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悪魔吸血鬼のSCP生活録  作者: 零央
第一章ーSCP収容所へようこそ!
1/7

収容所へようこそ

 俺は夜月凰牙(よづき おうが)。悪魔吸血鬼だ。ま、この名前は人間界用だがな。それと、吸血鬼は後天性だ。

 俺は今人間の町にいる。意外と人間の町は居心地が良いものだ。

 人間界も昔に比べちゃ随分と発展して、最近はエーアイ……だっけか?結構高等技術を使えるようになってきているらしいな。

 そうして俺が人間の町を見ていると……突如、背後に気配を感じた。それと同時に首の辺りに何か針のようなものが刺された感覚があり、その針から液体が俺の中に入れられていく……。

 入れられた液体の影響なのか、段々と眠気が出てきて、意識も朦朧としてきた。

 背後に感じた気配は……人間、だった。まさか人間に不覚を……取るなんて、な……。


「こちら■■■。東京都A区画にてSCPを発見、SCPを保護しました。これより収容所へ護送します」


 朦朧とした意識の中、若い男性だろうか?人間のそんな言葉が聞こえてきた。

 SCP?収容所へ護送?……俺は、一体……

 そこまで考えて、俺の意識は途切れた。




 「ん……うぅん?」

 俺は目が覚めた。周りを見ると、質素な装飾がされている空間が広がっていた。どうやら何処かの部屋らしい。

 狭くもなく広くもない部屋にあるベッドに、俺は寝ていたようだ。

 扉は閉まっている。扉の右隣に何かを差し込む機械が付いているので、何かを機械に差し込んで扉を開けるのだろう……とか考えていたら、扉が開かれ、全身白色の服を着た人間が入ってきた。その人間の気配が、俺が意識を失う前に感じた人間と同じだった。

 俺は入ってきた人間を睨む。

 すると、人間は困ったように肩を竦めて、言った。


「睨んでくれるな。仕事だから仕方がなかったんだよ」


 仕事?そう言えば最近魔界の奴らが人間界に行ったっきり一部行方不明になっているとか、いないとかって、魔王間での近況報告で言ってたな……。悪魔の中でも噂にはなっていたが……まさか、俺自身がそうなるとはな……。


「んで、ここは何処なんだよ?」


 俺は部屋の中をぐるっと見て、人間に視線を固定し、聞いた。


「ここはSCP財団研究所収容施設の僕の部屋だよ」

「SCP……?」

「SCPって言うのは、自然法則に反した異常な存在、場所、物体、現象の事を指すよ。SCP財団って言うのは、それらSCPを保護・収容・研究する事が仕事の組織だ」

「ほぉーん、おもしれぇ施設だな」


 ぜってぇ魔界の奴らが行方不明になってんのそのSCP財団とか言う組織のせいだな。

 魔界の奴ら、自然法則に反しまくってるからな……俺もそうなんだが。

 それで、と人間は言葉を口にし、続ける。


「……ちょっと着いてきてもらうよ。君は生命活動を行っているし、知性も自立性もあるからとりあえずEuclid(ユークリッド)だね」


 Euclid?意味が分からん……が、俺は言われた通り人間に着いていく。

 歩いていると、人間が話し始めた。


「ああ……そう言えば収容難易度について、話してなかったね」

「収容難易度?」

「収容難易度は主に三つ。

 一つ目、現時点で収容方法が確立されている、安全か分かっているか、中々活発化しないSCPにつくランクsafe(セーフ)。基本的にこのランクのSCPは安全だ。

 二つ目、性質が十分に解明されていないSCPにつくランクEuclid(ユークリッド)。このランクのSCPは分かっていないことも多くて、安全とは言い難いね。後、自立性を持つもの、生命を持つもの、知性を持つものはほとんどの場合最低でもこのランクに指定されるよ。

 三つ目、完全なる人類の敵・確実に収容するのが困難、もしくは不可能なSCPにつくランクKeter(キーター/ケテル)。このランクのSCPは非常に危険さ。外に出したら世界が終わる「特別収容プロトコル世界終焉シナリオ」に指定されているヤツもいる。このランクのSCPに遭遇したら、基本命は無いね。

 ……あ、話してたら着いたみたいだ。」


 人間はそう言って、オレンジ色のカードキー?のようなものを扉の横の機械に上から下に差し込んで、扉を開ける。扉の先はいくつか道が枝分かれしていたが、人間は正面の道を歩いたので、俺も着いていく。

