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登校

 次の日、新しい制服に身を包み学校へと向かった。




 ブレザーは初めてで、少し着にくい。ネクタイも首元に違和感を感じ、社会人を少し尊敬できた。




 青色を基調とした制服で、結構気に入った。




 家から学校まで電車を使って約三十分、希美子はほとんど喋っていた。





 「いやーー、昨日のお寿司は凄く美味しかったね!流石お金持ち!って感じ」




 結局昨日、遅くまで片付けが終わらず父と母は挨拶に行けなかった。





 台所も料理が出来るほど整ってなかった為、新しい父親が行きつけだという寿司屋から出前をとったのだ。




 今まで一皿百円のしか食べたことのなかった俺たちにとって、未知との遭遇した感じだった。




 希美子の言う通り、流石社長だ。なんの社長をしているか具体的には分からないが。




 人当たりも良く、本当に俺達に優しくしてくれて思ってたより早く前の父の事を忘れられそうだ。




 「友達できるといいなぁーー」



 「その前にちゃんと挨拶の時に説明するんだぞ、宮橋結じゃない事」




 「分かってるよ、ちゃんと説明する。あっ、でもお隣さんなのは言ってもいいよね?」



 「ダメだ、それは彼女に迷惑になるだろう。ああいう有名人は、家がバレたらファンが押し込むだろ。最悪ストーカーだって出るかもしれないし」





 実際、昨日勘違いではあったがそういった警戒をされているから、極力迷惑をかけないようにしないといけない。




 「ちぇ、まっ、でもそれは絶対ダメだよね。うん、この事は言わない」




 「よし、それでいい」





 そんな事を言っていると、周りに人だかりが出来ていた。





 「おい、あれ宮橋結ちゃんじゃないか?」

 「あっ、本当だあの制服って・・・」

 「きゃーー!本当だ、やばいやばい!」





 忘れてた、妹は一般人でも顔がそっくりなんだから変装しないとこうなるんだった。




 引っ越しとか昨日のこととかで、すっかり変装の事を忘れていた。




 電車は後一分位で着く、とりあえずバックの中に入ってたマスクを取り出して希美子に付けさせないと。




 「希美子、これ付けとけ」



 「あ、ありがとう」



 「いいか、電車が着いたら走って学校まで行くぞ。全力で走れよ」



 「うん、分かった」




 希美子はマスクを着けて、俺の後ろに下がった。




 「なんだ彼氏か」

 「えーー全然パッとしてなくない」

 「マネージャーとかじゃない」

 「でも制服着てるよ」





 幸いにも俺たちがいるのはこれから開く扉側、開いたら真っ先に出れる。





 マスクを付けると、案外わからなくなる。それは俺だけかもしれないが、そう感じた。





 『まもなく、右側窓口が開きます』




 扉が開いた。




 「よし、走れ!」




 「うん!」




 扉が開いて、全力で走る。



 階段を駆け上がり、ホームを抜ける。

 駅からは徒歩十分で着くため、歩いて行く生徒が多い。そのお陰で、みんなが歩く方向へと走ればいいから迷わなくて済む。




 「は、はぇえ」




 俺が全力で走っているのに、希美子はどんどん遠ざかって行く。あの人並外れた運動神経は一体どこから来るのだろうか。




 後ろを振り返ると、大勢の人が追いかけてくる。





 だがその人達は俺に追いつくことすら出来ない。俺自身足は普通の人より早いから、無理もないだろう。




 だからこそ、本当に希美子の運動神経の良さには驚く。





 ☆☆☆





 走ったお陰で五分で学校に着いた。




 「はっ、はっ、つ、着いた・・・」




 希美子は三分位で着いたのか、速すぎる。




 「遅かったね悠太!」



 マスクを外す希美子。




 「あれ、宮橋結じゃない?」

 「えっ、嘘⁈」




 まずい、何をやってるんだ希美子は。



 「おい、マスクを外すな」



 「おっと、失礼しやしたーー」



 敬礼ポーズをしながら、平謝りする希美子に少し腹が立ったが今は人目のいない所に行かなければ。



 とりあえず避難も兼ねて職員室へ行った。




 「失礼します」



 「おっ、今日転校して来た瀬田兄妹だな」




 あらかじめ連絡を入れておいたからか、希美子を間違えない人をこっちに来て初めて見た。




 「まぁ、ここじゃ他の生徒にも見られるだろうから場所を移そう」




 そう言われて、場所を生徒指導室へと移動した。




 「なっ・・・」




 生徒指導室に入った瞬間驚いた。俺達と全く同じ制服を着た、希美子そっくりの女子が座っていた。





 「何やら外で私の名前が聞こえてくると思ったら、やっぱりあなた達だったのね」





 「宮橋・・・」

 「結さん!」




 なるほどそういうことか。この先生が驚かなかった理由。まさか宮橋結もこの学校に通うなんて。





 「いや、宮橋が言った通り本当にそっくりだな見分けつかないな」




 「ん?」




 「先生が私を含めて三人転校してくるって聞いて、もしかしてと思って言っておいたの」





 なるほどそういうことだったのか。




 「よし、三人揃ったことだし自己紹介をさせてもらおう」

 「私の名前は清水しみず はる、お前達三人の二年五組の担任だ。教科は国語を担当している。よろしく頼むな」





 意外と若くて美しい見た目の先生だ。




 だがそれよりも一つ気になった事がある。




 「俺達三人?」




 「あぁ、君達は三人同じクラスだよ」




 まさか、三人とも同じクラスなんて。この二人が同じ学校にいるだけでもカオスな状態なのに一緒のクラスなんて。






 「なるほど三人とも・・・。そうだ、希美子さんに提案があるのだけれど」




 「なんですか?」



 「あなたと私、入れ替わってみない?」




 「え?」




 え?一体何を言って・・・



「あなたが宮橋結として、私が瀬田希美子として学園生活を送るの」





 俺は、この時はまだ思ってもみなかった。この提案が、俺達三人の運命が大きく変わってしまうことに。



 



分量はもっと多い方がいいなどといったリクエストがありましたら、感想の方によろしくお願いします。

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