる人間が。悪魔である俺と関わってくれる人間がいることが、嬉しかったのだ。……だから、愛着なんて言う、悪魔とは縁遠いものも湧いたんだろう。
「うるせぇな……お前が言う通り俺は悪魔だ。……だが、俺を恐れない人間は、優斗。テメェが初めてだよ」
そう言った俺の顔は、緩んでいるような……そんな気がした。
「本当に悪魔だったんだ……まあ、種族がなんであろうと、僕は君の専属職員だ。恐れていたら、専属職員なんかやっていけないよ」
優斗は、俺が悪魔だと言ったことに驚きつつも、優しい笑顔で、そう言ってくれた。
「ねぇ、19005」
「……なんだよ?」
「君の、名前を教えてくれない?……実は、オブジェクト番号付けたの僕なんだ。190で、悪魔。05は凰牙。けど、凰牙って言うのは、僕が勝手に付けた君の愛称だけどね。あの時点じゃ、君の本当の名前は分からないから」
「……俺の名前、お前が付けた愛称と一緒だよ」
「……え?」
俺がそう言ったら、優斗は素っ頓狂な声を出して、フリーズしちまった。
「俺は夜月凰牙……悪魔であり、吸血鬼でもある存在だ。……よろしくな、優斗」
「あ、ああ……よろしく……」
俺らがそうして話していると、クラロ達の方から肉が切れ血が出る生々しい音が聞こえて来た。見れば、そこにはオレンジ色の服を着た人間が、瀕死の状態で倒れていた。
その瀕死の人間を見ながら、クラロは言う。
「幻覚凰牙が言ってた通り、確かにここはオモチャがいっぱいあるね」
そう言ったクラロの顔には笑みが浮かんでいて。その笑みは差し詰め“暗黒笑み”とでも呼称するとしよう。
俺は思わず頭を抱えて、呟く。
「はぁ……これから毎日何人の人間が壊れていくのやら……」
「そうだな……まあ、仲良くやれよ、凰牙」
俺の呟きに反応したらしい優斗が、それだけ言って逃げるように収容室を出ていき、収容室の扉を閉めた。
俺はやれやれと、肩をすくめて苦笑する。
まさか、クラロ達と一緒に生活する時が来るとはな……クラロ達の扱いはレイルの方が慣れているから、連絡する頻度が極端に増えそうだな。
……その内、レイルのやつもこの部屋に収容されたりしてな。……なーんて、魔法特化のアイツに限ってそれはねぇよな。
これからクラロ達と生活か……久しぶりに、人間の血や魂を喰らうのもアリだな……。
こうして、俺はクラロとルマと一緒に生活する事になった。
今回はちょっといつもより短めです。(と言っても、約2,500文字あるんですけどね。普段は3,000字前後ですね)
今回から新キャラ登場です。二人とも筆者好みのry。
良ければ感想や評価、ブックマーク登録などお願いします。(全部一件もないのは寂しいしモチベが下がる……)
よろしければ次のお話も読んでいってくださると嬉しいです。
次はどのSCPを登場させようかな……((収容違反させる前提