 着いていくと、また扉が現れた。その扉は閉まっていて、とても開きそうになかった。すると、人間はこう言った。


「この中に入ってくれ、方法はなんでも良いさ」


 と。

 何でも良いと言われたので、俺は自身の身体を霊体化させて扉をすり抜け、部屋に入ると同時に霊体化を解除した。すると、ガチャン!と言う音が、俺がすり抜けた扉の先から聞こえてきた。

 何が起きたんだと、魔力感知と言う周囲を感知できるスキルですり抜けた扉の先を見ると、すり抜けた扉と同じような扉が、少し間を開けて現れていた。

 ……閉じ込められたのだと、俺はすぐに理解した。

 俺は、人間が狡賢い(ずるがしこい)生き物である事、頭が良く回る生き物である事を、かんっぜんに忘れていた。

 試しにもう一度霊体化し、扉をすり抜けてみようとするが……


ビリビリビリッ


 と、触れた部分に電気が流れ、痛みとか何もなく通り抜けていった。まあ霊体化しているのだから当たり前だが。

 そうして、俺が現状を確認していると、何処からか俺を閉じ込めた人間の声が聞こえて来た。


「あー……あー……聞こえているかい?」

「……聞こえてはいるぞ……つか、音デケェからもうちょい小さくしろ」

「……!それはすまない。このくらいでいいか?」

「ああ。で、何の用だよ?」

「いや何、ただの報告さ。君はSCPに指定されて保護された。そしてEuclidに指定され、今収容された。そう言えば、僕は君に名前を名乗っていなかったね。僕は優斗(ユト)川咲優斗(かわざきゆと)だ、よろしくな?19005」


 声――優斗はそれだけ言うと何も言わなくなった。

 19005?俺は夜月凰牙だぞ。そんな管理番号みたいな名前になった覚えはない。つーより……SCPに指定されて収容されたってこたぁ外に出るのが困難を極めるって事……だろうな。……なら。

 俺はスキルの一つ、〔思念伝達〕を使って、とある人物に連絡をする。


『よっ!レイル。今会話大丈夫か?』

『あ、凰牙(おうが)……久しぶり。今大丈夫だよ。そっちから連絡なんて珍しいね。何かあったの?』

『ああ、チョイと厄介事に巻き込まれちまった』

『厄介事?』

『SCP財団って言う組織を、お前は知っているか?』

『知ってるよ。最近ディユ(創造神)がハマってるんだけど、()()の存在SCPを保護・収容・研究したりする()()()()()()でしょ?』

『……架空、だと?』

『……?どうかしたの?』

『……いや、その架空の組織にSCP指定されて、収容されちまってな……』

『え……実在してたんだ……と言うか、凰牙が素直に収容されるなんて、ドウイウコト?』

『人間という生き物がどう言う生き物だったか忘れて油断してた。魔界にはいないからな、人間は』

『凰牙が忘れているなんて珍しい……なるほど、それで連絡を?』

『ああ、暫く(しばらく)会えそうにねぇからな』

『別に、今すぐ抜け出して魔界に来れば良いじゃん。魔界には人間来れないんだからさ』

『そうしても良いが……』


 俺はそこで少し間を開けて、続ける。


『興味を持ったんだよ、久方ぶりにな』

『興味?』

『ああ。SCPっつー自然法則に反したヤツらにな』

『あはは……そっか。でも、魂が消えて復活しましたって事だけはなるべく避けてよ?回復まで時間かかるんだから』

『気ぃつけるわ。お前も気を付けろよ?普段の姿で人間界に来たら捕まっちまうぞ』

『……え、まさか……』

『ん?……ああ、楽だからいつもの姿(悪魔吸血鬼の姿)で、人間界を見てたんだよ。無論、側から見ればただの人間だけどな』

『……はぁ……SCP指定された理由も納得だ……まあ、消滅実験とかされない様に気を付けてね』

『されねーしさせねーよ。んじゃ、また暇な時連絡するわ』

『うん、わかった。せっかくなら沢山お土産話しを作ってきてよ』

『そのつもりだ。じゃあな!』


 俺はそう言って、念話を切る。ちなみにさっきの会話は魂同士で直接話す方法を使ってるから、盗聴の心配は人間界じゃねぇな。まっ、架空の組織なら干渉できるかもしれねぇが、干渉したところで特に何も利益は得られねぇだろうぜ。さっきの内容とかも、別に盗聴されてもいいような内容だしな。


 ――こうして、不意打ちで架空の組織「SCP財団」に捕まった俺は、SCP19005として、SCP生活を送る事になった。

 こんな体験はなかなか出来ないからな。俺は小説みたいな形で、俺のSCP生活を綴ることにした……

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