影を喰う
K県のとある遊園地にまつわるお話です。
その遊園地もかつては人で賑わっていたそうですが、最近ではすっかり寂れてしまい、1日20人も入れば良い方とまで落ち込んでしまっていました。
しかし、ある時を境にぽつぽつと入園数が増え始めたそうです。
それは、遊園地にあるお化け屋敷にまつわる噂が流れ始めた頃でした。
グループでお化け屋敷に入ると存在しない仕掛けに遭遇することがある。しかも、その仕掛けに遭遇すれば数日後に何人かが命を落とす。それが噂の内容でした。
噂はどんどん広まり、来園者数はうなぎ登り。ついにはローカル番組にまで取り上げられるようになりました。
そしてある時、噂を検証するためにタレントのOさんとモデルのDさんが数人の
スタッフと共にロケにやってきました。
ロケは問題なく進んでいき、ついにお化け屋敷の終盤に差し掛かったときでした。Oさん達は、壁に付けられた薄赤い照明と、悪魔の銅像だけが置かれている部屋に来ていました。
「あれ? ここのドアから次の部屋にいくんじゃないの?」
Oさんはドアノブをガチャガチャと捻りますが、何故か開きません。
スタッフと交互に体当たりしてみましたが、やはり開きません。
「と、とりあえず電話して園の方に来てもらいましょう」
そう言ってスタッフがスマホを取りだしますが、
「……圏外だ……」
すぐに他の人達もスマホを取り出しましたが、誰一人として繋がりません。
いよいよ現場はパニック状態に。Dさんは泣き出してしまい、スタッフも壁を蹴るなど興奮気味でした。
その時です。
部屋の照明が一斉に落ち、お互いの姿も見えないほどの真っ暗闇になってしまいました。
撮影カメラのフラッシュも点かず、全員がスマホで照らそうとするも、電波どころかもはや電源すら入らなくなっています。
叫び声や怒号が飛び交う中、突然一つだけ照明が点きました。
その場にいた全員が静まり返り、その一点に注目しました。しかし、いくら立っても何も起こりません。
照明の一番近くにいたDさんが何か言おうと後ろを振り返り、皆の後ろにある何かを見て口を開けたまま凍りつきました。
思わず他の人達も振り返り、それを見ました。
そこには、来たときと変わらない悪魔の像と、照明に照らされた動き回る悪魔の影があったのです。
それを見た全員が気絶してしまい、気がつくと明るい照明の中、遊園地のスタッフに介抱されていました。
一時間たっても出てこないOさん達を心配して入ってきたところ、小部屋で倒れているところを発見したそうです。
中で起こった話を伝えると、そんな仕掛けはないとのこと。
とにかく局に帰って上司と相談するしかないと判断し、一行はお化け屋敷から出ました。
その時Dさんだけがあまりにも衰弱していたので、救急車を待つことになりました。
お化け屋敷の外で、車に向かうOさん達を見て再びDさんは凍りつきました。
何故なら、陽の光に照らされた彼らの影は、あちこちが大きくかじられたように欠けていたのです。
Dさんは何も言い出せず震えていることしかできませんでした。
そして翌日の朝刊には、Oさん達を乗せた車が事故に遭い、全員が体の一部を不自然に失った状態で亡くなっていたというニュースが載っていました。
事故から逃れたDさんは現在行方不明になっているそうです。