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戦場の夜叉と恋するエミー  作者: 七瀬ひまり
第一章 はじまり
16/37

仲間


王宮を出た後、アルフレッドは直ぐに王都の外れの屋敷へと戻った。もしかしたら状況が変わっているのではないかと心配したが、今の所変わった様子はない。


(問題なさそうだな)


周囲の様子を見ながら、先程のことを思い出す。


四年ぶりに見た国王は以前と何も変わらなかった。国王の姿を見ると気持ちがぶり返すのではと心配になったが、そんな事はなかった。


(少しは、前に進めたということだろうな)


国王は国王なりの事情がある。

やはり軍を動かせないかもしれないが、それはそれでしょうがないかもしれない。今はそう考えることができる。


(この腰の重みも久しぶりだな)


アルフレッドは腰に下げている剣に触れる。

王宮に行った時、ついでに自分の剣を取ってきたのだ。


四年前のあの日、戦争を共にした剣は二度と振るわないと誓い実家に投げ捨てきた。しかし、投げ捨ててきたのに、誰かがしっかりと管理してくれていたようだ。剣は錆びついていなかった。


家族には、いつかまたアルフレッドが剣を振るう日が来ると、分かっていたのかもしれない。


あんなに戦うのが嫌だったのに、人を切りたくなかったのに、今はそれさえも遠い昔の記憶に感じる。


(…そろそろ行くか)


準備はもうできた、そう思った時だ。突然後ろから声をかけられた。


「アルフ、お前はそろそろ俺に借りを返せよ。今日のでまた借りが増えたぞ」

「やぁねぇギル、何だかねちっこい姑みたいよ!」


「ギル、マーヴィン…」


振り返ると見知った顔の二人が居た。

どうやら、騒がしい奴らが援軍としてきてくれたようだ。嬉しさから、思わず口元に笑みが浮かぶ。


「アルフレッド先輩も笑うんすか!?」

「貴重なシーンを見てしまったかもしれない…」

「お前ら!失礼だぞ!」


「…」


こいつらは知らない。誰だろうか、首を傾げる。


「も、もしかして俺らのこと、覚えてないんすか…!?」


金髪の小さい少年みたいな奴が騒ぎ出す。

ここは敵陣なので、とりあえず静かにしてほしい。


「アルフ、お前はこいつらに昔会ってるぞ」


ギルがほら、あの村でという。

あの村でと言われて考えるが、一体どの村のことだろうか。ジッと少年達を見つめると、少し怯えたような顔をされた。


(まてよ、この怯えた顔)


「…もしかして、お前らは砦の近くの村にいた、あの少年兵か?」


アルフレッドの微かに残った記憶の中に、百人の兵を倒し終わった時に駆け寄ってきた少年兵達の姿があった。この三人は当時もアルフレッドに対して怯えた顔をしていたはずだ。


「そうっす!………いってぇ!」


金髪の少年がやたら元気な声で返事をするので、すかさずギルが鉄拳を食らわせる。この少年はここが敵地だということを忘れていそうだ。


「ったく…アルフ、その通りだ。この金髪の騒がしいのはベン」


ギルはベンの頭を押さえつけながら言う。

きっと普段からこの少年は落ち着きがないのだろと想像がつく。


「こいつらはホレスとキャロウだ」

「…うっす」

「お久しぶりです」


灰色の髪の少年は素っ気なく、赤茶の髪の少年は丁寧に挨拶をする。


(これが、国王の答えか)


どうやら王宮に行き国王と話したことは、無駄ではなかったようだ。心の中に渦巻いていた感情が、少しずつ薄れはじめているような気がする。


しかし、いまはのんびりと考えている場合ではない。全てはエミリアを助けてからだ。


「来たのはお前らだけか?」

「そうだ。カルヴィン近衛隊長の個人的なお使いを頼まれてな」

「個人的な…?」


ギルが、やれやれと言いたそうな顔をしながら、拳を差し出す。


「どっかの誰かが、四年前に落とし物をしたらしい。俺の隊で届けろって頼まれたんだよ」


差し出された拳を覗き込むと、そこには銀色の小さなバッジがあった。


「軍の、紋章バッジ…」


これは四年前にアルフレッドが国王の前で叩き捨てた一番隊隊長の紋章バッジだ。


「これの落とし主は軍を辞めたつもりらしいが、正式な退団手続きを踏んでないので辞めた事になってないらしい」


アルフレッドは驚く。


(俺は…まだ軍に所属してるのか…?)


確かに退団手続きはしていない。総隊長に辞めると言い捨てて出てきただけだ。しかし、命令違反をしたのだから、軍にいる資格はないのではないだろうか。


そんな複雑な心境を見抜いたのか、ギルがアルフレッドの肩に手を置きながら声をかける。


「ずっと、帰ってくるの待ってたぜ」


(待ってた…)


周りを見渡すと、マーヴィンもキャロウもホレスもベンも頷いていた。こいつらも、待っていたと言ってくれているようだ。


(俺には、帰る場所があったのか)


国を愛せなくなり、自分の帰る場所が無くなったと思っていた。しかし、それは違ったようだ。


(俺は何を恐れていたのだろうか)


もう少しで、すべての答えが見えてきそうだ。

きっと最後の答えはエミリアが教えてくれるだろう。早くあのお転婆なお嬢様に会いたい。


そういえば、とギルが話し始める。


「このバッジを届けるついでに、怪しい奴らを見つけたら検問してこいと言われたんだが、この辺に怪しい奴はいるか?」


アルフレッドは無言で屋敷の方を指差す。


「屋敷の周りに五人、裏口に一人。中には最低十四人」


その説明にギルは頷く。


「ベン、ホレスお前らには表の五人を任せる」

「うっす!すぐ終わらせます!」

「はい。…ベン、お前また勝手に突っ走るなよ」

「俺そんなことしませんよ!」


ホレスはゲンナリとした顔をしている。


「キャロウ、お前は裏口の奴だ。終わったらそのまま裏口から突入しろ」

「分かりました」

「マーヴィン、お前は全体を見つつ俺とアルフレッドのフォローを」

「お任せ〜」


指示を出し終えたギルはアルフレッドの方を向く。


「お前は一直線に王女様の元へ迎え。敵は俺達に任せろ」


相変わらず頼もしい友人だ。

アルフレッドは懐かしい気持ちになりながら、無言で頷く。


「さぁてと、お前ら久しぶりの実践だ。ヘマして隊長の俺の首飛ばすなよ」


『イエッサー』


そんな彼らを見てアルフレッドも心を決める。

さあ、彼女を助けに行こう。



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